2016年08月19日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新27)

2016年8月18日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。今回より、報告の様式が一新されています。

更新の要点

  • バハマが、新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症が報告された国と地域に加わりました。
  • ホンジュラスとスリナムが、新しくジカウイルスの感染との関係が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が報告された国と地域に加わりました。
  • コスタリカとグアテマラが、新しくジカウイルスの感染と関係するギラン・バレー症候群(GBS)が報告された国と地域に加わりました。
  • WHO 東地中海地域事務局から、次のような感染対策の計画が出されました。
    • WHOは、ソマリアを含めて、ジカウイルスのリスク評価を行います。
    • WHOは、加盟国とともに、調査活動の戦略の作成とジカウイルス感染症の発見のためのガイダンスを加えたIncident Command System(ICS:現場指揮システム)における訓練のための研究集会を2016年11月に計画しています。
    • WHOは、各国の昆虫学者に対してシマカ属の蚊の防止・駆除に関する訓練のために8月から10月にかけて研究集会を3つに広げていきます。

分析

  • 全体として、世界のリスク評価は変わっていません。
  • ジカウイルスは媒介能力をもつ蚊が生息する地域では、地図の上で拡がりを続けています。
  • アフリカにおける最近のジカウイルス感染症患者の存在は、世界規模での流行発生をウイルス学の視点からより深く理解することの必要性を示しています。
    • 現在のところ、アジア系統のジカウイルスの流行は、単に合併症の存在が認識されていなかっただけの可能性もありますが、過去のアフリカ系統の患者よりも神経性および先天性の合併症に強く関係することが示されています。このため、2007年に初めて流行が認められた後、実際にジカウイルス感染症の臨床症状に変化が起きたのかを知るために、分離されたジカウイルスの遺伝子配列を決定することが重要となります。
  • さらに、健康維持のための的確な注意喚起を行うことを含めて、感染伝播の拡がりの力学を理解し、局所におけるリスク評価を周知し、媒介昆虫の駆除への介入に焦点を当てるために、新しく感染の発生した地域では昆虫(蚊)の研究が優先的に行われる必要があります。

発生状況

  • 2007年以降、(2016年8月17日までに、)合計70の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています(2015年以降は、67の国と地域です)。
    • 53の国と地域で、2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が発生しました。
    • 2016年に、国内感染の高い可能性、又は蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が4か国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム)から報告されました。
    • 13の国と地域では、2015年までに地域内での蚊の媒介によるジカウイルスの感染の証拠が報告されていました。しかし、これらの国では、2016年には感染伝播が報告されていない、又は流行が終息しています。
  • 2016年2月以降、11の国でジカウイルスの人から人への感染伝播が起きていた証拠が報告されました。
  • ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が、17の国と地域から報告されました。新しく、カナダで旅行中にジカウイルスに感染したことに関係する先天奇形が1例報告されています。また、17か国のうち4か国からは、ジカウイルスの発生のない国で、しかし、最近になってジカウイルス感染症が発生している国への旅行歴のある母親から、小頭症新生児が生まれたことが報告されています。
  • アメリカ合衆国では、ジカウイルスへの感染の可能性が検査確認された妊娠女性で、次のような事例がありました。
    • 先天性障害のあった新生児16例(今回、新たに1例が報告)
    • 先天性障害による流産5例
  • アメリカ合衆国の管轄地域では、ジカウイルスへの感染の可能性が検査確認された妊娠女性で、次のような事例がありました。
    • 先天性障害のあった新生児1例
    • 先天性障害による流産1例
  • 18の国と地域で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • ギニア・ビサウ:
    • 新たに患者7人がジカウイルスに陽性であることが分かりました。さらなる検査のために、検体がセネガルのダカール・パスツール研究所(IPD)に送られました。WHOとこの地域の加盟国による最近の調査によって、Bijagos(ビジャゴ)諸島で154本の検体が採取されました。この調査中に、蚊の集積装置401個が回収され、そのうち4個からジカウイルスが陽性と出ました。集められた蚊のうち、80%が高いリスク指標を示すAedes egypti(ネッタイシマカ)とAedes luteocephalusでした。
    • 2016年4月以降、小頭症5例が報告されました。3例はオイオ州から、2例はガブ州から報告されました。これらの患者の調査が続けられています。
    • 7月1日に送られ、ジカウイルスが確認された検体4本の遺伝子配列は、現在も結果が待たれています。
    • 合同調査に続いて、WHOによる昆虫学者、疫学者と検査専門家の追加派遣が検討されています。
  • ブラジル・リオデジャネイロ中央公衆衛生研究所のある地元当局によって、ジカウイルス検査キットが利用できるようになりました。症状のある、選手、ボランティア、観光客、住民には、検査を受けることが促されています。
  • WHOは、ジカウイルスの発生状況の中でのさまざまな話題に関する新たな助言や情報を作成しています(http://www.who.int/csr/resources/publications/zika/en/)。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 18 August 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/249534/1/zikasitrep18Aug16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:875KB]