2016年08月29日更新 黄熱の発生状況(更新17)

2016年8月26日付けで、WHOより黄熱の発生状況が公表されています。詳細は原文でお確かめください。

更新の要点

  • アンゴラの8月18日現在の疫学情報です。
    • 6月23日以降、新たな確定患者はいません。
    • 死亡者369人(致死率9.2%)を含めて、疑い患者3,984人が報告されました。
    • 疑い患者3,984人のうち、891人で診断が確定され、そのうちの120人が死亡していました(致死率13.6%)。
    • 地域感染により、18州のうち16州で1人以上の確定患者が報告されました。
  • アンゴラの地域感染が確認された地域で感染対策としての集団ワクチン接種キャンペーンが実施されてきました。また、予防のためのワクチン接種キャンペーンが、第1段階として約300万人、第2段階として200万人で、8月15日から開始されました。このキャンペーンの第1段階では、アンゴラがコンゴ民主共和国、ナミビア、コンゴ共和国と国境を接する、もしくは、その周辺の17州22地区の住民でリスクを最小限に抑えることを目的としています。8月24日までに、キャンペーン第1段階の対象として住民の76%に当たる2,982,134人にワクチンが接種されました。
  • コンゴ民主共和国(DRC)の8月25日現在の疫学情報です。
    • 国内26州のうちの8州から疑い患者2,410人が報告されました。
    • 疑い患者2,164人に確認試験が行われ、16人の死亡者を含む75人の患者(致死率:21.33%)が確定診断されました。
    • 7州から報告のあった確定患者75人のうち、57人はアンゴラからの感染輸入患者で、13人は国内感染患者、5人は(流行とは関係のない)森林型黄熱患者で、1人は新たに国の北部にあるSudUbangi(南ウバンギ州)で見つかり検査結果待ちです。
  • ワクチン予防接種キャンペーンが、コンゴ民主共和国で8月17日に始まりました。このキャンペーンは、キンシャサの32衛生行政地域800万人とアンゴラとの国境付近又は国境を接する16衛生行政地域300万人でリスクを最小限に抑えることを目的としています。キンシャサでは、2016年8月24日までに住民6,925,276人(対象人口の91.3%)にワクチンが接種されました。感染の報告のあった衛生行政地域となるカサイ中央、カサイ、コンゴ中央、クワンゴ、ルアラバの各州で、730,190人の住民がワクチンを受けました。キンシャサのワクチン接種キャンペーンにおいては、使用できるワクチン量が限られた緊急事態においてのみ適応が勧められる分割接種(標準用量の1/5量での投与)法が使用されました。

分析

  • 全体的なリスク評価に変更はありません。
  • 6月23日以降、アンゴラでは新たな確定患者は出ていません。2016年に、1,800万人に予防接種が実施されました(推定対象住民は2、400万人)。それでも、注意喚起のレベルは維持される必要があり、流行に先立ってワクチン接種キャンペーンは続けられています。この国の疾病調査体制には強化が必要です。ウイルスは、アンゴラのワクチン未接種の人々にコンゴ民主共和国から再輸入される可能性があります。特に、最近もワクチン接種キャンペーンを行っていない地域には、その可能性があります。また、こらから迎える雨期は、小規模でウイルスの伝播が発生するリスクを増大させます。
  • コンゴ民主共和国では、流行の地理的な拡大が続いています。この流行は、既に感染が発生している地域で感染のない地区および感染の発生のない地域にも拡がる可能性を持っています。最大のリスクが、シマカ属の蚊が生息し、住民の免疫力が低く、人々の流動性が高い地域にあります。9月には雨期が始まり、蚊の媒介による伝播のリスクが増加します。アンゴラの国境地域も含め、遠隔地への交通手段は少なくなり、これからの監視体制、調査体制、感染対策をさらに難しいものにします。
  • アンゴラとコンゴ民主共和国で現在進行中の、流行と同時もしくは流行に先立った集団予防接種キャンペーンは、この長年にわたる感染の発生に終息をもたらす機会になることを示しています。しかし、ときにはかなりの遠隔地でも大規模なキャンペーンを実施すべきことが大きな対策上の課題に上がることを考えると、このリスクはまだ高いままです。
  • 備蓄ワクチンは、計画された予防接種キャンペーン全てを完了させるには十分であり、他の国で新たな患者、新たな感染の集団発生が起きたとしても、十分な量を残しています。

疫学的な発生状況

アンゴラ

  • 6月23日以降、確定患者はでていません。継続中の調査によれば、これまでの数か月間に報告されてきた疑い患者数が減少しており、安定しています。
  • 既に感染が発生している州の4つの地域では、8月18日の週に初めて疑い患者が報告されました。これは調査体制が強化されたことを示しています。
  • 4月に遡って、症状のある12人の患者が確認されました。2015年12月5日から2016年8月18日までに、疑い患者は合計で3,984人となり、そのうち891人で確定診断が報告されています。
  • 2015年12月5日から2016年8月18日までに、疑い患者3,984人となり、そのうち891人で確定診断が報告されましたが、この間に、合計で369人が死亡し、うち死亡者120人が確定診断された患者でした。
  • 流行の開始以来、疑い患者は18州ある全ての州から報告されています。確定患者は16州80地区から報告されています。地域での感染伝播は12州45地区から報告されました。
  • Luanda(ルアンダ州)とHuambo(ウアンボ州)で、最も多くの患者が報告されています。8月18日現在、患者2,047人(確定患者488人、全確定患者の54.7%)がルアンダ州から報告され、患者628人(確定患者128人、全確定患者の14.3%)がウアンボ州から報告されました。

コンゴ民主共和国(DRC)

  • Tshuapa 州Yalifafu衛生行政地区で2人の森林型黄熱患者が確認され、2016年1月以降にこの州から報告された森林型黄熱患者は3人となりました。また、森林型黄熱患者は、Bas Uele、Kasaiの各州からも1人ずつが2016年1月と5月に報告されました。これらの患者は、今回の流行とは関係がありません。
  • 8月25日現在、コンゴ民主共和国(DRC)では、26州のうち8州から合計で2,410人が報告されています。
  • コンゴ共和国および中央アフリカ共和国と国境を接するSud Ubangi(南ウバンギ州)で、流行が始まって以来、初めて可能性の高い患者が報告されました。確定診断されるのか、破棄されるのか、輸入感染か国内感染か、現在の流行によるものか、森林型かといったことの調査が行われています。
  • 2,164検体から確定患者が75人確認されました。確定患者のうちの死亡者は16人となっています。
  • 確定患者75人のうち、57人がアンゴラでの感染患者、5人が森林型黄熱患者、13人が国内感染患者、1人は検査結果待ちとなっています。
  • 国内感染患者13人は、3州10地区[キンシャサ(6人)、コンゴ中央州(2人)、Kwango州(5人)]から報告されました。
  • キンシャサで最も新しい患者で発症が確認されたのは、6月22日です。
  • ワクチン予防接種キャンペーンが、8月17日に始まりました。このキャンペーンは、キンシャサ州32衛生行政地域800万人とアンゴラとの国境付近又は国境を接する16衛生行政地域300万人でリスクを最小限に抑えることを目的としています。キンシャサでは、2016年8月24日までに住民6,925,276人(対象人口の91.3%)にワクチンが接種されました。カサイ、コンゴ中央の各州の衛生行政地区では、730,190人がワクチン接種を受けたことが報告されました。キンシャサのワクチン接種キャンペーンでは、使用できるワクチン量が限られた中での緊急事態においてのみ適応が勧められる分割接種(標準用量の1/5量での投与)法が実施されています。
  • これまでに、キンシャサに32ある全ての地区で住民の高い接種率が確認されました。8月18日におけるキンシャサ14地区からのデータによれば、2016年8月17日までに570,085人にワクチンが接種されました。残る18地区からも、キャンペーン初日のデータの報告が待たれています。ワクチン接種が拒否されたということは、報告されていません。

図.黄熱の確定診断患者の分布図

図1.黄熱の確定診断患者の分布図[コンゴ民主共和国]
※8月25日現在

感染への対策

  • 現在の黄熱の流行に関する情報がWHOのウェブサイトで引き続き更新されています(http://www.who.int/features/qa/yellow-fever/en/)。
  • WHOは、ICG(黄熱ワクチン供給国際調整グループ)が保管する世界中の在庫にブラジルのBio-Manguinhos施設の在庫を加えて、2,700万回分を超えるワクチンを搬出しました。
  • 2016年8月18日現在、アンゴラでは1,810万回分のワクチンが、DRCでは910万回分のワクチンが接種されてきました。
  • 現在、緊急に対応できるワクチンの数は510万本となっています。すでに流行への対策に割り当てられたワクチンの本数は含まれていません。

出典

WHO. Situation Report, Emergencies. 26 August 2016
Situation Report; Yellow fever
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/249575/1/yellowfeversitrep26Aug16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:912KB]