2016年09月02日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新29)
2016年9月1日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。
情報更新の要点
- 先週、イギリス領バージン諸島とシンガポールで、新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症が報告されました。
- 先週は、新しくジカウイルスの感染との関係が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が報告された国や地域はありません。
- 先週は、新しくジカウイルスの感染と関係するギラン・バレー症候群(GBS)が報告された国や地域もありません。
- WHOアメリカ大陸地域事務局からは、感染対策の運用計画が更新されました。
- WHOは、ドミニカ共和国における先天障害の発見と対策および妊産婦と新生児の医療支援に対する技術的なアドバイスを提供しました。
- 2016年夏季パラリンピック・リオデジャネイロ大会が9月7日から18日までの予定で開催されます。WHOは、すべての選手、ボランティア、観光客や住民に対して、2016年夏季パラリンピック大会ができるだけ安全なものとなるように、引き続き保健省への技術支援を提供していきます。
- ギニア・ビサウで採取・分離された4つの検体におけるジカウイルスの遺伝子配列は、予備解析では、アフリカ系統のウイルスであることが確認されました。
分析
- 全体として、世界のリスク評価は変わっていません。
- ジカウイルスは、地図上では4月から6月に拡大を減速させた後、7月と8月にはやや増加させています。これは、暖かくなる夏期の数ヶ月間に、北半球で媒介する蚊の活動が活発になっていることによります。
- 南米大陸のいくつかの国ではジカウイルスの伝播が弱まる傾向が報告されていますが、最近になって感染が発生した国(カリブ海のサン・バルテルミー島)や早くに感染が発生していた国(プエルトリコ)などでは、増加の傾向を示しています。(しかし)ほとんどの国ではジカウイルス感染症患者の正確な数値が報告されていないことから、一般化して、ジカウイルスの流行の世界的な傾向を述べることはできません。
- ギニア・ビサウでの予備解析で確認されたアフリカ系統(ウイルス)は小頭症および他の神経合併症と関連付けられていませんが、アフリカ系統(ウイルス)の確定患者は非常に少数であったため、さらなる調査が必要です。現時点で、この脅威の可能性を棄却することは時期尚早です。
発生状況
- 2007年以降、合計72の国と地域で蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が報告されています(2015年以降は、69の国と地域です)。
- 55の国と地域で、2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が報告されました。
- 2016年に、国内感染の高い可能性、又は蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播の証拠が4か国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム)から報告されました。
- 13の国と地域では、2015年までや2015年に地域内での蚊の媒介によるジカウイルスの感染の証拠が報告されていました。しかし、これらの国では、2016年には感染伝播が報告されていないか、又は流行が終息しています。
- 2016年2月以降、11の国でジカウイルスの人から人への感染伝播が起きていた証拠が報告されました。
- ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症やその他の中枢神経奇形が、20の国と地域から報告されました。20か国のうち4か国では、国内でジカウイルスの発生がなく、最近、ジカウイルス感染症が発生している国への旅行したことのある母親から、小頭症新生児が生まれたことが報告されています。
- アメリカ合衆国では、ジカウイルスへの感染の可能性が検査確認された妊娠女性で、次のような事例がありました。
- 先天性障害のあった新生児16例
- 先天性障害による流産5例
- アメリカ合衆国の管轄地域では、ジカウイルスへの感染の可能性が検査確認された妊娠女性で、次のような事例がありました。
- 先天性障害のあった新生児1例
- 先天性障害による流産1例
- 18の国と地域で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
- ギニア・ビサウでは、7月に送られたジカウイルス確定患者4人の遺伝子配列の予備解析の結果、これらの患者が、世界的に流行が拡がっているアジア系統での感染ではなく、アフリカ系統のウイルスでの感染であることが確認されました。小頭症が報告された5例の調査が続けられています。
- 2016年夏季パラリンピック・リオデジャネイロ大会が9月7日から18日までの予定で開催されます。WHOは、アメリカ大陸地域事務局を通じて、すべての選手、ボランティア、観光客や住民に対して2016年夏季パラリンピック大会ができるだけ安全なものとなるように、引き続き保健省への技術支援を提供していきます。
出典
WHO. Situation Report, Emergencies. 1 September 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/249597/1/zikasitrep1Sept16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:837KB]