2016年09月05日更新 黄熱の発生状況(更新18)

2016年9月2日付けで、WHOより黄熱の発生状況が公表されています。詳細は原文でお確かめください。

更新の要点

  • アンゴラの8月25日現在の疫学情報です。
    • 6月23日以降、新たな確定患者は出ていません。
  • アンゴラでは、予防接種キャンペーンの第1段階が完了しました。8月29日現在、住民2,761,104人にワクチンが接種されました。
  • コンゴ民主共和国(DRC)の9月1日現在の疫学情報です。
    • 7月12日以降、現在の流行に関係する新たな確定患者は出ていません。
    • 前回の報告以降、新たに感染が疑われる患者も出ていません。先週の報告で、新たにSud Ubangi(南ウバンギ州)で報告された可能性の高い患者の調査が続けられています。
  • コンゴ民主共和国では、流行に先行したワクチン予防接種キャンペーンが行われ、9月1日までに、報告のあった衛生行政地域で住民9,048,541人にワクチンが接種されました。このキャンペーンは、カサイ州とクワンゴ州で続けられています。
  • 2016年8月31日に、黄熱に関する第2回緊急委員会会議が招集されました。委員会は、アンゴラやコンゴ民主共和国の流行が国際的に脅威となる公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)には該当しないものの、深刻な公衆衛生上の事態であると結論付けました。

分析

  • 全体的なリスク評価に変更はありません。
  • 6月末以降、アンゴラでは新たな確定患者は出ていません。ワクチン接種キャンペーンは73行政地区の(2016年の推定人口2,400万人のうち)1,800万人で接種が完了しました。それでも、高い意識での注意喚起が維持され、流行に先行したワクチン接種キャンペーンが行われています。疾病調査のさらなる拡大が必要とされています。
  • コンゴ民主共和国では、7月以降、現在の流行と関係のない確定患者は出ていません。今週は、疑い患者が報告された新たな衛生行政地区はありません。それでも、調査活動と検査確認につきまとう困難さから、発見できていない確定患者がいる可能性は残されています。
  • この地域で差し迫った雨季の始まりは、媒介する蚊の活動を活発にします。そして、黄熱の感染伝播のリスクを上昇させます。これは、調査活動、アンゴラとコンゴ民主共和国の国境に沿った州などの遠隔地との連絡環境の悪化、疫学調査、疾病調査および対策などを困難なものにします。
  • この数週間における予防接種キャンペーンは、かなりの数のリスクのある住民に到達しました。これらの住民での感染伝播のリスクはかなり減ってきています。
  • ワクチンの備蓄量は、すべての予防接種キャンペーンの計画を完了しても、十分に余力があり、仮に新たな患者が発生したり、他の国で流行が発生したりしても、それに対応できるだけの在庫があります。

疫学的な発生状況

アンゴラ

  • 6月23日以降、確定患者は出ていません。発生状況は安定しており、先月の疑い患者数は減ってきています。
  • 2015年12月5日から2016年8月25日までの状況は、以下のようになっています。
  • 疑い患者は4,041人で、このうち371人が死亡しています(致死率:9.2%)
  • 検査確定患者は884人で、このうち121人が死亡しています(致死率:13.7%)。新たにCunene(クネネ)州Cuanhama地区から確定患者が報告されました。その患者は、6月23日に発症しました。
  • 流行の開始以来、疑い患者は18州ある全ての州から報告されています。確定患者は16州80地区から報告されています。地域での感染伝播は12州45地区から報告されました。
  • Luanda(ルアンダ州)とHuambo(ウアンボ州)で、最も多くの患者が報告されています。8月25日現在、患者2,062人(確定患者488人)がルアンダ州から報告され、患者632人(確定患者128人)がウアンボ州から報告されました。

コンゴ民主共和国(DRC)

  • 2016年1月1日から9月1日までの状況は、以下のようになっています。
  • 26州のうちの8州から2,513人の疑い患者が出ています。
  • 検査が行われた疑い患者2,164人において75人が確定診断されました。このうち16人が死亡しています(致死率:21.33%)。
  • 確定患者75人は7つの州から報告され、57人がアンゴラでの感染、13人が国内での感染、5人が(流行とは関係のない)森林型黄熱でした。
  • コンゴ共和国および中央アフリカ共和国と国境を接するSud Ubangi(南ウバンギ州)で、流行が始まって以来、8月25日の週に、初めて可能性の高い患者が報告されました。確定診断されるのか、破棄されるのか、輸入感染か国内感染か、現在の流行によるものか、森林型かといったことの調査が行われています。
  • 国内感染患者13人は、3州10地区[キンシャサ(6人)、コンゴ中央州(2人)、Kwango州(5人)]から報告されました。
  • キンシャサで最も新しい患者の発症が確認された日は、6月22日です。DRCで最も新しい確定患者はクワンゴ州Kahemba衛生地区からで、発症日は7月12日でした。

図.黄熱の確定診断患者の分布図

図1.黄熱の確定診断患者の分布図[コンゴ民主共和国]
※9月1日現在

感染への対策

  • 現在の黄熱の流行に関する情報がWHOのウェブサイトで引き続き更新されています(http://www.who.int/features/qa/yellow-fever/en/)。
  • 2016年8月31日に、黄熱に関する第2回緊急委員会会議が招集されました。委員会はアンゴラやコンゴ民主共和国の流行は、国際的に脅威となる公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)には該当しないと結論付けました。しかしながら、委員会は、(感染対策に)かなりの進展があるものの、この流行は国際的な活動と支援を継続すべき深刻な公衆衛生上の事態であるとも述べました。また、差し迫った雨季の始まりは、媒介する蚊の活動を高め、局所的な黄熱の伝播のリスクを高めます。委員会委員は、以下の分野で速やかに対応するための技術的なアドバイスを提供しました。
  • 調査および検査能力のさらなる強化、集団予防接種の完遂、住民への注意喚起の継続、地域活動、媒介する蚊に対する集約的な制御・駆除活動および患者の管理への対策:
  • 分割用量の接種法でのキャンペーンに対する多様な観点からの報告を通して、免疫応答能の持続期間に関する研究の中間結果を共有すること
  • 黄熱ウイルスの活動が見られる地域を出入りするすべての渡航者への黄熱ワクチンを接種することの必要性への認識強化
  • 必要とされる地域における計画的な小児の予防接種の一貫としての黄熱ワクチン接種の強化 コンゴ民主共和国内でリスクのある地域で流行に先行してワクチン接種キャンペーンを実施することに対し、さらに検討を加えるために、委員会からこれらのことが促されました。
  • アンゴラでの集団予防接種が国内で感染の確認された地域で実施されました。また、流行に先行したワクチン接種キャンペーンが8月15日に開始されました。アンゴラでは、予防接種キャンペーンの第1段階が完了しました。8月29日現在、住民2,761,104人にワクチンが接種されました。これは、アンゴラがDRC、ナミビア、コンゴ共和国との国境に近い又は接する17州のリスク地域22地区に住む接種対象人口300万人の93%に当たります。追加のワクチン接種活動が、ワクチン接種率が80%に達しなかった5地区で計画されています。第2段階のキャンペーンでは、さらに住民200万人がワクチン接種対象とされています。
  • コンゴ民主共和国では、ワクチン予防接種キャンペーンが8月17日に始まりました。9月1日までに、キンシャサ州32衛生行政地域7,807,653人にワクチンが接種されました(対象住民の103%)。カサイ中央、カサイ、コンゴ中央、クワンゴ、ルアバラの各州の感染が報告された衛生行政地域の住民2,582,056人にもワクチンが接種されました。キャンペーンでは、カサイ、クワンゴの各州で続けられています。
  • WHOは、ICG(黄熱ワクチン供給国際調整グループ)が保管する世界中の在庫に加えてブラジルのBio-Manguinhos施設から、アンゴラとコンゴ民主共和国に約2,700万回分のワクチンを搬出しました。
  • 2016年9月2日現在、アンゴラでは1,810万回分のワクチンが、DRCでは940万回分のワクチンが接種されてきました。
  • 現在、ICGを通じて緊急に対応できるワクチンの数は400万本となっています。すでに流行への対策に割り当てられたワクチンの本数は含まれていません。

出典

WHO. Situation Report, Emergencies. 2 September 2016
Situation Report; Yellow fever
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/249603/1/yellowfeversitrep2Sept16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:967KB]