2016年09月06日更新 国際保健規則に基づくジカウイルスおよび神経疾患と新生児奇形の増加に関する第4回緊急委員会のWHO声明

国際保健規則(IHR 2005)に則り、ジカウイルスの感染が発生した幾つもの地域で小頭症やその他の神経障害患者が集団発生していることについて話し合うために、第4回緊急委員会が事務局長によって招集されました。会議は、2016年9月1日[ヨーロッパ中央時間]13:15から15:45まで電話会議で開かれました。

委員会には、前回の第3回緊急委員会で出されて進言に基づき事務局長により発行された一時勧告の実施状況の要約が提供されました。また、委員会には、ブラジルで開催されたオリンピック大会の会期中および閉会後の発生状況に関する更新情報、ジカウイルスの地理的な広がり、自然経過、疫学、ジカウイルスが関係する小頭症やその他の新生児合併症、ギラン・バレー症候群(GBS)、性交渉によるジカウイルスの感染に対する現在の知見などの最新情報が提出されました。

ブラジル、アメリカ合衆国、シンガポールといった加盟国からは、小頭症、GBS、ジカウイルスの伝播の中で起きているその他の神経障害、並びに実施中の感染制御への対策、に関する情報が提出されました。

委員会は、オリンピック大会中は彼らの適切な公衆衛生対策が成果を収めたことから、ブラジルに対し祝辞を述べました。これまでのところ、大会中及び帰国後に、大会の参加者の中でジカウイルスと確定診断された患者の報告はありません。患者が出なかったことで、第3回緊急委員会で行われたオリンピックに関するリスク評価の結論が支持されます。

この根拠が示されたことを踏まえつつ、委員会は、地理的には拡大が続き、このウイルスへの理解とその結果の間にはかなりの解離があることから、依然として、ジカウイルスの感染およびこれに関係する先天障害や神経障害が国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)の状態にあるという見解で一致しました。

委員会は、これまでの会議の中で事務局長に提出してきた公衆衛生の各研究分野での進言を再度行いました。その研究分野とは、小頭症やその他の神経障害とジカウイルス感染症に関する公衆衛生上の研究、調査活動、媒介する蚊の制御・駆除、住民へのリスク情報の伝達、医療試験、旅行者の政策、調査研究、ワクチンに関連する医薬品の開発、治療薬、臨床検査などです。委員会は、この進言に基づいて、対策活動は現体制を維持し、すべてを実施し続けることを議題に上げました。また、委員会は、パラリンピック大会を開催するブラジルの都市を含めて、ジカウイルスの感染伝播が起きている国と地域への旅行およびその地域との貿易には一般制限を行うべきではない、とした以前の進言を再度確認しました。

また、ジカウイルスの影響は長期的な問題であることを理解し、委員会は長期的かつ効果的な対策を確実に行うためには、WHOがさらに歩調を合わせて責任をもち、適切な体制基盤と計画の作成を考えるべきことを、事務局長に勧めました。

委員会は、ジカウイルスの疫学、臨床としての疾患、および予防について、科学的に理解をいっそう深める必要性があることを強調しました。そして、これまでに勧告で出されたその他の問題に沿いながら、いくつかの新しい研究課題に焦点を当てて、次のことを進言しました。

  • 異なるウイルス系統およびその臨床的意味の中での交差反応や交差免疫など、それぞれのウイルス系統への理解を深めること
  • 疾患重症度に影響を与える可能性のある補助因子やリスク因子を評価すること
  • 先天的に感染した小児、妊娠女性、(先天的に感染していない)小児や成人における病気の自然経過への理解をより深めること
  • 人の体内におけるウイルスの持続保持期間と保持される場所、透過率の影響などを決定すること
  • 感染リスクと感染様式のより明確な解明
  • 媒介する蚊の効果的な感染制御装置とその計画の実施可能性に対する評価
  • 安全で効果的な予防対策(ワクチン接種など)の継続的な立案

ジカウイルス感染症とその合併症が医療体制の弱体化に与える影響への理解から、委員会は、医療体制が脆弱で対処能力が弱い国に対し、ジカウイルス感染症の効果的な調査体制や管理に関しての適切なガイダンスを提供することもWHOに進言しました。

この助言に基づき、事務局長は、国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)の継続を宣言しました。事務局長は、第2回および第3回委員会会議で出された一時勧告を再度発行し、第4回委員会会議からの追加アドバイスを加えて、IHRに基づく一時勧告としてこれらを発行しました。事務局長は、これらの助言した委員と顧問らに感謝の意を表しました。この会議は3か月毎に開かれます。

出典

WHO.Media center news.WHO Statements. 2September2016
WHO statement on the4rd meeting of IHR Emergency Committee on Zika virus and observed increase in neurological disorders and neonatal malformations
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/zika-fourth-ec/en/