2016年09月30日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新33)

2016年9月29日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

情報更新の要点

  • 先週、新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症が報告された国や地域はありません。
  • 先週、モルディブから帰国した旅行者が蚊によるジカウイルス感染症に罹っていたことが、ドイツとスペインによって報告されました。前回のジカウイルス感染症患者は、2016年1月に報告されていました。
  • 西太平洋地域のシンガポール、フィリピン、マレーシア、ベトナムで、新しい患者発生の報告が続いています。東南アジアのタイでも、最近、ジカウイルス感染症の患者が報告されました。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国によって確認された重要な感染対策の領域は、疾病監視、リスク評価、適時の関連するデータの共有、地域規模での調査活動と対策、媒介昆虫の駆除、検査診断、検査のネットワーク、リスク情報の住民への提供、知識の共有、最善となる対策の実践です。タイの保健省は、小頭症がジカウイルスと関連しているかを判断するために、小頭症患者を調査しています。
  • 先週、新しくジカウイルス感染症と関連する可能性のある小頭症や他の中枢神経系(central nerve system: CNS)の奇形が報告された国や地域はありません。
  • 先週、新しくジカウイルス感染症と関連するギラン・バレー症候群(GBS: Guillain-Barré syndrome)が報告された国や地域はありません。

分析

  • 全体として、世界におけるリスク評価は変わっていません。
  • タイでの小頭症患者の調査は、これらの患者がジカウイルスの感染と関連があるかを判断する上で重要です。もし、関連していることが分かった場合、これらは、東南アジアで初めてジカウイルスの感染と関連した小頭症患者の確認となります。もし、ジカウイルスの感染が確認された場合、遺伝子配列が以前からの土着のウイルス株なのか、感染輸入されたウイルス株なのか、を判断することが重要となります。
  • マレーシアで報告されたジカウイルス感染症患者からの遺伝子配列の結果は、すべて「アジア」系統のウイルスであることが示されました。輸入感染患者を含む2人の患者は、2013年にフランス領ポリネシアで流行したウイルス株と類似していました。即ち、2007年以降の「アジア」系統のウイルス株です。国内で地域感染した他の3人の患者は、以前に東南アジアで流行していた「アジア」系統のウイルス株に類似していると報告されました。

発生状況

  • 73の国と地域で、2007年以来(2015年から71の国と地域です)蚊が媒介するジカウイルス感染伝播のエビデンスが報告されています。
    • 56の国と地域で、2015年以降流行発生が報告されました。
    • 6つの国と地域で、2016年に、蚊が媒介するジカの感染の地域感染の可能性やエビデンスがあり
      ます。
    • モルディブは、以前、カテゴリー3とされていました。しかし、9月28日の週に、ドイツとスペインに
      帰国した旅行者が(モルディブ)国内でジカウイルスに感染したことがこと報告されました。した
      がって、モルディブは、カテゴリー2に再分類されました
    • 11の国や地域では、2015年までや2015年に地域で蚊が媒介するジカの感染のエビデンスが報告
      されています。しかし、これらの国や地域では2016年に症例の報告されていないか、または流行
      発生が終息しています。
    • モルディブは、このカテゴリーから削除されました。
  • 2016年2月以降、12の国でジカウイルスのヒト-ヒト感染のエビデンスが報告されました。
  • 21の国と地域で、ジカウイルス感染症と関連する可能性の高い、または先天性の感染が示唆される小頭症や他の中枢神経奇形が報告されました。21か国のうち4か国では、国内でジカウイルスの発生がなく、最近、ジカウイルス感染症が発生している国へ旅行したことがある母親から、小頭症新生児が生まれたことが報告されています。
  • 18の国と地域で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でジカウイルス感染症の検査確認が報告されています。
    • 先週9月22日の発生状況報告で、エクアドルから誤って、初めてのジカウイルス感染症に伴う
      GBS患者が報告されていました。
  • ギニア・ビサウでは、報告された5人の小頭症患者の調査が続けられています。
  • (WHOの感染対策の)運営状況が更新されています。
    • ガイアナへのPAHO/WHO(汎米保健機構)技術指導派遣団が、首都ジョージタウンにある国立
      公衆衛生研究所でジカウイルスの診断の対処・実行能力を再検討しました。
    • WHO/PAHOは、知識、態度、実行(KAP)の研究のために6か国(ホンジュラス、グアテマラ、
      ドミニカ共和国、エルサルバドル、コロンビア、ブラジル)での比較分析を行う集会を開催しました。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 29September2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/250244/1/zikasitrep29Sep16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:725KB]