2016年10月07日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新34)

2016年10月6日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

情報更新の要点

  • 先週、新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症が報告された国や地域はありません。
  • タイの保健衛生省は、9月30日にジカウイルスが関係する小頭症事例2例を確認したとの調査結果を報告しました。これは、東南アジアでジカウイルスが関係する小頭症事例が確認された初めてのことです。これらの母親は、タイ国外への渡航歴はないと答えていました。
  • 先週、タイが、新しくジカウイルス感染症と関連する可能性のある小頭症や他の中枢神経系(central nerve system: CNS)の奇形が報告された国と地域に加わりました。
  • 先週、メキシコが、新しくジカウイルス感染症と関連するギラン・バレー症候群(GBS: Guillain-Barré syndrome)が報告された国と地域に加わりました。

分析

  • 全体として、世界におけるリスク評価は変わっていません。
  • タイ国内で報告されたジカウイルスの感染が関係した小頭症事例2例は、東南アジアでもこの種の合併症が起こりうることを明らかにしています。このウイルスの遺伝子配列を決定する試みが失敗に終わったため、これらの母親が以前に東南アジアで分離されていたウイルスが関係するウイルス株への感染なのか、アメリカ大陸から感染輸入されたウイルス株の伝播によるものなのか、は分かっていません。タイでは、2016年2月から小頭症への積極的な調査活動の計画が開始され、この調査計画が通常の先天性障害の調査活動に組み込まれていました。もし、以前に東南アジアで流行していたウイルス株が小頭症やその他の合併症と関係すると判明した場合、それはジカウイルスの感染が関係する合併症が西太平洋地域、アメリカ大陸、及びカーボベルデで2013年以降に流行したアジア系統ウイルス株に限定されないことを示したこととなるため、世界におけるリスク評価に重大な影響を与えます。
  • ジカウイルスが常在すると考えられている国々におけるジカウイルスが関係する合併症のリスクは、異なるジカウイルス株が関係するリスクについて不明確であり、これらが常在する環境での住民の免疫能が不確かなために、ほとんど分かっていません。免疫能への問題に対処するために、緊急に、血清学における研究が必要とされています。

発生状況

  • 73の国と地域で、2007年以来(2015年から67の国と地域です)蚊が媒介するジカウイルス感染伝播のエビデンスが報告されています。
    • 56の国と地域で、2015年以降流行発生が報告されました。
    • 7つの国と地域で、2016年に、蚊が媒介するジカの感染の地域感染の可能性やエビデンスが
      あります。
    • ニューカレドニアは、以前、カテゴリー3とされていました。しかし、これまでのデータを再検討した
      ところ、少なくとも2016年6月まではジカウイルスの感染者が報告されていたことが示されました。
    • 10の国や地域では、2015年までや2015年に地域で蚊が媒介するジカウイルス感染のエビデンス
      が報告されています。しかし、これらの国や地域では2016年に患者が報告されていないか、または
      流行が終息しています。
    • ニューカレドニアは、このカテゴリーから削除されました。
  • 2016年2月以降、12の国でジカウイルスのヒト-ヒト感染のエビデンスが報告されました。
  • 22の国と地域で、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、または先天性の感染が示唆される小頭症や他の中枢神経奇形が報告されています。
  • 19の国と地域で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でジカウイルス感染症の検査確認が報告されています。
  • 以前にジカウイルス感染症と関係するGBS患者が報告されていたグアドループで、先週、GBS患者の発生数増加が報告されました。ギニア
    ビサウでは、報告された5人の小頭症患者の調査が続けられています。
  • (WHOの感染対策の)運営状況が更新されています。
    • ハイチへのPAHO/WHO(汎米保健機構)技術指導派遣団が、首都ポルトープランスにある国立
      公衆衛生研究所分子検査の検出力の再検討とジカウイルスの血清学的診断の実施支援を行
      いました。
    • ニカラグアでは、WHO/PAHOが、ジカウイルス感染の発生状況下での妊娠女性の医療支援に
      焦点を当て、参加者70人による研究集会を行いました。
    • ペルーのJaén(ハエン)市では、WHO/PAHOが、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症
      の臨床管理に関する訓練の研究集会を開催しました。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 6 October 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/250295/1/zikasitrep6Oct16-eng.pdf?ua=1[PDF形式:725KB]