2016年10月27日更新 結核の10の事実

最近、多剤耐性結核が世界で拡がりをみせていることに伴い、WHOが結核についての現状を10項目にまとめて公表しています。WHOは、「結核撲滅のための戦略」で2030年までに世界から結核をなくすという目標を掲げています。

世界の人々のおよそ3分の1が、結核菌(TB)に感染しています。結核は、感染したうちのわずかな割合の人しか、発病しません。免疫力が低下した人は、結核が発病するかなり大きなリスクを持っています。HIV感染者が結核を発症する可能性は約26~31倍も高くなります。

2030年に向けて継続する活動目標の一つは、世界から常在する結核をなくすことです。2014年の世界保健総会で承認された「WHO結核撲滅のための戦略」では、2015年と比較して、2030年までに結核死亡数で90%、結核罹患率で80%の低下を求めています。

WHOから公表された新しいデータでは、世界で推定される結核の脅威は以前よりも高くなっていることが明らかになりました。「結核撲滅のための戦略」の目標を、今後15年間で達成する場合には、各国が、結核の予防、発見および治療に対し、今以上に力を入れる必要があります。

事実1:2015年に、世界では推定1,040万人が新しく結核患者となりました。インドを筆頭に、次いで、インドネシア、中国、ナイジェリア、パキスタン、南アフリカの6か国で、全体の60%を占めています。結核は治療可能で予防もできる病気です。

事実2:2015年には、180万人が結核で死亡しました(HIV感染者40万人を含む)。世界で、10人のうち1人が結核で死亡し、HIVやマラリアよりも上位となっています。

事実3:2015年には、100万人の子どもが結核を発症し、21万人(HIV感染者4万人を含む)が結核で死亡しました。小児の結核は、診断と治療が難しいために、しばしば、医療従事者からは見落とされています。

事実4:結核はHIV感染者の最大の死亡原因です。HIV感染者の死因の約35%が結核となっています。2015年に、抗ウイルス薬で治療しているHIV陽性患者において、結核の割合は78%にもなりました。

事実5:世界で結核を発症した人の数は、2000年から2015年にかけて減少傾向にあり、結核での死亡者は22%にまで減少しました。2010年以降、その死亡数の減少率は、東地中海地域とヨーロッパで最も高く(それぞれ、年6.5%と6.2%)、アフリカ地域では最も低く(年2.2%)なっています。

事実6: 2015年には、結核が高い脅威となっている30か国での新しい結核患者が87%を占めていました。結核は世界中で発生していますが、患者の大半はアジア(61%)とアフリカ(26%)です。

事実7: 2015年には、世界中で約48万人が多剤耐性結核となりました。これらの患者では、さらに多剤耐性結核が重症の状態となり、治療が難しくなります。超多剤耐性結核(XDR-TB)は、さらに治療可能な薬剤が少なくなる病態の結核です。

事実8:2000年から2015年までに、結核の治療で推定4,900万人の生命が救われました。しかし、重要となる診断と治療との解離は残っています。結核患者の治療成功の割合は、2014年には83%となりました。

事実9:2015年に結核に感染したであろう1,040万人のうち、2015年に発見され、報告されたのは610万人だけでした。430万人もの解離があります。世界での結核患者の減少割合は2014年から2015年にかけて1.5%に留まりました。2020年にストップ結核戦略の試金石に達するには年4-5%まで減少率を加速させる必要があります

事実10:結核の治療と予防に関して、低所得国と中所得国に対する投資は、2016年に必要とされる83億米ドルに20億米ドル不足していました。もし、現在のレベルで基金が増えなければ、2020年には、この解離がさらに大きくなります。

出典

WHO.Fact files, Media centre. 13 October 2016
10facts about tuberculosis
http://www.who.int/features/factfiles/tuberculosis/en/