2016年11月07日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新38)

2016年11月3付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

情報更新の要点

  • 先週、新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症が報告された国と地域はありません。
  • 先週、新しくジカウイルス感染症が関係する可能性のある小頭症その他の中枢神経系(central nerve system: CNS)奇形の報告された国と地域がありました。
    • ボリビア、トリニダード・トバコ、ベトナムです。
  • 先週、新しくジカウイルス感染症と関連するギラン・バレー症候群(GBS: Guillain-Barré syndrome)が報告された国と地域はありません。
  • ミャンマーの健康・スポーツ省が、ジカウイルスの確定患者を報告しました。この患者が国内感染か輸入感染かを確定するための調査が行われています。

分析

  • 全体として、世界におけるリスク評価は変わっていません。
  • ベトナムは、ジカウイルスが関係する可能性が高い小頭症患者を報告した、東南アジアで2番目の国となりました。これは、10月6日の発生状況報告においてタイから報告された2人の患者に続くものです。タイから報告された患者と同様に、遺伝子配列は分析できませんでした。そのため、母親が東南アジアで以前に分離されたものと同じ系統のウイルスに感染したのか、他の地域から持ち込まれたウイルスに感染したのかは不明のままです。ベトナムから報告された小頭症児の母親に、国外への渡航歴はありません。これまでに、ベトナムで輸入感染のジカウイルス感染症患者は報告されていません。

発生状況

  • 73の国と地域で、2007年以来(2015年以降、67の国と地域からです)蚊が媒介するジカウイルス感染伝播のエビデンスが報告されています。
    • 2015年以降、56の国と地域で流行発生が報告されました。
    • 7つの国と地域で、2016年に、蚊が媒介するジカの感染の地域感染の可能性やエビデンスがあります。
    • 10の国と地域で、2015年以前もしくは2015年に地域で蚊が媒介するジカウイルス感染のエビデンスが報告されています。しかし、これらの国と地域では、2016年には患者が報告されていないか、又は流行が終息しています。
  • 2016年2月以降、12の国でジカウイルスのヒト-ヒト感染のエビデンスが報告されました。
  • 26の国と地域で、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、または先天性の感染症が示唆される小頭症その他の中枢神経奇形が報告されました。最新では、ボリビア、トリニダード・トバコ、ベトナムで、ジカウイルスと関係する可能性が高い小頭症患者が報告されました。
  • 19の国と地域で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生数の増加、および/またはGBS患者でジカウイルス感染症の検査確認が報告されています。以前にもジカウイルスへの感染が確認されたGBS患者が報告されていたグアテマラで、先週、GBS患者発生数の増加が報告されました。
  • ギニア・ビサウでは、4月初めに確認された6人の小頭症患者の調査が行われています。
  • 汎米保健機関(PAHO、WHOアメリカ大陸事務局)と加盟国により、次の活動が共同で実施されています。
    • PAHO地域事務局、米国疾病対策・予防センター、PAHO/WHOペルー事務所との共同で組織された臨床検査の研究集会に8つの国から集まり、参加者に向けたジカウイルスに対する血清学診断のトレーニング(2016年10月、ペルー保健省国立衛生研究所)が行われました。
    • 知識・姿勢・実践(Knowledge Attitude and Practice:KAP)の調査結果を取り込むために保健省と支援組織(ワールド・ビジョン)により技術集会(2016年10月、グアテマラ)が開催されました。
    • 保健省長官の通達により実施されたKAPの調査結果を検討する技術集会(2016年10月、ホンジュラス)が開催されました。
    • 保健省と環境省の共同で、ジカウイルスの予防と媒介する蚊の駆除に対する個人レベルでの問題を確定させる運用調査研究の一環として担当委員会の設立(2016年10月、ドミニカ共和国)が設立されました。
    • 蚊への注意を促す啓発週間(2016年10月、アルゼンチン、コロンビア)が開催されました。
    • コロンビアでは、地域の女性指導者のためのトレーニング、信仰に基づく組織、臨床シンポジウム、症例の検討会、観光業における予防対策のための研究集会、連邦政府および地方の保健当局とともに各部門で学ぶ教訓を含めた活動が行われています。
  • PAHOと加盟国によって、次の活動が計画されています。
    • 分子生物学におけるジカウイルスおよびその他のアルボウイルスの診断のための研究集会の計画(2016年12月、ブラジル)
    • リスクの情報伝達に関する研究集会の計画(2016年12月、スリナム)
    • 初期対応の医療指示を支援するガイドライン作成のための会議(2016年11月)
    • GBS患者の死亡原因を分析するための会議(2016年11月、ドミニカ共和国)
  • WHOヨーロッパ地域事務所と加盟国は、次のことを組織しています。
    • 蚊の分類に関するトレーニング(2016年10月、アルメニア)
    • この地域での、蚊の侵襲と蚊の媒介による疾患の再興に関する研究集会(2016年11月、クロアチア)
    • 各国(の危険度)を振り分け、情報を共有するためのWHO、CDC、欧州疾病対策・予防センターの合同会議(2016年12月、デンマーク)
    • 船舶に対する媒介昆虫管理のためのガイドライン作成の専門家会議(2016年12月、フランス)
  • WHO東南アジア地域事務局とその加盟国は、タイでジカウイルスの予防と管理のための研究集会(2016年10月)を開催し、インドではジカウイルスのリスクを軽減するための戦略計画の研究集会(2016年11月)を計画しています。
  • WHO東地中海地域事務所と加盟国は、次のことを組織しています。
    • 地域のジカウイルスの調査戦略を決定するための研究協議集会(2016年11月、パキスタン)
    • ジカウイルス感染症の診断のためのトレーニング研究集会(2016年11月、2017年1月、ヨルダン)
    • ジカウイルスを含む公衆衛生上の危機管理のための発生事例管理システムのトレーニング(2017年1月、チュニジア)
    • ジカウイルスに焦点を当てた全ての危機への準備に関する省庁間の合同会議(2017年)

出典

WHO.Situation Report, Emergencies. 3 November 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/250724/1/zikasitrep3Nov16-eng.pdf[PDF形式:165KB]