2016年12月26日更新 鳥インフルエンザA(H7N9)の発生状況 (更新13)

2016年12月23日にWHOから公表された情報によりますと、香港特別行政区健康局は、12月20日に、鳥インフルエンザA(H7N9)感染者1人が検査確認されたことをWHOに報告しました。

報告の概要

患者は75歳男性です。2016年11月28日から12月9日まで広東省Dongguan(東莞市)を旅行していました。彼は12月8日に胸部不快感を自覚し、現地で病院を受診しました。12月9日には香港に戻りました。それと同時に、咳、痰、呼吸頻拍、鼻汁、胸部不快感のために救急車で病院へ直行し、入院となりました。

12月9日に採取された鼻咽頭ぬぐい液からは、エンテロウイルスとライノウイルスに対し陽性の反応が出ましたが、インフルエンザに対しては陰性でした。(しかし)12月19日に採取された鼻咽頭ぬぐい液からは鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのRNAに対し陽性の反応が出ました。彼は、報告の時点で、既に重篤と報告されました。12月21日には、彼の容態はさらに悪化しました。彼は東莞市で生鮮市場を訪れており、調理された鶏を購入していました。健康局は、広東省の健康部局にも連絡し、調査を続けています。

2013年初頭以降これまでに、IHRを通して、鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者808人が報告されています。

公衆衛生上の取り組み

健康局健康予防センターは、次のような取り組みを行っています。

  • 日常、旅行中ともに個々人、食糧、環境の衛生状態を厳格に維持することを市民に要請しました。
  • 医師、病院、学校に対する注意情報を発令し、最新の発生状況を各機関に知らせました。

WHOのリスク評価

人におけるほとんどの患者は、感染した家禽との接触または生きた家禽を扱う市場などのウイルスに汚染された環境との接触を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)に感染しています。このウイルスが動物や環境中で検出され続けている限り、さらに患者が発生することが予想されます。医療従事者が関係する感染も含めて、これまでにも人への感染の小さな集団発生は報告されてきましたが、現在の疫学的・ウイルス学的な根拠からは、このウイルスが人と人との間で感染伝播を維持し続ける能力は獲得していないことが示唆されています。それ故に、地域レベルで感染が拡がる可能性は低いと考えられます。

このA(H7N9)ウイルスの人での感染は稀ですが、公衆衛生上に深刻な影響を与える可能性があるものとして、このウイルスの変異の有無および/または人への感染率の変化を検出する必要があり、厳密に監視することが必要です。

WHOからのアドバイス

WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、可能な限り養鶏場への立ち入り、生きた家禽類をさばく市場での動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物品との接触を避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、食品の安全と衛生習慣の維持に努めるべきです。

WHOは、この事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中又は帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、常に鳥インフルエンザウイルスへの感染を鑑別診断として考えておくべきです。

WHOは各国に対して、重症急性呼吸器感染症(SARI)およびインフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、通常と異なる傾向がないか慎重に調査し、人症例が生じた際には国際保健規則(2005)に基づき必ずWHOに報告し、各国国民の健康に備える活動を続けていくことを求めています。

中国に滞在される方は、今後も情報に注意していただくとともに、手洗いや咳エチケットをこころがけてください。また、鳥に直接触ったり、病気の鳥や死んだ鳥に近寄ったりしないようにしてください。入国の際に、発熱、咳、喉の痛みなどの症状がある場合には検疫所に相談してください。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 23December2016
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus - China(Hong Kong
http://www.who.int/csr/don/23-december-2016-ah7n9-china/en/