2017年02月07日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新2)

2017年2月2日付で汎米保健機関(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

2017年2月2日現在、ブラジルで、黄熱患者が確認されています。また、ペルーとコロンビアからは、感染の可能性の高い患者が報告されました。

ブラジルでは、2016年12月1日から2017年2月2日までに、黄熱患者901人(確定患者151人、棄却42人、疑い患者としての調査中の患者708人)が報告されました。このうち、143人が死亡者(確定患者から54人、棄却された患者から3人、調査中の患者から86人)として報告されました。患者全体における死亡率は16%、確定患者では36%、調査中の疑い患者では12%でした。

疑い患者と確定患者が感染した可能性の高い地域は5州となっています。バイーア州(10人)、エスピリト・サント州(67人)、ミナス・ジェライス州(802人)、サンパウロ州(7人)、Tocantins(トカンティンス:4人)州でした。疑い患者と確定患者の患者死亡率は、エスピリト・サント州で12%、ミナス・ゴイアス州で16%、サンパウロ州で43%でした。

診断確定患者は、エスピリト・サント州(13人)、ミナス・ジェライス州(134人)、サンパウロ州(4人)の3州に分布していました。確定診断された患者のうち、50%が31歳から50歳までの男性でした。確定診断された死亡者については、48人がミナス・ジェライス州で、3人がサンパウロ州で、3人がエスピリト・サント州で発生していました。

また、人以外のサル目において、動物での集団感染の発生412件が報告されました。サル1,202個体が死亡していました。これまでに、このうちの259個体で黄熱への感染が確認されました。

人以外のサル目における動物の集団感染は、Roraima州(ロライマ:ベネズエラと国境を接する州)、トカンティンス州、ゴイアス州、ミナス・ジェライス州、バイーア州、エスピリト・サント州、サンパウロ州、マットグロッソ・ド・スール州(パラグアイと国境を接する州)、Rio Grande do Norte州(リオグランデ・ド・ノルテ)、Paraná州(パラナ:アルゼンチンおよびパラグアイと国境を接する州)と連邦直轄地区から報告されています。ベネズエラと国境を接するロライマ州での動物の感染発生、並びにマットグロッソ・ド・スール州およびアルゼンチンおよびパラグアイと国境を接するパラナ州では、国境を接する地域が共通の生態系をもっているため、隣国へのウイルス波及のリスクが示されています。

このような発生状況に対応して、連邦、州、市町村の各公衆衛生を担当する規制当局は、さまざまな活動を実施しています。ミナス・ジェライス州、エスピリト・サント州、サンパウロ州、バイーア州、リオ・デ・ジャネイロ州へは780万本のワクチンが配布されました。現段階で、集団感染の発生における伝播にネッタイシマカが関与している証拠はありません。しかし、都市の再開発による潜在的なリスクを排除することができません。

各国の保健当局へのアドバイス

PAHO / WHOは、アメリカ大陸各国における黄熱の確定患者の増加と黄熱の動物での感染発生の増加を注視し、いくつものアルボ・ウイルスによる感染流行が発生する状況においては、加盟各国が黄熱患者の発見、確認、管理を継続することを勧めています。この目的のために、保健衛生の従事者は、特に、これまでにウイルスの伝播が確認された地域の従事者は、患者を発見・治療できるように、最新の情報を維持し、訓練することが勧められます。

黄熱への最も有効な予防対策はワクチン接種です。ワクチンの予防接種の対策は、小児期の定期予防接種や感染リスクのある地域でのワクチン接種率を高めるための唯一の手段である集団接種キャンペーンを通じて、また感染リスクのある地域へ向かう渡航者へのワクチン接種を通じて、行うことができます。

黄熱ワクチンは安全で価格も高くなく、ワクチン接種10日後には80~100%、30日後には99%の人に黄熱に対して効果を発揮する免疫力を身につけます。この免疫力は単回投与で十分であり、改めて増強のための接種をすることなく、生涯にわたり免疫力を保持します。重度の副作用が発生することは極めて稀です。

入手できるワクチン量には限りがあるため、各国の担当当局は、ワクチンの配布に重点を置いて、感染リスクのある地域での黄熱ワクチン接種を実施することに慎重な評価を行うことが勧められます。また、感染の流行が発生する可能性に対処するために、国がワクチンの在庫量を管理することが勧められます。

PAHO / WHOは、黄熱の発生が続く国に対し旅行や貿易に関して制限することを勧めてはいません。

出典

PAHO.Epidemiological Update. 2February2017
Yellow Fever
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=37953&lang=en