2017年03月14日更新 ジカウイルス感染症の発生状況について (更新4)
2017年3月10日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。WHOは、定期報告としては、今回を最終の報告とするとしています。また、2017年3月10日付けでPAHOからも、ジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況が報告されています。
ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。
WHOからの発生状況の報告の要点
- 2月1日以降に、新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症が報告された国と地域はありません。
- 2月1日以降に、メキシコとサン・マルタンで、新しくジカウイルス感染症が関係する可能性のある小頭症その他の中枢神経系(central nerve system: CNS) 奇形が報告されました。
- 2月1日以降に、キュラソーとトリ二ダード・トバコで、新しくジカウイルス感染症と関連するギラン・バレー症候群(GBS: Guillain-Barré syndrome)が報告されました。
- WHO、アメリカ疾病予防管理センター、欧州疾病予防管理センターが、ジカウイルスについての新しい分類案を作成しました。分類は、公衆衛生上の勧告を周知させることに役立つように、蚊の媒介性によるジカウイルスの伝播が存在する可能性および潜在する可能性に基づいて分類されました。定義された分類基準と専門家による再検討に基づいて、いくつかの国と地域の区分が再分類されました。一部は、初めて分類されました。
- この病気がもつ長期的な特性と、そこから生じる結果に対応して、WHOが継続的なプログラムへと移行させることにともない、WHOから報告されるジカウイルス感染症の発生状況は最後となります。(しかし)WHOは、定められた基準に基づいたジカウイルスの分類表を公表するとともに、定期的に発生状況を分析し、公表し続けていきます。
分析
全体として、世界におけるリスク評価は変わっていません。ジカウイルスは、媒介する蚊が生息する地域で、地理的に拡大し続けています。いくつもの国、いくつもの地域で、ジカウイルス感染症の患者が減少する傾向が報告されていますが、警戒体制を高く維持しておくことが必要です。
発生状況
- 84の国と地域で、蚊が媒介するジカウイルスの感染伝播のエビデンスが報告されています。
- これまでに61の国と地域では、2015年以降に、新たに(ウイルスが)持ち込まれるか、
感染伝播が阻止されていたものの再興するかにより感染の伝播が続いています(カテゴリー1)。 - 18の国と地域では、2015年以前にウイルスの感染伝播が続いていた証拠があり、
新しくウイルスの持ち込みや再興はないものの、現在も(ウイルスの)阻止の証拠が
得られていません(カテゴリー2)。 - 5つの地域では、感染の伝播は阻止されたものの、今後も伝播が起こる可能性が
あります(カテゴリー3)。
- これまでに61の国と地域では、2015年以降に、新たに(ウイルスが)持ち込まれるか、
- 64の国と地域では、過去にも現在も、ジカウイルスの伝播が発生した記録はないものの、これを媒介できる蚊が生息しています(カテゴリー4)。
- 13の国では、ジカウイルスのヒト-ヒト感染のエビデンスが報告されました。
- 31の国と地域では、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、または先天性の感染症が示唆される小頭症その他の中枢神経奇形が報告されました。
- 23の国と地域では、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生数の増加、および/またはGBS患者でジカウイルス感染症の検査確認が報告されました。
PAHOからの発生状況の報告の要点
2016年第44週以降、アメリカ大陸で、新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症の国内感染が報告された国と地域はありません。2015年以降、これまでに、アメリカ大陸の48の国と地域で新しく蚊の媒介によるジカウイルス感染症の国内感染が確認されました。また、アメリカ大陸5か国では、性行為によるジカウイルスの感染例が報告されました。
地域別の疫学状況は次のように要約されています。
北アメリカ
アメリカ合衆国フロリダ州保健省では、地域内で感染した患者が報告されています。
メキシコでは、2016年第40週以降は減少傾向にあるものの、新たな患者の報告が続いています。
中央アメリカ(中米)
中米では、患者数が、過去4週間(2017年第6週から第9週)は週平均で335例(疑い患者275例、確定患者60例)報告されており、流行が続いていますが、減少してきています。
コスタリカでは、2017年第5週に、疑い患者と確定患者の数が僅かに増加しました。
パナマでは、2016年第30週から2017年第1週まで、疑い患者数と確定患者数が増加傾向を示していました。2017年第2週には減少してきましたが、過去4週間に疑い患者数と確定患者数を合わせて週平均で229人の報告が続いていました。
カリブ海諸国
アルバでは、2016年第29週から2017年第4週までの間、疑い患者数と確定患者数の増加傾向が報告されました。過去4週間では、週平均で疑い患者と確定患者を合わせて53人が報告されました。
キュラソーでは、2016年第31週から第47週までの間、疑い患者数と確定患者数が増加傾向にありました。
グアドループとマルティニークでは、過去5週間(2017年第1週から第5週)に、散発的に少数の確定患者が報告されており、わずかながらウイルスの流行が続いていました。
カリブ海の他の国や地域では、患者が報告され続けていますが、過去4週間の週平均患者数は340人で、この地域では減少する傾向にあります。
南アメリカ(南米)
アルゼンチンでは、2017年第8週にSalta州(1件)およびChaco州(1件)の2件で、初めて地域内での感染による患者が確認されました。Chaco州の患者は、 感染させる可能性のある時期にFormosa州に滞在していたことが分かりました。2016年に、Córdoba州とTucumán州で、地域内での感染による患者が確認されました。
パラグアイでは、2016年第42週から2017年第5週にかけて、報告された患者数が増加しました。
ペルーでは、2017年第1週から第3週にかけて、報告された患者数が増加しました。この増加傾向はLoreto県で発生した感染の集団発生に関係しています。2017年には、Loreto県、San Martín県、Ucayali県の新たな地区で、患者が報告されました。
南米の国々では、これまでと変わらない患者数が報告されており、過去4週間には、週平均で患者396人(疑い患者353人、確定患者43人)でした。
ジカウイルス感染症に関連する先天性症候群
これまでに、アメリカ大陸の24の国と地域で、ジカウイルス感染症に関連していることが確認された先天性症候群が報告されてきました。2017年第5週には、サン・マルタンで、初めてジカウイルス感染症に関連することが確認された先天性症候群の患者が報告されました。この4週間に、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、ドミニカ共和国、フランス領ガイアナ、グアドループ、グアテマラ、マルティニーク、プエルトリコ、トリニダード・トバコおよびアメリカ合衆国で、ジカウイルス感染症に関連する先天性症候群の患者数が更新されました。
ギラン・バレー症候群(GBS)およびその他の神経障害
2017年第7週に、キュラソーとトリダード・トバコで、新しくジカウイルス感染症と関連するギラン・バレー症候群が報告されました。
ジカウイルスへの感染が減少することに伴い、関連係するGBS患者も同様の傾向を示していました。
出典
- WHO.Situation Report, Emergencies. 10 March 2017
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/254714/1/zikasitrep10Mar17-eng.pdf?ua=1[PDF形式:510KB] - PAHO/WHO.Epidemiological Alerts and Updates. 10 March 2017
Zika - Epidemiological Update
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=38610&lang=en