2017年04月11日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新11)

2017年4月10日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

2017年第1週から第14週までに、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、スリナムでは黄熱の疑い患者と確定患者が報告されました。

ブラジルから、次のように発生状況が報告されています。

ブラジルでは、2016年12月始めの流行発生以降、2017年4月6日までに、黄熱患者2,210人(確定患者604人、破棄1,054人、疑い患者および検査中の患者552人)が報告されました。このうち、302人(確定患者202人、破棄52人、検査中48人)が死亡していました。確定患者での死亡率(CFR)は、33%でした。

感染する可能性が高い地域として、342の行政地区から患者が報告されました。このうち、確定患者は5州(エスピリト・サント州、ミナス・ジェライス州、パラ州、リオ・デ・ジャネイロ州、サンパウロ州)103行政地区に分布していました。

確定診断された死亡者と感染の可能性が高かった死亡者は、ミナス・ジェライス州が148人、サンパウロ州が4人、エスピリト・サント州が43人、パラ州が4人、リオ・デ・ジャネイロ州が3人でした。疑い患者と確定患者を合わせた死亡率は、高い順に、パラ州で100%、サンパウロ州で80%、ミナス・ジェライス州で34%、リオ・デ・ジャネイロ州で29%、エスピリト・サント州で27%でした。

ミナス・ジェライス州では、報告される患者数の減少傾向が続いています。最後に報告された患者の発症日は、2017年3月6日でした。エスピリト・サント州では、2017年第9週以降、新たな患者の増加がみられました。患者の大半は、州南部から報告されています。州と地元の保健当局が、この増加に対する調査と傾向の分析を行っています。同時に、予防接種に対する活動の強化を行っています。同様に、リオ・デ・ジャネイロ州でも、3月15日から25日にかけて増加の傾向がみられました。この傾向がこれからの数週間も続くかどうか、見極める必要があります。

さらに、第13週には、現地で感染した患者4人が、パラ州Alenquer地区(3人)とMonte Alegre地区(1人)で確認されました。

ブラジルの研究者らが実施した最新の研究で、エスピリト・サント州で発見されたサザンブラウン・ホエザル(Alouatta guariba clamitans)2個体から得られた試料の遺伝子配列を特定したところ南米遺伝子型Iに属していたことが報告されました。ブラジルでは、これまでの流行でも、この遺伝子型が最も頻繁に見つかっています。

流行の開始以降、4月6日までに、人以外の霊長目による動物での集団感染が合計で2,871件報告されました。このうち474個体で黄熱への感染が確認され、997個体で検査が行われています。77個体では、診断が棄却されました。ブラジルの黄熱に関する報告書の第34号と第35号で、人以外の霊長目による動物での集団感染が159件追加されました。これらの報告の大半は、2017年1月から4月にかけて発生していたもので、記録を遡っての調査で記録に加えられました。

人以外の霊長目による集団感染は、連邦直轄地区と、アラゴアス州、アマゾナス州、バイーア州、ゴイアス州、エスピリト・サント州、マット・グロッソ州、マット・グロッソ・ド・スール州、ミナス・ジェライス州、パラ州、パライバ州、パラナ州、ペルナンブーコ州、リオグランデ・ド・ノルテ州、リオグランデ・ド・スール州、リオ・デ・ジャネイロ州、ロンドニア州、Roraima(ロマイマ州)、サンタ・カタリーナ州、サンパウロ州、セルジッペ州、トカンティンス州から報告されています。

現在、アルゼンチン、ボリビア、コロンビア、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラと国境を接する州で人以外の霊長目による集団感染の発生の報告に対する調査が行われています。これらの報告は、国境を接する国々、特に共通の生態系をもっている地域に、ウイルスが拡がるリスクのあることを示しています。

PAHOからの勧告事項

PAHO / WHOは、現在のブラジルでの黄熱の発生状況、および数年間は患者が発見されて来なかった地域で患者が発生していることを踏まえ、黄熱患者を発見し、確認し、速やかにかつ適切に治療するための取り組みを続けることを、加盟国に促しています。この目的のために、医療従事者は常に最新の情報を把握し、特にウイルスの伝播が確認されている領域においては、患者を発見し、治療するためにトレーニングしておくことが必要です。

PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを求めています。

黄熱ワクチンの接種について
黄熱への最も重要な予防対策は、ワクチン接種です。ワクチン接種は、小児期の定期的な予防接種や発生リスク地域でワクチンの接種率を高めるために行う独自の集団接種キャンペーンを通じて、実施されています。また、リスク地域を旅行する者へのワクチン接種も行われています。

黄熱ワクチンは安全で価格も高くはなく、ワクチン接種した者には10日後に80~100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が得られるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。重篤な副作用は、極めて稀です。

入手できるワクチンの量には限りがあるため、各国の担当部局は、黄熱の感染リスク地域におけるワクチン接種率を評価し、ワクチンの分配に重点を置くことが求められます。また、流行が発生する可能性に備えて、国のレベルでワクチンの在庫量を維持することが求められます。

次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
•一般の健康人で急性の発熱性疾患を患っている人
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対する過敏症の既往歴のある人
•妊娠中の女性(緊急事態や規制当局からの明白な勧告がある場合を除く)
•重度の免疫不全(例、がん、白血病、AIDSなど)のある人
•6か月未満の乳児
•胸腺に関連する疾患を有する人(年齢は問わない)

高齢者でのワクチン接種には、次のような注意事項があります。
•ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に感染したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。

出典

PAHO.Epidemiological Update. 10 April 2017
Yellow Fever
http://www2.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=39198&lang=en