2017年04月18日更新 公衆衛生における10年 2007-2017:WHO事務局長より

2017年4月13日付けで、WHO事務局長Margaret Chan博士が就任から10年を振り返っての講演が掲載されています。

WHO事務局長Margaret Chan博士より

ここで、私たちがWHO事務局を務めた10年にわたって世界の公衆衛生の進展を記した「公衆衛生における10年2007-2017」のお話を始めることと致します。

これから6週にわたって発表されるであろう一連の報告書では、私たちの在任中にあった成功、挫折、恒久的な課題について評価していきます。これらの報告書では、(取り組みの)進展が失速してしまったとき、また、新たな脅威が現れたときに、何が為されるべきかを示しています。これらの報告書では、一貫した戦略の下で、WHOはたくさんの加盟国と連携しながら、機関としてのリーダーシップをどのようにしていくべきかを示しています。報告書全体を通して、それぞれの国のリーダーシップと地域の活動参加の重要性が繰り返し述べられています。

私たちは、皆で、驚異的な進歩を成し遂げました。健康寿命および平均余命は、あらゆる土地で改善されました。数百万人の命が救われました。マラリアやHIV感染での死亡者数は半減しています。結核を阻止するためのWHOの取り組みは、今世紀の初めからでも4,900万人の命を救いました。2015年には、幼児の死亡者数が初めて600万人を下回り、1990年以降の年間死亡者数は50%減少しました。毎日、死んでいく子どもは19,000人よりも少なくなりました。私たちは、WHOに対策と説明責任の文化を浸透させたことで、これらの成功を(数多く)数えることができます。

この21世紀において健康問題が直面している課題は、(人類が)その複雑さを経験したことがなく、その衝撃は世界的なものとなっています。年齢構成の高齢化、急速な都市化、健康を害する製品の世界市場での拡がりなどの圧力の下で、慢性に起きてくる生活習慣病は感染症を抜いて、世界の死亡原因の上位に来ています。心臓発作、脳卒中、癌、糖尿病、慢性呼吸器疾患などに対処することへの政治的な関心の高まりは、人々の寿命そのものと健康寿命を向上させる強い力として歓迎されます。しかしながら、世界中のどの国も、すべての年齢層で肥満の増加傾向を回避することができませんでした。私は、個人的には、政治的な関心が女性に向けられ、彼女らの健康の必要性に向けられ、彼女らの社会への貢献に向けられていることを歓迎しています。女性、そして女児に力を注ぐことには、将来に及ぶ効果があります。最終的に、社会の全員が勝つことになります。

2014年の西アフリカにおけるエボラ出血熱の大流行から得た教訓は、WHOの新しい公衆衛生上の緊急対策プログラムの設立を促し、大流行や緊急事態に対して、迅速かつ効果的に取り組むことを可能にしました。エボラ出血熱への対策に基づいて作成されたR&D計画の青写真は、ジカウイルスのような疾患に対して疾病対策の進展を加速させ、新しいワクチンやその他の医療品の開発を、月単位、年単位で短縮しています。例えば、2016年12月にWHOは、ギニアで実施されたエボラ・ワクチンが臨床試験においてほぼ100%の予防効果を示したことを発表できました。

これらの報告書では、WHOにおいて共通に取り組むべきもう一つの優先事項、即ち、倫理的問題への取り組みとして、医療への利用環境の公平性を示しています。経済的または社会的な要因を含めて、不公平な理由により救命活動や健康の増進に対し積極的に活動する環境の利用は、誰に対しても拒否されるべきではありません。その原則には、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)にWHOが取り組んできたことの存在が強く示されています。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジは、発展を続けるためのアジェンダ2030の中核要素として、一次医療に重点を置くことからユニバーサル・ヘルス・カバレッジを包含するものへと拡大させたものです。健康維持は、世界目標の中心に位置しています。重要なことは、各国が社会での平等性に対し強力な推進役となってきたことでした。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジは、発展を続けることの目標への精神を反映しており、公平で、確実に誰も取り残されることのないことを究極的に表現しています。

これらの報告書では、世界が直面する課題とその克服方法についても、力強く述べています。かなり不確実性の高い世界では、世界が健康を発展させることは、人類の利益において一致団結を図る大きな力です。私は、この印象深い協調の精神と世界の団結の目撃者となれていることを誇りに思っています。

出典

WHO.Media Centre. 13 April 2017
Ten years in public health2007-2017, By Dr Margaret Chan, Director-General, WHO.
http://www.who.int/publications/10-year-review/dg-letter/en/