2017年05月09日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新14)

2017年5月2日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

2017年第1週から第17週までに、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、スリナムでは黄熱の疑い患者と確定患者が報告されました。

ブラジルから、次のように発生状況が報告されています。

ブラジルでは、2016年12月始めの流行発生以降、2017年4月27日までに、黄熱患者3,131人(確定患者715人、疑い患者および検査中の患者827人、診断破棄1,589人)が報告されました。このうち、死亡者が392人(確定患者240人、診断破棄113人、検査中39人)いました。確定患者における死亡率(CFR)は34%でした。

感染の可能性が高い地域として、399行政地区から患者が報告されました。このうち、確定患者は6州(エスピリト・サント州、ミナス・ジェライス州、パラ州、リオ・デ・ジャネイロ州、サンパウロ州、トカンティンス州)123行政地区に分布していました。

確定患者が死亡し、その感染の可能性が高かった地域は、エスピリト・サント州(61人)、ミナス・ジェライス州(165人)、パラ州(4人)、リオ・デ・ジャネイロ州(3人)、サンパウロ州(7人)でした。各州の確定患者の死亡率は、高い順に、パラ州で100%、サンパウロ州で41%、ミナス・ジェライス州で34%、エスピリト・サント州で30%、リオ・デ・ジャネイロ州で27%でした。

先週は、エスピリト・サント州、ミナス・ジェライス州、リオ・デ・ジャネイロ州の新たな行政地区からは、黄熱患者および動物の集団感染が報告されませんでした。

ミナス・ジェライス州で最後に報告された患者の発症日は、2017年3月14日で変更ありませんでした。一方で、ブラジル保健省により公表された4月19日から26日までの黄熱に関する報告書によれば、新たに患者9人が報告されましたが、これらは、この発症日よりも以前に発症した患者でした。

エスピリト・サント州では、多くの患者が州の中央部から南部で確認されました。確定患者が報告された行政地区は、Ibatiba (22人)、Colatina (21人)、Santa Leopoldina(20人)で、31%を占めていました。

リオ・デ・ジャネイロ州で最後に患者が確認されたのは、4月20日にMaricá地区からでした。サンパウロ州で最後に確定患者が発症した日は、4月6日でした。

これまでのところ、ネッタイシマカが感染の伝播に関わっていることは報告されていません。しかし、エスピリト・サント州Vitori(ビトリア)、バイーア州Salvador(サルバドール)といった大都市でも動物での集団感染の発生が確認されており、感染伝播サイクルの変化に対するリスクが高まりをみせています。

流行の開始以降、2017年4月27日までに、人以外の霊長目による動物での集団感染が合計で3,467件報告されました。このうち474個体で黄熱への感染が確認され、1,367個体で検査が行われています。88個体では、診断が棄却されました。ブラジルで発行されている黄熱に関する報告書第37号から第38号までに、人以外の霊長目による動物での集団感染が222件加えられました。

人以外の霊長目による集団感染は、連邦直轄地区と、アラゴアス州、アマゾナス州、バイーア州、ゴイアス州、エスピリト・サント州、マット・グロッソ州、マット・グロッソ・ド・スール州、ミナス・ジェライス州、パラ州、パライバ州、パラナ州、ペルナンブーコ州、リオグランデ・ド・ノルテ州、リオグランデ・ド・スール州、リオ・デ・ジャネイロ州、ロンドニア州、ロライマ州、サンタ・カタリーナ州、サンパウロ州、セルジッペ州、トカンティンス州から報告されています。

現在も、アルゼンチン、ボリビア、コロンビア、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラと国境を接する州で調査が続けられている人以外の霊長目による集団感染の発生報告は、国境を接する国々、特に共通の生態系をもっている地域に、ウイルスが拡がるリスクのあることを示しています。

PAHOからの勧告事項

PAHO / WHOは、現在のブラジルでの黄熱の発生状況、および数年間は患者が発見されて来なかった地域で患者が発生していることを踏まえ、黄熱患者を発見し、確認し、速やかにかつ適切に治療するための取り組みを続けることを、加盟国に促しています。この目的のために、医療従事者は常に最新の情報を把握し、特にウイルスの伝播が確認されている領域においては、患者を発見し、治療するためにトレーニングしておくことが必要です。

PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを求めています。

黄熱ワクチンの接種について
黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80~100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。(また)黄熱ワクチンでの重大な副作用の報告は滅多にありません。

入手できるワクチンの量には限りがあり、合理的な使用を念頭に置く必要があるため、PAHO/WHOは、次のことを繰り返し各国の保健当局に勧告しています。

1)リスクのある地域では、行政地区のレベルでこの地域に暮らす住民のワクチン接種率が少なくとも95%を維持していることの評価を実施すること
2)現在、感染の流行が発生していない国では、予防接種キャンペーンを行うべきではありません。感染の可能性の高い人々にワクチン使用の優先順位が与えられるべきであり、再ワクチン接種を避けるべきです。
3)感染が常在する地域へ向かう全ての旅行者は、少なくとも旅行の10日前に、予防接種を確実にすること。
4)ワクチンが利用できる状況に応じて、加盟国は感染の流行に対処するために小規模の備蓄をして置かなければなりません。
5)十分にワクチンが入手できる状況になるまでは、感染が常在していない地域での小児に対する定期予防接種は延期してください。(このとき)入手できる状況になったら、ワクチン接種スケジュールを完了するために、追加の(接種)キャンペーンを実施してください。

注意事項
ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に罹患したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。

•予防接種を必要とするCD4陽性細胞数≧200 cells / mm3で、症状のないHIV感染者には、ワクチン接種の求めに応じることができます。
•妊娠女性は、緊急性のある状況で予防接種を受けるべきであり、保健当局の勧告に従う必要があります。
•乳児にワクチンのウイルスを伝播させるリスク(黄熱は生ワクチンである)は、母乳育児中の女性での予防接種の効果よりも低いため、感染が常在する地域で暮らす授乳中の女性にも予防接種は推奨されます。
•黄熱が流行している地域への旅行を予定する妊娠中または授乳中の女性に対しては、旅行を延期するか、避けるかを検討し、それができないときには予防接種が推奨されます。彼女らには、予防接種の潜在的なリスクとベネフィットについてのアドバイスを受け、情報に基づいて意志決定される必要があります。母乳育児によるメリット(受益)は、代替の栄養食品によるものよりも優れています。

次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。

•免疫不全の病態にある人(胸腺疾患患者、症候性のHIV感染者、悪性新生物の治療中の患者、免疫抑制治療中の患者、免疫を調節治療している患者、最近の臓器移植した患者、現在または最近の放射線療法を受けた患者など)。
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対し重度のアレルギーのある人

出典

PAHO.Epidemiological Update. 2 May
Yellow Fever
http://www2.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=39764&lang=en