2017年05月24日更新 鳥インフルエンザA(H7N9)の発生状況 (更新16)

2017年5月23日にWHOから公表された情報によりますと、5月13日に、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)から、新たに鳥インフルエンザA(H7N9)患者23人が検査で確認されたことがWHOに報告されました。

報告の詳細

発症日は、4月11日から5月6日まで(の患者)です。これらの患者23人のうち、10人が女性でした。患者の年齢幅は31歳から83歳で、中央値は58歳でした。患者は、北京(2人)、福建省(1人)、甘粛省(1人)、河北省(5人)、河南省(3人)、湖北省(1人)、江蘇省(2人)、陝西省(3人)四川省(3人)、天津市(1人)、浙江省(1人)から報告されました。

報告された時点での病態の情報では、死亡者が7人、(肺炎)患者が15人(肺炎5人と重症肺炎10人)で、軽症が1人でした。患者19人には、家禽や生きた家禽を扱う市場との接触機会がありました。患者1人は、病院で鳥インフルエンザA(H7N9)患者を訪れていました。また、(別の)患者1人には、生きた家禽との接触機会と確定患者との接触機会の両方がありました。(残る)患者2人には家禽との接触機会がなかったことが報告されました。

2組の集団感染が報告されました。
・1組目:陝西省Xi'an(西安市)に住む、63歳男性です。彼は、2017年4月29日に発症し、5月2日に入院しました。症状は軽症でした。彼は、病院で1人の診断確定患者を訪れていました。この患者は、西安市に住む62歳の男性で、4月18日に発症していました(WHOからは5月5日に報告されました)。
・2組目:河南省Chengde(承徳市)に住む37歳女性です。彼女は、2017年5月2日に発症し、5月3日に入院しました。彼女は、発症前に、裏庭の家禽小屋に立ち入っていました。加えて、診断確定患者との接触機会もありました。この患者は、62歳の彼女の母親で、4月16日に発症していました(WHOからは5月5日に報告されました)。

2013年初頭からこれまでに、IHRを通して、鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者1,486人が報告されています。

公衆衛生上の取り組み

中国政府は、国と各地方のレベルで、次のような主要対策を実施しています。

  • 鳥インフルエンザA(H7N9)流行状況の情報や、リスク評価および感染予防と感染制御の強化方針を周知するために、感染が発生し、(対策の)鍵となる省の間で、テレビ会議が開かれました。
  • 生きた家禽市場および地域間の輸送への衛生管理に重点をおいた感染制御への対策強化が続けられています。
  • 効果的に感染予防と感染制御への対策の周知を図るために、感染源に関する詳しい調査が行われています。
  • 死亡率を低下させるために、鳥インフルエンザA(H7N9)感染者の早期に発見・治療が続けられています。
  • 自らを感染から守るための指針を国民に向けて示すために、リスクに対する意思疎通と問題点となる情報への注意喚起の徹底を、引き続き、実施しています。
  • 感染の予防と管理のためのさらに(詳しい)ガイダンスを提供するために、ウイルス学の視点から、感染地のウイルス汚染のレベルや突然変異への理解を深めるための調査活動が強化されています。

WHOのリスク評価

2016年10月1日以降に発生した5回目の流行の波での鳥インフルエンザA(H7N9)の患者数と地域分布は、これまでの流行の波よりも大きくなっています。このことは、ウイルスが広がっていることを示しており、人と動物、両方の健康領域でより強化した調査活動と感染制御対策が重要であることを強く示しています。

ほとんどの患者は、感染した家禽との接触または生きた家禽を扱う市場などのウイルスに汚染された環境との接触を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)に感染しています。このウイルスが動物や環境中で検出され続けていることから、さらに患者が発生することが予想されます。これまでにも同じ部屋にいた患者が関係した事例など、小さな集団で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染が発生したことは報告されてきましたが、現在の疫学的・ウイルス学的な根拠からは、このウイルスが人と人との間で感染伝播を維持し続ける能力は獲得していないことが示唆されています。そのため、地域レベルで感染が拡がる可能性は低いと考えられます。

直近のウイルスの疫学的な発生状況や新たな特徴について詳細に分析することは、リスクを評価し、リスク危機の対策の調整を図り、速やかに対処していく上で不可欠となります。

WHOからのアドバイス

WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、可能な限り養鶏場への立ち入り、生きた家禽類を扱う市場での動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物資との接触を避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、食品の安全と衛生習慣の維持に努めるべきです。

WHOは、この事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。これまでと同様に、鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中又は帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、常に鳥インフルエンザウイルスへの感染を鑑別診断として考えておくべきです。

WHOは各国に対して、重症急性呼吸器感染症(SARI)およびインフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、通常と異なる傾向がないか慎重に調査し、人での症例が生じた際には国際保健規則(2005)に基づき必ずWHOに報告し、引き続き各国国民の健康維持に備えることを要請しています。

中国に滞在される方は、今後も情報に注意していただくとともに、手洗いや咳エチケットをこころがけてください。また、鳥に直接触ったり、病気の鳥や死んだ鳥に近寄ったりしないようにしてください。入国の際に、発熱、咳、喉の痛みなどの症状がある場合には検疫所に相談してください。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 23 May 2017
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus - China

http://www.who.int/csr/don/23-may-2017-ah7n9-china/en/