2017年05月29日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 -インド

2017年5月26日にWHOより公表された情報によりますと、インドの保健・家族福祉省からGujarat(グジャラート州)Ahmedabad(アーメダバード市)Bapunagar(ブプナガール)地区でジカウイルス感染症患者3人が検査確認されたことが報告されました。

情報の詳細

グジャラート州アーメダバードにあるB.J.メディカル・カレッジ(BJMC)でのRT-PCR法検査により、通常検査での調査において、ジカウイルス感染症の確定患者が確認されました。さらに、この患者(下記、患者2)との(感染の)因果関係は、2017年1月4日に、プネ市にあるウイルス学・国立中央研究所(NIV)でのRT-PCR検査陽性および遺伝子配列の決定によって確認されました。また、新たに患者2人(患者1および患者3)が急性熱性疾患(AFI)および妊婦検診の調査を通じて確認されました。これらの患者は、時系列順に、以下のように報告されています。

  • 患者1:2016年(原文どおりに記載)2月10日から16日までの急性発熱性疾患(AFI)の調査の中で、血液サンプル93本が採取され、グジャラート州アーメダバードBJMCに集められました。アーメダバードBJMCからは、8日間の急性発熱症状(デング熱感染陰性)を示した男性(64歳)の検体1本がジカウイルスに陽性であることが判明しました。これは、グジャラート州アーメダバードのBJMCのAFI調査を通じて報告された初めてのジカウイルス陽性患者でした。
  • 患者2:34歳の女性が、2016年11月9日に、アーメダバードBJMCで赤ちゃんを出産しました。臨床経過は良好でした。入院中、彼女は、出産後に低熱を起こしました。妊娠中に発熱の既往はなく、過去3ヶ月の旅行歴も報告されてはいませんでしたが、患者から採取された検体をデング熱検査のために、BJMCのウイルス調査・診断研究室(VRDL)に送付したところ、その後にジカウイルスに陽性であることが判明しました。彼女は1週間後(2016年11月16日)に退院しました。検体は、RT-PCR法検査およびプネ市にあるNIVでの遺伝子配列の決定によりジカウイルスに陽性であることが再確認されました。
  • 患者3:2017年1月6日から12日にかけて妊婦検診(ANC)の調査のため、BJMCで血液サンプル合計111本が採取されました。妊娠37週目の妊娠女性(22歳)の検体1本がジカウイルス感染症に対して陽性でした。

公衆衛生上の取り組み

  • ジカウイルス感染症の発生を防止し、発生の広がりを抑制するために、ジカウイルス感染症に対する国のガイドラインと行動計画が州政府との間で共有されています。
  • 保健・家族福祉省の長官を中心に、バイオ技術部門の局長、保健調査研究部局局長との間で、省庁間の大臣級対策委員会が設立されました。感染症の出現および再興を監視するための技術グループである合同調査チームが、世界におけるジカウイルス感染症の発生状況を定期的に検討しています。
  • すべての国際空港と国際港には、旅行者に向けて、ジカウイルス感染症の情報が掲載されています。
  • 空港の組織、国立疾病管理センター、および国の媒介昆虫に対する感染症管理プログラムの職員が、合同で空港の保健担当者として、空港施設内での媒介昆虫による感染症管理の適切性を監視しています。
  • 強化された疾病監視プログラム(IDSP)で、地域における急性発熱性疾患の集団発生に対する追跡調査が行われています。
  • インド医療評議会 - Indian Council of Medical Research (ICMR)によって、プネ市の国立ウイルス研究施設に加えて、首都デリーにあるNCDC(国立疾病対策センター)、研究施設25か所でも、検査による診断が強化されています。また、昆虫学の研究施設3か所で、蚊のサンプルに対するジカウイルスの検査も実施されています。
  • インド医療評議会(ICMR)は、ジカウイルスの存在に対して、人での検体34,233本と蚊での試料12,647本を検査しました。これらの検査では、グジャラート州アーメダバード市ブプナガール地区から500本近くの蚊が採取されましたが、ジカウイルスについては陰性でした。
  • Rashtriya Bal Swasthya Karyakram(RBSK:子どもの健康のための調査機関)は、小頭症を55か所の定点報告施設で監視しています。これまでのところ、これらの施設から小頭症の事例数の増加や集団発生は報告されていません。
  • (住民向けの)リスク情報の配布資料が、ユニセフとの協議の下で、中央保健教育局によって作成の最終段階に入っています。

WHOのリスクアセスメント

この報告は、ジカウイルス感染症の最初の患者を記録し、インドにおけるウイルスの伝播の証拠を示すものとして重要です。これらの知見は、低レベルではあるもののジカウイルスの伝播を示唆しています。将来、新たに患者が発生する可能性があります。ウイルスの伝播の強さと地理的な拡散(条件)の強さの特徴をさらに詳しく把握し、ジカウイルス感染症に関連する合併症を監視するためには、調査活動への取り組み強化が維持されることが必要です。ジカウイルスは、東南アジア地域で流行していることが(既に)知られており、これらの知見によって、世界でのリスクアセスメントが変わることはありません。 WHOは、ジカウイルスの世界での疫学をより深く理解するために、加盟国には知見の報告を行うことを要請しています。

世界のさまざまな地域で媒介能力をもつシマカ属(Aedes)の蚊が広範囲の地理的分布していることを考えると、これらの蚊が生息する地域では、ジカウイルスがさらに広がることのリスクは、重要(な問題)です。WHOは、疫学的な発生状況を監視しながら、入手できる最新の情報に基づいてリスクアセスメントを行っています。

WHOからのアドバイス

(感染の)予防と管理は、発生源の除去(繁殖地の除去と環境の改良)で蚊(の数)を減らすことと、蚊と住民との接触機会を減らすことに依存しています。感染が集団で発生した時には、保健当局が殺虫剤の散布の実施を勧告することもあります。WHO Pesticide Evaluation Scheme(殺虫剤の効力評価を行う枠組み)によって推奨されている殺虫剤は、比較的大型の貯水容器でも殺虫剤として使用できます。

感染リスクの高い地域に旅行する人、特に、旅行する妊娠女性は、蚊刺しから保護するために基本的な予防対策を取る必要があります。予防対策には、虫除け剤の使用、明るい色の長袖シャツとズボンの着用、部屋には蚊が侵入するのを防ぐための網戸の設置など、があります。

WHOは、現在のところ、インドに対して如何なる渡航や貿易の制限も勧めてはいません。

出典

WHO.Situation Report, Emergencies, Disease Outbreak News. 26 May 2017
Zika virus infection- India

http://www.who.int/csr/don/26-may-2017-zika-ind/en/