2017年06月09日更新 ラッサ熱の発生状況- ナイジェリア

アフリカにおける感染症の発生状況の週報[第22週(5月27日-6月2日)]が公表されました。ここでは、今週、新しく報告に加わった記事のうちナイジェリアで発生しているラッサ熱について取り上げます。

ラッサ熱の発生状況

ナイジェリアでは、ラッサ熱が常在しており、過去3年間、毎年季節性に流行が報告されています。2016年12月初旬以降、ナイジェリアでは流行が継続しています。2017年5月19日までに、16州から患者が合計で490人(確定患者168人、感染の可能性の高い患者14人、疑い患者308人)が報告されています。このうち、確定患者と感染の可能性の高い患者からの死亡者73人(CFR 40%)を含めて、患者104人が死亡しました(死亡率、CFR:21%)。

第20週(2017年5月19日まで)の報告では、5州から、新たに疑い患者3人と確定患者5人が報告されました。現在までに6州で、最後に患者が確認されてから42日が経過し、これらの地域での流行の終息が宣言されました。

2017年3月に、確定患者がBorno(ボルノ)州で確認されました。ここは、(直面する)人道危機の中心地でもあります。この病気がLassa(ラッサ)村で発見された1969年以降、ボルノ州から報告されたのは、初めてのことになります。

公衆衛生上の取り組み

  • ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)は、支援組織(WHO、CDC、UMB;メリーランド州ボルチモア大学、AFENET;アフリカ疫学ネットワーク)と協力して、国内での活動を調整する「ラッサ熱への対策活動グループ」を招集しました。
  • 感染の発生している州では、活発な調査活動と接触者の追跡が行われています。しかし、各州の対応能力のレベルが異なるために、健康監視の有効性は様々です。
  • 患者は、指定された治療/隔離センターで治療が行われました。感染の発生した州には、リバビリンと個人用防護服(PPE)が配給されました。
  • 感染の予防と管理(IPC)に関する資料が、感染が発生したすべての州に配布されました。
  • 患者の確定診断は、2つの中央検査施設、ラゴス大学・研修病院とラッサ熱研究センターIrua専門病院(の結果)によって確定されました。

発生状況への認識

ラッサ熱は、西アフリカの風土病です。ナイジェリアでは、毎年、季節に伴う流行が12月から6月に発生します。しかし、近年は、(ラッサ熱が)常在しない州からも、患者が報告されています。2016年には、23州から疑い患者273人および死亡者149人(死亡率:55%)が報告されました。2017年には、ベニン、ブルキナファソ、シエラレオネ、トーゴからも流行が報告されています。ナイジェリアや近隣諸国では、これらの(流行)事例の頻度と規模が懸念材料となっています。また、人道的にも危機的な状況が続いており、この地域内で人々の移動が激しかったことで、(流行の発生は)さらに悪化しました。各州の間の対応能力の差も、対策への取り組みの有効性に影響を及ぼしています。

これらの流行は、西アフリカのすべての国で、ラッサ熱に対して、予防、(流行への)備え、地道な取り組みなどの強化が必要であることを強調しています。国境を越えた連携を強化し、今後の流行の防止と管理のためのロードマップ(工程表)を策定することで、一部での報告や治療の遅れに寄与し、高い死亡率を和らげることが重要です。

出典

AFRO/WHO. Outbreaks and emergencies updates, Programmes. 2 June 2017
Weekly Bulletin on outbreaks and other emergencies. P.9. Week 22: 27 May - 02 June 2017
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/255624/1/OEW22-270262017.pdf?ua=1[PDF形式:4,387KB]