2017年06月14日更新 ワクチン由来ポリオ2型の発生 -シリア、コンゴ民主共和国

2017年6月13日にWHOより公表された情報によりますと、シリアでワクチン由来ポリオウイルス2型による患者が発生したことが報告されました。また、同日、コンゴ民主共和国でもワクチン由来ポリオウイルス2型による患者が発生したことが報告されました。

シリアにおける発生状況

情報の詳細
シリアDeir Al Zour(デリゾール)県で、ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)の集団感染が確認されました。2017年3月5日および5月6日に(それぞれ)麻痺が発現した急性弛緩性麻痺(AFP)患者2人と、AFP患者との接触者で4月17日に採取された糞便検体の(合計)3本から、ワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)のウイルス株が分離されました。Al Mayadeen(マヤーディーン郡)は、2013年にシリアで発生した野生型ポリオウイルス1型(WPV1)の感染の中心地でもありました。2014年1月21日以降、シリアで野生型ポリオウイルス1型(WPV1)の患者は報告されていません。

公衆衛生上の取り組み

2017年5月に初めてワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)が確認されて以降、AFPへの警戒が、特に、マヤーディーン郡で強化されています。今年に入り2017年6月6日までに、この県からは、AFP患者が合計で58人も報告されています。ワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)に陽性と判定された患者2人に加えて、残りの検体で、さらに検査中又は検査搬送中であった11検体は、ポリオウイルスに対して陰性でした。
ワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)への集団感染の確認に続いて、国際的に合意された集団感染への対策のプロトコールに沿って、1価経口ポリオワクチン2型(mOPV2)による補充免疫活動(SIA)の計画など、集団感染への対策の計画が進められています。
デリゾール県では、政情が不安定で予防接種の確実な実施が行われてきませんでしたが、2016年の初めから一部では、ポリオやその他にも予防可能ないくつかの病気に対してもワクチンの予防接種キャンペーンが実施されてきました。最近でも、2価の経口ポリオワクチン(bOPV)を使用した2つのキャンペーンが、2017年3月と4月に実施されています。直近で、3価による経口ポリオワクチン(tOPV)のラウンドが実施されたのは2015年10月でした。2016年最初の4か月間にも3価経口ポリオワクチン(tOPV)のラウンドが実施されましたが、デリゾール県では目標人口の一部にしか達していませんでした。シリアでは、2008年に幼児への定期予防接種計画で不活化ポリオワクチン(IPV)の2回接種が導入されたことにも言及しておく必要があります。シリアでは、2016年5月1日から、予防接種を3価(tOPV)から2価(bOPV)の経口ポリオワクチンに切り替えました。
住民全体での免疫応答レベルの評価や新たなAFPを積極的に捜索することへの強化など、詳細なリスク分析が、現在、行われています。

コンゴ民主共和国における発生状況

情報の詳細
コンゴ民主共和国(DRC)で、ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)が確認されました。最初のワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)株は、Haut-Lomami州の2つの地区で(それぞれ)2月20日と3月8日に急性弛緩性麻痺(AFP)を発症した患者2人から分離されました。2つ目のワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)株は、Maniema州で4月18日と5月8日に急性弛緩性麻痺(AFP)を発症した患者2人と、この地域の健康な接触者1人から分離されました。

公衆衛生上の取り組み

WHOと世界ポリオ撲滅イニシアチブ(GPEI)の加盟国に支持され、保健省は、(住民の)免疫応答の状況と新たに広がりを起こすリスクなどのリスク・アセスメントを完了させました。
国際的に合意された集団感染への対策のプロトコールに沿って、1価経口ポリオワクチン2型(mOPV2)による補充免疫活動(SIA)の計画など、集団感染への対策の計画が進められています。
周辺諸国では、調査活動や予防接種が強化されています。

WHOのリスク・アセスメント

WHOは、(コンゴ民主共和国に対し)、国内でこのようなウイルス株がさらに拡がる高いリスク、国際的には中程度のリスクがあると評価しています。

ワクチン由来ポリオウイルス(2型)株の検出は、すべての型のポリオウイルスの伝播のリスクとそれによって生じる結果を最小限に抑えるために、すべての(行政)レベルで定期予防接種の接種率を高いレベルで維持することが重要であることを明確に示しています。また、このような出来事は、現実には、定期予防接種によって人々が高い免疫力を維持する妨げになる不安定な状態が続く地方や地域に、リスクが存在することを明確に示しています。ワクチン由来ポリオウイルス(2型)の伝播を、速やかに阻止するには、集団発生への強力な対策が必要となります。WHOは疫学的な発生状況と実施されている感染発生への対策を評価・検討していきます。

WHOからのアドバイス

(シリアでは)単価の経口ポリオワクチン2型および不活化ポリオワクチンの接種対策を周知するために、進行中のリスク・アセスメントをできるだけ早く完了させることが重要です。ワクチンの接種対策の地理的な規模は、リスク・アセスメントの結果に従うことになります。予防接種の期間中に、可能な限り高いワクチン接種率を達成することが重要です。この地域における困難の多い挑発的な治安の状況を考えると、対策の実施のために適切な戦略が特定され、実施される必要があります。AFPへの調査活動の強化は続けられる必要があります。

すべての国、特にポリオが発生している国や地域に頻繁に行き来する人やその人と接触のある人のいる国では、如何なる型のポリオウイルスも速やかに発見し、迅速に対策が取れるように、急性弛緩性麻痺(AFP)患者に対する調査活動を強化することが重要です。また、それぞれの国と地域も、新たにあらゆるウイルスを侵入させ発生させることへの影響を最小限に押さえるために、すべての行政レベルで等しく定期予防接種の高い接種率を維持する必要があります。
WHOの国際旅行および健康部局は、ポリオが発生する地域へ向かうすべての旅行者が確実にポリオに対するワクチン接種を行うことを勧告しています。感染の発生地域からの住民(と4週間以上の滞在者)は、国際渡航の12か月前から4週間前までに追加で1回のポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けている必要があります。
国際保健規則(2005)の下で召集される緊急委員会のアドバイスに従って、ポリオウイルスの国際的な広がりを制限する取り組みとして、国際的な懸念の公衆衛生緊急事態(PHEIC)は維持されています。ポリオウイルスの伝播が発生した国は、一時勧告の対象となります。PHEICに基づいて発行された一時勧告に準拠して、ポリオウイルスの感染が発生したすべての国では、国における公衆衛生上の緊急事態としてのポリオ発生を宣言し、すべての国際間の旅行者に予防接種を考慮する必要があります。ポリオウイルスを感染輸出している国は、何れの国も、すべての国際間の旅行者に出発する前には確実にワクチン接種をしていなければなりません。

出典