2017年06月22日更新 E型肝炎の発生- チャド

アフリカにおける感染症の発生状況の週報[第24週(6月10日-16日)]が公表されました。ここでは、今週、新しく報告に加わった記事のうち、隣国ニジェールに続き、チャドでも発生しているE型肝炎の状況について取り上げます。

E型肝炎の発生状況

チャド南東部Salamat(サラマト州)でのE型肝炎の感染発生は、初期の流行の勢いが衰えてきていましたが、再燃の徴候を示し始めました。第23週(2017年6月11日迄の週)には、疑い患者43人と死亡者1人(致死率2.3%)が報告されています。これは、2017年第16週に、1週間で報告された患者5人と比較すると、大幅な増加傾向を示しています。Am Timan(アム・ティマン)北部では、患者の(発生)数が極めて多く、総患者数の62%を占めており、続いてAboudeia(アブ・デイア)では33%を占めています。

2017年6月11日の時点で、2016年8月に感染が発生して以来、死亡者18人(致死率1.1%)を含めて、E型肝炎疑い患者が1,560人報告されています。報告された18人のうちの5人は妊娠女性でした。これまでのところ、サラマト州では9地区のうち3地区(アム・ティマン、アブ・デイア、Haraze(ハラゼ))で、感染が発生しています。感染の発生は、サラマト州内に留められています。全体として、98検体がE型肝炎ウイルスに陽性であることが確認されました(Yaoundeのパストゥール研究所で33検体、アムステルダムの国境なき医師団(MSF)オランダ研究所で65検体)。

記録を遡っての調査から、発端となる患者は2016年8月1日に確認されたことが判明しました。その後、2017年1月に流行が確認され、2月14日に保健省によって正式に宣言されました。

公衆衛生上の取り組み

  • 保健省は、地方の保健当局や支援組織(MSF、赤十字社、アム・ティマン市議会、ユニセフ、WHOなど)とともに、毎週の技術調整会議を主導しています。
  • MSFオランダは、アム・ティマン病院で患者管理の支援を続けています。
  • 飲料水の浄化処理や給水を行い、安全な飲料水の利用環境を向上させる取り組みを続けています。第22週には、約5,790,870リットルの安全な飲料水が配給されました。アム・ティマンでは、Islamic Relief World(IRW:イスラム教による世界救援組織)の支援を受けて、63の水源などで塩素処理が続けられています。8つの掘削井戸が掘られ、既に5か所では稼働しています。
  • 石鹸、漂白剤、(さまざまな濃度の)塩素溶液、高濃度の次亜塩素酸塩、クロロメーター(塩素濃度計)が配布されています。
  • 赤十字社、保健省、WHOの監督指導の下で、赤十字社のボランティア85人がアブ・デイアで積極的に患者の発見や水の塩素処理を実施しています。
  • 緊急用トイレが建設されました。
  • 市場では、健康衛生教育への取り組みが行われています。この取り組みには、青少年と女性グループが関わり、ラジオでの発信が利用されています。
  • 手洗いと衛生環境の整備(WASH)の活動専門家を含め、60日間の(衛生訓練を受けた)技術の専門家、地域の活動員、情報伝達の専門家など、(各種)技術の専門家が取り組みを支援するために派遣されています。
  • WHOは緊急事態の対策緊急資金(CFE)から10万米ドルを追加融資しました。
  • アム・ティマンでは、保健省とOXFAM(貧困と不正を根絶するために持続的に支援活動を行う組織)の共同により、知識、態度、実践(KAP)への研究が行われています。

発生状況への認識

サラマト州でのE型肝炎の発生は、患者の再興がみられ、拡大が続いています。流行の原因の1つは安全に飲める水が不足しているためです。地域の社会では、安全が確保されていない池からの水を使用することに頼っています。

この事態に対処するために、保健省は、WHOや支援組織からの支援を受けて、消毒処理水の利用環境を向上させることに取り組んでいます。しかし、塩素による消毒法は、いくつかの地域社会では抵抗にあっています。地域活動を通じて積極的に関わることで、塩素消毒を拒否された数々の水源周辺の問題が解決されました。全体での拒否率は、前週の6%から22週には5.7%に低下しました。

雨季が近づくと、E型肝炎やコレラへの感染リスクが高まります。雨季には、洪水によって潜在的に汚染水源となる「ワジ」(雨期のみ現れる季節性の河川)が作られます。

WHOは、現場で直面する(現状との)解離を早急に埋めるために、より多くの支援組織を求めています。 WASH活動への介入を強化し、健康の促進や地域活動への関与を向上させるために、技術および財政面での支援が必要です。また、アム・ティマンとアブ・デイアでの積極的な患者の発見と塩素処理活動を続け、ハラゼへの拡大を可能にするには、10万米ドルが必要です。

出典

AFRO/WHO. Outbreaks and emergencies updates, Programmes. 9 June 2017
Weekly Bulletin on outbreaks and other emergencies. P.7. Week 24: 10 - 16 June 2017
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/255720/1/OEW24-101662017.pdf?ua=1[PDF形式:4,536KB]