2017年07月20日更新 デング熱の流行-スリランカ

2017年7月19日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、8万人を超えるデング熱患者の発生を、スリランカ保健省が報告しました。

情報の詳細

2017年1月1日から7月7日にかけて、スリランカ保健省疫学部局は、死亡者215人を含めて、患者80,732人を報告しました。これは、2010年から2016年の同じ時期の平均患者数の4.3倍も多く、毎月の患者数は、それぞれの月で、この6か月間の平均+3SD(標準偏差の3倍)を超えています。過去7年間における定点観測施設からの調査によれば、4月下旬に始まった南西モンスーンに一致して、5月から7月にピークを迎えていると予想されています。

デング熱患者のうち、約43%が西部州から報告されました。最も患者報告数の多い感染の発生地域は、Colombo(首都コロンボ)地区(18,186人)、Gampaha(12,121人)、Kurunegala(4,889人)、Kalutara(4,589人)、Batticaloa(3,946人)、Ratnapura(3,898人)、Kandy(3,853人)です。予備的な検査の結果から、この流行で伝播しているウイルス型はデング・ウイルス2型(DENV-2)と分かりました。スリランカでは、4つのデング・ウイルス(DENV)すべての型が30年以上にわたり混じり合って伝播しており、DENV-2は2009年以来以降、稀に検出されていました。

現在のデング熱の流行発生は、大雨や洪水が起こる状況で発生しており、スリランカ25県のうち15県で感染が発生し、約600,000人が感染の影響を受けています。大量のモンスーンの雨、雨で濡れたゴミの除去への公共サービスの失敗、貯水池の存在やその他にも潜在する繁殖地などが、都市部や郊外で報告される患者数の多い原因となっています。

公衆衛生上の取り組み

WHOは、スリランカ保健省が効率的かつ包括的な医療保健対策を確実に実施していくことを支援しています。

  • 医療施設のベッド数を超えた(患者数の)増加に対して、軍による支援が保健省から要請されています。首都コロンボの北38キロ離れたところで、病院に3つの臨時病棟が完成しました。
  • 保健省は、防衛軍の活動による支持も受けながら、媒介する蚊を駆除する活動を含めた緊急対策を開始しました。軍隊、警察、民間防衛部隊が、医療関係スタッフとともに、感染リスクの高い地域で1軒毎に個別訪問を実施するために動員されています。また、彼らは、ゴミの処分、媒介する蚊の繁殖地の除去、および健康教育に対して活動する地域活動員にも参与しています。
  • 東南アジア地域事務所(SEARO)は、この対策を主導する活動部隊を編成しました。
  • WHO/SEAROは、WHO共同研究センターから、疫学者、昆虫学者およびデング熱患者の治療の専門家2人を、タイ王立小児病院 (Queen Sirikit National Institute of Child Health;QSNICH,)とタイ公衆衛生省(MoPH)でデング熱・デング出血熱の患者を治療するために、手配しました。医療施設で患者により良い治療を行う支援に、トリアージ・プロトコール(優先順位を決める流れ図)が2017年6月に更新されました。
  • WHOスリランカ事務所は、媒介する蚊の駆除への活動を支援するために、50台の霧散布機を購入しました。
  • 保健省とWHOは、今後、数週間以内にデング熱の流行発生を制御するために、対策強化に向けた戦略的かつ実用的な計画への準備に、共同で取り組んでいます。

WHOによるリスクアセスメント

デング熱は、4つのデング熱のウイルス型(DENV-1、DENV-2、DENV-3、およびDENV-4)によって引き起こされるウイルス感染症で、蚊によって媒介されます。1つの型に感染すると、同じ型には長期間の(持続)免疫が得られますが、他のウイルス型の免疫は得られません。二度目の感染は、重症デング熱やデング・ショック症候群のリスクをより高くします。

ネッタイシマカ(Aedes aegypti)とヒトスジシマカ(Aedes albopictus)は、都市および郊外の環境に広い適応力をもつ媒介蚊です。デング熱は、スリランカに常在しており、毎年発生しています。通常は、降雨の直後が蚊の繁殖に最適となります。DENV-2は2009年以降、わずかな数しか検出されませんでしたが、報告されているように、現在はウイルス型を検査された検体の50%以上が(この型で)報告されています。

現在のデング熱の流行は、スリランカの公衆衛生上に影響を及ぼす可能性が高くなっています。

WHOからのアドバイス

WHOは、デング熱を含めた媒介昆虫である蚊を駆除するために、集約的な媒介昆虫の管理(IVM)として知られる戦略アプローチを促進しています。

人が居住する地に媒介蚊の繁殖地が近接することは、デング・ウイルスへの感染の重大なリスク因子となります。

(感染の)予防と制御は、感染源の削減(繁殖地の除去と改修)や成虫の蚊からの防除対策で、人と媒介蚊との接触機会を減らすことにより、蚊の繁殖を減少させることに依存します。有効性のある感染制御には、両方の制御手段を同時に実施する必要があります。

これは、家庭内や家庭周辺で人工的な水の溜まり場(貯水用のセメント・タンク、(貯水)ドラム、中古タイヤ、空のボトル、ココナッツシェルなど)を減らすことで、そして、防虫網戸、ドアや窓の戸締まり、長袖の衣類、虫除け剤など蚊への障壁を使用することで、また、虫除け剤、家庭用の殺虫剤エアロゾル製品、蚊取り線香などの使用で、達成することができます。また、緊急対策時には、殺虫剤の空間散布を展開することもできます。シマカ属(Aedes)の蚊(感染の主要な媒介蚊)からの防御として、殺虫剤での処理の有無にかかわらず、(特に幼い子供、病人や高齢者は)蚊帳の中で眠ることを勧めます。

WHOは、現在、利用可能な情報に基づく判断として、如何なる渡航や貿易の制限をスリランカに対して採ることを勧めてはいません。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 19 July 2017
Dengue fever - Sri Lanka
http://www.who.int/csr/don/19-july-2017-dengue-sri-lanka/en/