2017年09月22日更新 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の発生報告(更新18)

2017年9月21日にWHOから公表された情報によりますと、8月23日にアラブ首長国連邦(UAE)の国際保健規則国家担当者から中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)患者1人が報告されました。

患者の詳細情報

患者は、UAEのAl Ain(アル・アイン)市に住む78歳の男性です。

患者に関する情報は、下記のリンク先から閲覧することができます。
MERS-CoV case reported on 23 August 2017[XLS形式:48KB]

WHOは、世界中から、少なくとも722人の関連する死亡報告を含めて、検査で確定された2,081人のMERS-CoV感染の患者報告を受けています。

公衆衛生上の取り組み

保健省によって、医療従事者および家族内接触者が確認され、健康監視が行われています。症状のある者および感染リスクの高い家族内接触者並びに医療従事者には、検査が行われています。

WHOによるリスクアセスメント

MERS-CoVは、人に致死率が高い重症感染症を引き起こします。ウイルスを保有するヒトコブラクダとの濃厚な直接・間接の接触が、人での感染の原因となります。MERS-CoVは人と人との間でも感染を起こすことが示されています。(しかし)これまでのところ、人から人への持続性のない感染が見られましたが、主に医療の現場での発生でした。

新たな患者の報告で、全体的なリスク評価が変わることはありません。WHOは、中東から新たなMERS-CoV感染患者が報告されることや、動物やその家畜生産物(例えば、ヒトコブラクダとの接触後)もしくは感染源となる人(例えば、医療施設内で)と接触することで感染した可能性のある人々が他の国に感染輸入されることはあり得ると考えています。WHOは、疫学的な状況の監視を続け、入手できる最新の情報に基づいてリスク評価をおこなっています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを要請しています。診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐためには、感染予防と制御の対策が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。

このことから、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS-CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事態に対して入国時に特別なスクリーニング検査を行うことを助言してはおらず、これまでのところ、如何なる渡航や貿易に対しても(これを)適応させることを勧めてはいません。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 21 September 2017
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV) - United Arab Emirates
http://www.who.int/csr/don/21-september-2017-mers-uae/en