2017年09月28日更新 世界的なMERS-CoVの脅威に対する新たな取り組みへの合意

2017年9月27日付けで公表されたWHOの情報によりますと、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の世界的な脅威に対して、各国が新たな取り組みに踏み出すことに合意したことが発表されました。

記事の詳細

中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が生み出している世界的な公衆衛生上の脅威からの対策を加速させるため、感染が発生した国およびそのリスクのある国の保健省と農業省からの代表者、専門家らは、重要かつ新たな取り組みを行うことに合意しました。このウイルスは、ヒトコブラクダの間で、症状を表すこともなく感染伝播しながら、人を死に至らせることができます。

今週、ジュネーヴで、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機構(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)らが33か国から130人を超える専門家、組織、研究機関を集め会議が開かれ、このウイルスについて知っておくべきこと、必要性から優先すべき研究を確認すること、動物と人の分野を超えて共同で研究活動を発展させるべきことを共通認識し、重要な(認識の)解離に取り組むための計画に合意しました。

「MERSは、単にひとつの地域だけの脅威ではありません。患者のほとんどは中東地域から報告されていますが、2015年に韓国で発生した流行は、MERSが世界規模に達し、公衆衛生上も経済的にも重大な結果をもたらす能力をもつことを示しました。」「私たちは、MERSの流行発生を発見し対策を取る上での対処能力の課題に向き合うべき段階に、そして共同での調査・研究を通して、このウイルスに関する我々の理解を向上させるべき段階に来ています。」と、WHO健康緊急対策局(Health Emergencies programme)のMERS技術主任Maria Van Kerkhove博士は述べています。

このウイルスがサウジアラビアで最初に確認された2012年以降、WHOに27か国から報告された722人の死亡者(致死率35%)を含む2,081人のMERS-CoV感染者が検査で確認されました。研究と調査は進展していますが、このウイルスへの理解には大きな(認識の)解離があります。それは、自然宿主であるヒトコブラクダの間でどのように感染伝播しているのか、どのように人の中にウイルスが入り込むのか、などです。

「MERS-CoVは、公衆衛生上に重大な衝撃を与える感染症を引き起こします。疫学的な理解を深めるために、そして、人の中での感染制御を向上させるために、このウイルスには動物の中での感染源についての研究をさらに進めることが必要とされます。OIE加盟各国には、動物の中でのMERS-CoVが引き起こす如何なる現象も報告することが求められます。この重要度の高い情報は動物と人の両分野からの共同での感染対策を向上させることに貢献するはずです。」と、OIE計画担当者(Chargée de missionGounalan Pavade博士は述べています。

MERS患者の80%以上はサウジアラビアから報告されています。2015年以降、たくさんの患者が医療施設で感染していますが、MERS患者のデータ収集が向上したことに伴い、直近に報告されている患者の多くの割合は直接・間接に感染ラクダと接触したことによると考えられています。頻度が高まる国際旅行は、帰国前に気付かずに感染している人によって世界のあらゆる地域に、散発的に感染を輸出することを許してきました。

「人と動物の接する領域にあるこの病気への取り組みでは、健全な人々と健康な動物を共通の目標とするために、分野や学問領域を超えて共に活動することが、我々に共通する課題です。」「そうすることで、私たちは、動物を起源とする健康への脅威に対する方法、One healthアプローチ(動物、自然の調和など、さまざまな分野からの学際的かつ包括的に行うアプローチ)の重要性を認識することができます。」と、FAO動物健康(Senior Animal Health)部局Ahmed El Idrissi博士は述べています。

人と人の間での感染伝播は、(まだ)限定的に留まっています。しかし、医療施設が関係する感染の発生は、中東、韓国など、いくつもの国で起きています。この病気が感染への予防と対策は病院や診療所で拡がる可能性を抑えるために、(また)医療従事者、見舞いの人々、他の病気の患者などを護るために、重要となります。(この病気には)現在、利用可能なワクチンも特別な治療法もありません。治療は、患者の病態に基づいて、支持的に行われます。

MERS-CoVは、予防、早期発見、対策に関する診断法、予防法、治療薬の研究、研究や開発の計画工程表を作成しているWHO研究開発計画の中に含まれる脅威となる病原体のひとつです。これらの高い脅威をもたらす病原体には、優先すべき11種が連ねられています。

WHO、FAO、OIEが主導するMERSの優先研究と取り組みは、これら3つ機関によって組織された過去5年間の一連の地域的および世界会議の中で構築されています。特に、動物と人に対するこのウイルスの動向について、いくつもの未解明の重要項目に取り組むにあたり、際立った進歩を遂げてきましたが、MERS-CoVに関しては、いくつもの基本的な(解明すべき課題との)解離が残っています。世界各地では、この新興感染症が脅威の中にとどまっています。

出典

WHO.Emergencies. 27September2017
Countries agree next steps to combat global health threat MERS-CoV
http://www.who.int/emergencies/mers-cov/accelerating-response/en/