2017年10月16日更新 ペストの発生報告 - セーシェル諸島

2017年10月15日に公表されたWHOからの情報によりますと、マダガスカルでのペスト発生に関連して、セーシェル諸島でもペスト疑いの患者が報告されました。

発生の詳細

マダガスカルでは、2017年8月以降、大都市やこれまではペストが常在していなかった地域で、大規模なペストの流行が発生しています。この流行は、隣接するインド洋の島々にも中等度のリスクの拡大をもたらしています。(しかし)このリスクは、肺ペストの潜伏期間(細菌曝露から発症までの時間)が短いことや、空港やその他・港湾で(行われている)出国時スクリーニング対策の体制整備から、和らぎつつあります。ペストに関する最新の情報に関する週報を以下のサイトで見ることができます。

http://www.afro.who.int/health-topics/plague/plague-outbreak-situation-reports

2017年10月10日には、セーシェル諸島の保健省から、肺ペストへの感染の可能性が高い患者がWHOに報告されました。この可能性の高い患者は、マダガスカルを訪れていた34歳の男性で、10月6日にセーシェル諸島に戻ってきました。彼は、10月9日に発症し、地元の医療センターを受診しました。診察時の所見と申告されたマダガスカルへの最近の渡航歴から、肺ペストへの感染が疑われ、彼は直ぐに隔離と治療のための病院が手配されました。

国内で10月11日に行われた喀痰検体での迅速診断検査で、弱い陽性反応がでました。その後、彼はWHOのペスト中央検査施設での確認検査が終わる前に治療されたため、感染の可能性の高い患者とされました。検体は、確認検査のために、パリ・パスツール研究所に送られました。患者は、抗生物質による治療が完了するまで、病院での隔離が続けられています。現在、彼に症状はなく、安定した状態です。

2017年10月9日から11日にかけて、接触者8人に軽度の症状が現れ、隔離されました。この他、この可能性の高かった患者とは疫学上は無関係に、2人の患者で(感染が)疑われ、隔離の上で、治療が行われています。

感染の可能性の高い患者、接触者、2人の疑い患者からは、合計10検体が検査のために採取されました。そして、パリ・パスツール研究所に送られました。

10月13日に、この可能性の高い患者との320人を超える接触者の健康監視が終わりました。ここには、搭乗機の乗客と乗務員41人、濃厚に接触した家族12人、この患者が訪れた医療センターのスタッフと患者18人が含まれます。(対象者には)全員に、ペストの発症を予防するために抗生物質の予防投与薬が配られました。

また、接触者追跡によって確認された接触者1人と接触の可能性のあった子ども577人と教師53人にも、予防投与薬による対策として抗生物質が配られました。このように、徹底して、接触者の追跡が行われています。

現在、濃厚接触者11人と、接触はないものの、最近マダガスカルからやって来た外国人1人だけが、予防対策のために入院しています。呼吸困難の症状は示していなくとも、治療のために病院に置かれる予定です。

公衆衛生上の対策

10月10日に、緊急対策委員会が立ち上げられ、続いて、調査活動、接触者の追跡、患者の管理、隔離、(必要物品の)配給などを調整するために、毎日の会議が開かれています。

10月12日は、直接の電話回線が設置されました。

政府は、この委員会の関与、一時的な隔離病棟の設置(一方で、既存の病棟も拡大利用されている)、必要な物品の調達、接触者の追跡、翌週も延長して接触者を観察するための訓練など、支援のために資金を割り当てています。

マダガスカルからの新たな感染輸入の可能性を抑えるために、10月8日から、マダガスカルと往来するセーシェルの航空会社の運行が中止されています。

WHOは、現在、入手できている情報に基づく限りでは、渡航と貿易への制限を勧めてはいません。

2017年10月10日からは、マダガスカルの保健省が、WHOからの支援を得て、(感染の)国際的な拡大を防ぐために首都アンタナナリボで国際空港での出国時スクリーニング検査を実施しています。さらに、WHOと支援組織からの支援を得て、国際的な(感染)拡大を避けるために入国地点での対策の強化も計画しています。

WHOは、現在の状況への対応として、この国の(WHO)事務所と公衆衛生の省庁を支援するために、疫学調査専門家3人とリスク情報の担当者1人を派遣しました。

WHOのリスク・アセスメント

ペストは、小さな哺乳動物やそのノミに日常的に見られる人獣共通の細菌ペスト菌(Yersinia pestis)によって引き起こされる感染症です。人には、ノミに刺されたり、直接、感染物質や動物に触れたり、(細菌を)吸い込んだりすることで、感染します。

ペストには、感染経路の違いから、腺ペストペスト敗血症肺ペストの3つの型があります。

肺ペストは、ペストの中の最悪の病態です。空気中の飛沫に触れることで、人から人へと深刻な流行を引き起こす可能性があります。潜伏期間が24時間ほどです。通常、肺炎型は進行した腺ペストが肺に広がることで起こります。しかし、二次性の肺ペスト患者は、エアロゾル(微粒子)化された感染性の飛沫を形成し、飛沫を介して他の人にペストを伝播することがあります。肺ペストは未治療のままでは死に至りますが、ペストは治療可能な病気です。

(これまでに)ペストがセーシェル諸島で報告されたことはなく、現段階では確定された患者はいません。上記で報告された患者は、パリ・パスツール研究所で実施される検査結果に基づいて最終的に分類されるまでは、感染の可能性が高い患者として扱われます。

セーシェル諸島は、調査活動の強化、疑い患者の隔離と治療、接触者の追跡、接触の可能性のある人への予防投与薬による治療などの予防への対策を確立させています。

セーシェル諸島で(もし患者が確認されたとしても)さらに(ペストが)拡大するリスクは低いとみられています。地域全体および世界規模でもリスクのレベルは極めて低いと考えられています。

WHOからのアドバイス

現段階では、国際旅行者がセーシェル諸島でペストと接触するリスクはかなり低い状況です。WHOは、現在、入手できている情報に基づく限りでは、セーシェル諸島及びマダガスカルへの渡航と貿易への制限を勧めてはいません。

2017年10月3日に、WHOはマダガスカルで発生したペストの流行に関連して、海外旅行者に対するアドバイスを掲載しました。これはセーシェル諸島への旅行者にとっても必要です。

Plague - MadagascarInformation for international travelers

10月11日には、保健省が、ウェブサイト上にプレス・リリースとして、いくつもの肺炎対策を発表しました。これらの対策は多くが国際交通の大きな障害となるため、10月13日に、保健省は、国際保健規則第43.3条(IHR、2005年)で要求される事項として、これらの対策の科学的根拠と公衆衛生上の合理性についてWHOに提出することを通知しました。

出典

WHO.Disease outbreak news, Global Alert and Response(GAR). 15 October 2017
Plague- Suspected Plague (Ex- Madagascar)
http://www.who.int/csr/don/15-october-2017-plague-seychelles/en/

◆外務省海外安全ホームページ:マダガスカルにおけるペストの流行
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C207.html