2017年10月23日更新 ペストの発生報告 - マダガスカル(更新5)

2017年10月20日づけでWHOアフリカ地域事務局よりマダガスカルで発生しているペストについての週報が公表されています。10月19日までに報告された患者は1,297人に上りました。

ペストの発生状況

マダガスカルでは、2017年8月以降、主要都市やペストの非常在地域での大規模な流行が発生しています。10月15日までに、疑い患者、感染の可能性の高い患者、確定患者が合計で1,297人報告されており、死亡者も102人となっています(致死率7.9%)。臨床経過から、このうちの846人(65.2%に)は肺ペストに、270人(20.8%)は腺ペストに、1人はペスト敗血症に分類されました。(残る)180人は分類が終わっておらず、現在、さらに患者の分類が行われているところです。肺ペスト患者846人のうち、91人(10.8%)が確定診断され、407人(48.1%)が感染の可能性が高い患者とされました。
マダガスカル・パスツール研究所では、8月1日から10月15日までに、総計793検体の検査が行われました。このうち126検体(15.9%)は、PCR検査もしくは細菌培養検査の何れかでペストと確定診断されました。242検体(30.5%)は、迅速診断検査で陽性と判明したことにより感染の可能性が高いとされました。また、420人(53.6%)は、依然として疑い患者とされ、現在、追加検査の結果を待っているところです。ペスト菌11株が分離されており、国のペスト感染制御プログラムで勧められている抗菌薬はそのすべての株に感受性がありました。
国内全体での肺ペストの発生地域は、22地域圏のうち14地域圏(63.6%)、114県のうちの33県に及んでいます。(また)首府のあるAntananarivo Renivohitra地区での肺ペスト患者の報告が最も多く、全患者数の63.6%に上っています。
2017年10月19日には、接触者2,470人のうち1,621人の健康監視ができており、予防的に抗菌薬が投与されました。合計372人の接触者は、7日間に症状を発症することなく健康監視期間を完了しました。

ペストは、マダガスカルの高原台地には常在している病気です。(今回の)流行が最初に発生したAnkazobeは、この地域内にあります。通常、9月から4月には流行シーズンがあり、腺ペストは、毎年、発生しています。しかし、今年のペストの流行期は、早くに始まっており、現在の流行は肺ペストが主体で、(これまでペストが)常在していなかった地域や首都Antananarivo(アンタナナリボ)や港湾都市Toamasina(トゥアマシナ)のような大都市中心部でも、感染が発生しています。

現状でのリスク評価

今回の流行は、疫学的にはひとつの大規模な集団感染と関連して始まっていますが、その後は、疫学的に明らかな関連性をもたない肺ペスト患者がマダガスカル国内各地域から確認されています。これには、人口密度の高いアンタナナリボおよびトゥアマシナの市街地も含まれています。さらなる流行拡大へのリスクの増加とペストの病態の重篤性から、マダガスカル国内でのリスク・レベルは非常に高いとみられています。アフリカ周辺地域への拡大のリスクは、近隣のインド洋諸島、アフリカ南部および東部の各国との飛行機や船での往来が頻繁にあることや、旅行者にも数人の患者が発生していることから、中等度の状態にあります。(しかし)このペスト拡大のリスクも、肺ペストの潜伏期間が短いことや、マダガスカル出国時にスクリーニングの対策が行われていること、近隣のインド洋諸島およびその他アフリカ南部および東部の各国で感染対策の規模を拡大させ、計画的に準備に取りかかっていることから、低減されています。世界的なリスクについては低いと考えられています。
(但し)このリスク評価は、状況の進展具合および入手できた情報に基づいて、WHOによって再評価を受けることもあります。

出典

AFRO/WHO. Plague outbreak situation reports. 20 October 2017
Plague Outbreak-Madagascar. External Situation Report 05
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/259281/1/Ex-PlagueMadagascar20102017.pdf[PDF形式:1,883KB]

参考

外務省 海外安全ホームページ:マダガスカルにおけるペストの流行(その2)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C224.html