2017年11月01日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新18)

2017年10月27日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

2016年第1週(原文どおりに記載)から2017年第43週までに、ブラジル、コロンビア、エクアドル、フランス領ギアナ、ペルー、ボリビア、スリナムで、黄熱の疑い患者や確定患者が報告されました。
汎米保健機構(PAHO)によって、前回公表された2017年8月2日の黄熱の疫学報告以降には、ブラジルフランス領ギアナペルーから、新たに黄熱患者が報告されました。

ブラジルでは、2017年7月以降に、疑い患者37人、確定患者(死亡患者)1人、検査中の患者3人、(報告されたものの)診断が棄却された患者33人が報告されました。確定患者は、第40週に報告されました。この患者は76歳の男性で、Itatiba(イタチバ)とJundiaí(ジュンディアイ)に挟まれた地域に住んでいました。
人以外の霊長目での集団感染について、サンパウロ州では、2017年10月上旬に1,260件が報告されました。第37週以降に報告が増えてきています。人以外の霊長目での黄熱が258件で確認されました。このうち、248件(96%)はCampinas(カンピーナス、サンパウロ州の都市)地域から報告されました。
サンパウロ州では、新たな地域への黄熱ウイルスの拡大がありました。Campo Limpo Paulista(カンポ・リンポ・パウリスタ)行政地区では第38週に、Atibaia(アチバイア)では第39週に、Jarinu(ジャリヌ)では第41週に、サンパウロ市市街地では第41週に、初めて人以外の霊長目での感染が確認されました。これらの最近の知見からの結果を受けて、サンパウロ州政府と各行政府の担当部局は、動物での集団感染が発生した地域周辺に住む住民へのワクチン接種を開始しました。
サンパウロ州での動物の集団感染は、一部に森林型ウイルスの感染経路が存在する森林の周辺の境界地域で発生しています。人での感染は、確認されていません。

フランス領ギアナでは、2017年第34週に、フランスの国際保健規則担当者から黄熱確定患者の報告がありました。患者は43歳のブラジル人女性で、ワクチンの接種状況については分かっていません。患者は8月7日に入院しましたが、2日後にCayenneの病院で劇症肝炎のために死亡しました。彼女は、国の北中部にあるSt. Elie近郊の金鉱山を訪れていたようです。患者の旅行行程を確認するために、現在も、調査が続けられています。この患者は、1998年以降、この領土で診断が確定した初めての患者となりました。

ペルーでは、2017年第1週から第41週までに、黄熱の確定患者と感染の可能性の高い患者が合計で16人報告されました。このうち、3人が死亡しました。2016年と同様に、ほとんどの患者は、Junín(フニン県)で発生しています。

PAHOからの勧告事項

PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを要請しています。

黄熱ワクチンの接種について
黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80~100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。
入手できるワクチンの量には限りがあり、合理的な使用を念頭に置く必要があるため、PAHO/WHOは、次のことを繰り返し各国の保健当局に勧告しています。
1)リスクのある地域では、行政地区のレベルでこの地域に暮らす住民のワクチン接種率が少なくとも95%を維持していることの評価を実施すること
2)現在、感染の流行が発生していない国では、予防接種キャンペーンを行うべきではありません。感染の可能性の高い人々にワクチン使用の優先順位が与えられるべきであり、再ワクチン接種を避けるべきです。
3)感染が常在する地域へ向かう全ての旅行者は、少なくとも旅行の10日前に、確実に予防接種を行うべきです。
4)ワクチンが利用できる状況に応じて、加盟国は感染の流行に対処するために小規模の備蓄をして置かなければなりません。
5)十分にワクチンが入手できる状況になるまでは、感染が常在していない地域での小児に対する定期予防接種は延期してください。(このとき)入手できる状況になったら、ワクチン接種スケジュールを完了するために、追加の(接種)キャンペーンを実施してください。

注意事項
ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に罹患したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。
・予防接種を必要とするCD4陽性細胞数≧200 cells / mm3で、症状のないHIV感染者には、ワクチン接種の求めに応じることができます。
・妊娠女性は、緊急性のある状況で予防接種を受けるべきであり、保健当局の勧告に従う必要があります。
・乳児にワクチンのウイルスを伝播させるリスク(黄熱は生ワクチンである)は、母乳育児中の女性での予防接種の効果よりも低いため、感染が常在する地域で暮らす授乳中の女性にも予防接種は推奨されます。
・黄熱が流行している地域への旅行を予定する妊娠中または授乳中の女性に対しては、旅行を延期するか、避けるかを検討し、それができないときには予防接種が推奨されます。彼女らには、予防接種の潜在的なリスクとベネフィットについてのアドバイスを受け、情報に基づいて意志決定される必要があります。母乳育児によるメリット(受益)は、代替の栄養食品によるものよりも優れています。

次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
・免疫不全の病態にある人(胸腺疾患患者、症候性のHIV感染者、悪性新生物の治療中の患者、免疫抑制治療中の患者、免疫を調節治療している患者、最近の臓器移植した患者、現在または最近の放射線療法を受けた患者など)。
・鶏卵や鶏卵から作る製品に対し重度のアレルギーのある人

出典

PAHO.Epidemiological Update. 27 October 2017
Yellow Fever
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=42712&lang=en