2017年11月06日更新 ペストの発生報告 - マダガスカル(更新6)
2017年11月2日づけでWHOよりマダガスカルで発生しているペストについて最新の情報が公表されました。10月30日までに報告された患者は1,801人に上りました。
ペストの発生状況
マダガスカルでは、2017年8月以降、主要都市やペストの非常在地域での大規模な流行が発生しています。
2017年10月30日までに、疑い患者、感染の可能性の高い患者、確定患者が合計で1,801人報告されており、死亡者も127人となったことが、マダガスカル保健省より報告されました。このうちの1,111人(62%)が肺ペストに分類されました。ここには、確定患者257人(23%)、感染の可能性の高い患者374人(34%)、疑い患者480人(43%)が含まれます。また、腺ペストが261人(15%)、ペスト敗血症が1人報告されました。(残る)428人は分類作業が行われているところです。10月30日までに、マダガスカル114県のうちの51県で感染が発生しました。感染の発生が始まってから、医療従事者が71名、ペストに合致する症状を発症しました。死亡者はでていません。
パスツール・マダガスカル研究所(Institut Pasteur)でペストの確認検査が行われています。(これまでに)ペスト菌(Yersinia pestis)23株が分離培養されました。すべてのペスト菌で感染制御に向けた国の計画で推奨されている抗生物質に感受性がありました。
2017年10月第2週以降は、新たな患者数が減少してきています。また、ペストが疑われたために入院する患者数も減少してきています。調査活動が引き続き強化されていることから、累積患者数が増え続けていますが、一部の患者は最近の感染ではありません。
マダガスカルでは、ペストの患者数が9月から4月にかけて最も多くなります。そのため、2018年4月の終わりまでは、感染制御への対策を続けることが必要となります。
ペストへの感染が疑われた患者との接触機会が特定された者の83%(6,492人)が、既に7日間の抗生物質の予防投与を含む健康監視期間を終了しました。2017年10月30日現在、現地調査チームによって接触者972人のうちの95%が監視下に置かれており、(彼らには)抗生物質の予防投与が行われています。
公衆衛生上の取り組み
マダガスカル保健省は、WHOや他の関係機関、並びに支援組織の支援を得て、公衆衛生対策を主導しています。
マダガスカル公衆衛生省は、Antananarivo(首都アンタナナリボ)とToamasina(トアマシナ)で危機管理チームを立ち上げており、すべての患者と接触者に治療薬および予防投与の抗生物質を無償で提供しています。
公衆衛生上の対策としては、次のことが行われています。
・新しい患者についての調査
・すべての肺炎患者の隔離と治療
・患者の発見の強化
・積極的な接触者の発見・追跡・監視、および予防投与薬としての抗生物質の提供
・感染の発生したすべての地区における疫学調査活動の強化
・げっ歯類と媒介昆虫(ノミ)の感染制御を含めた駆除活動
・腺ペストや肺ペストの予防に対する国民への意識の向上
・医療従事者の間での意識の向上と、患者の発見、感染の制御対策、感染からの予防(の対処能力)を向上させるための情報の提供
・埋葬儀式の際の感染対策についての情報の提供
アンタナナリボ国際空港では、出国時スクリーニング検査の強化対策が実施されています。この対策には、次のことが含まれます。
・空港で特別(に準備された)出発フォームを記入すること(リスクのある乗客を特定するため)
・出国する乗客の体温のスクリーニング検査、さらに、発熱する乗客へは空港での医師の診察への紹介
・肺ペストに症状が合致する乗客の空港での速やかな隔離、迅速診断検査の実施、並びに緊急対策プロトコールに基づいた通知
(何らかの)症状のある乗客は旅行が許可されません。WHO GOARNチーム(米国疾病対策予防センター(CDC)、Institut de veille sanitaire(全国疾病モニタリング機構)/Santépublique France(フランス国立/公衆衛生局)[InVS / SPF])により編成)により、空港での技術的な支援が提供されています。
アフリカ地域の9つの国および領土(コモロ、エチオピア、ケニア、モーリシャス、モザンビーク、レユニオン島(フランス海外県)、セーシェル諸島、南アフリカ共和国、タンザニア)は、マダガスカルと貿易や旅行者との結びつきが強いため、ペストに対する備えと管理体制の準備を行うための重要国とされています。これらの国々では、ペストに対する全国民への意識の向上、特に、入国地点での疾病調査の強化や(感染への)装備や必要物品の事前準備などを実施しています。
WHOのリスク・アセスメント
新たなペスト患者の報告の減少傾向とペスト患者の入院事例の減少は勇気づけられるところですが、WHOは、通常の流行期が終わる2018年4月までは、マダガスカルから報告されるペスト患者がさらに増えると予想しています。積極的な患者の発見と治療、包括的な接触者の確認・経過観察・予防治療薬の投与、げっ歯類とノミの駆除、安全かつ尊厳を維持した埋葬の実施など、対策を継続して行うことが、感染の発生中、流行期間中には求められます。これにより、腺ペストの感染、肺ペストの人から人への伝播を最小限に留めることが重要です。
入手できている情報及びこれまでに実施されてきた対応策に基づく限り、WHOは、依然として全国規模でのペストの発生がさらに拡大する可能性が高い状態にあるとみています。国際的に拡大するリスクについては、肺ペストの潜伏期間が短いこと、出国時検査が実施されており、マダガスカルへの旅行者にも情報が提供されていること、隣接するインド洋の島々やアフリカ南部および東部の国々での備えと対応の準備活動を増強していることなどから、低下してきています。世界全体でのリスクは低いと考えられています。WHOは、流行状況の展開と対策活動からの情報に基づいて、リスク・アセスメントを再評価しています。
マダガスカルとこの地域で警戒が必要な国々に、予防と管理の対策、治療の選択肢などの助言が行われています。
WHOからの旅行者へのアドバイス
これまでに入手できた情報に基づけば、国際的にペストが伝播するリスクは極めて低いとみられます。WHOは、入手できた情報に基づく限り、マダガスカルへの旅行や貿易に関するいかなる制限にも行うべきではないと助言しています。
マダガスカルに入国する旅行者には、現在のペストの発生状況と必要な防御対策について知らされている必要があります。旅行者は、ノミの咬傷から身を守り、死んだ動物や感染した組織および物体との接触を避け、肺ペストの患者との濃厚接触を避けることが必要です。発熱、悪寒、痛みを伴うリンパ節の炎症、咳や血痰を伴う息切れなどが急に症状として現れた場合、旅行者はすぐに医療機関と連絡を取る必要があります。旅行者は、予防の場合でも、自己投薬は避けるべきです。予防的治療は、患者との濃厚な接触者や、ノミの咬傷や感染した動物の体液・組織と直接に触れた場合など、他に高い(感染)リスクのある接触者にのみ推奨されます。マダガスカルへの旅行から帰国の後には、旅行者はこれらの症状に注意を払うことが必要です。症状が現れた際に、旅行者は医療機関を受診し、マダガスカルへの旅行歴があることを医師に申告する必要があります。
出典
WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 2November2017
Plague - Madagascar
http://www.who.int/csr/don/02-november-2017-plague-madagascar/en/
参考
◆外務省海外安全ホームページ:マダガスカルにおけるペストの流行(その3)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C228.html