2017年11月08日更新 マールブルグ病の発生 - ウガンダ&ケニア(更新2)

2017年11月7日に公表されたWHOからの情報によりますと、ウガンダ東部Kween(クウェエン県)で発生したマールブルグ病について、ウガンダ保健省が新たな情報を公表しました。

記事の詳細

2017年10月17日に、ウガンダ保健省はウガンダKween(クウェエン県)でマールブルグ病の発生が確認されたことをWHOに届け出ました。保健省は、2017年10月19日に公式に感染の流行を宣言しました。

11月3日までに、これまでに報告されていた患者3人(確定患者が2人と感染の可能性の高い患者が1人、後に感染の発端となる患者であったことが判明)が死亡しました。このため、全体での患者の致死率は100%になります。患者は、疫学的に関連しており、ひとつの家族からの発生です。

2人目の確定患者は、死亡する前にケニアに旅行していました。接触者の追跡と精力的な患者の探索が、ウガンダKween(クウェエン県)とKapchorwa(カプチョルワ県)で、またケニア・Kitale(キタレ)の街とWest Pokot(西ポコット・カウンティ)でも続けられています。11月4日に、クウェエン県で2人目の確定患者とリスクの高い接触のあった医療従事者が症状を発現し、クウェエン県の治療施設に収容されました。また、2人目の確定患者と濃厚な接触のあった1人が、首都カンパラに旅行していたことが報告されました。カンパラ市の担当当局は、この接触者を追跡するために、彼女が訪れた村にチームを派遣し、21日間の健康監視を続けています。

公衆衛生上の取り組み

・ウガンダ保健省は、WHOおよび支援組織の協力の下、引き続き精力的に対策を行っています。
・接触者の追跡、並びに、医療施設と地域レベルでの精力的な患者の探索が続けられています。届出のあった死亡者には、埋葬前にマールブルク病についても検査が行われ、疑いのある死亡者については安全かつ尊厳を保った埋葬が行われています。
・WHO、ユニセフ、および国境なき医師団(MSF)からの物流支援を受けて、カプチョルワ県に隔離と治療のための病室が設立されました。死亡者と病人すべてに対する分類プロトコールが実施されています。
・社会活動員の動員とリスク情報の普及が続けられています。赤十字社ボランティア、ユニセフ、WHOの情報伝達・専門家らの支援を得て、4,000人を超える地域住民がマールブルク病に対する情報を受けとりました。
・心理社会的支援に対する専門家がクウェエン県に配置され、マールブルク病で死亡した患者の家族、医療従事者、その他にも地域住民に対して、相談窓口が設けられました。
・カプチョルワ県とクウェエン県では、入院患者を死に至らせるという治療センターへの不安や医療従事者の間違った対応への風評を払拭するために、マールブルク病の治療用病室の見学会が設定されました。
・ウガンダとケニアの保健担当当局の間では、2017年11月7日に国境を越えた会議がカプチョルワ県で予定されており、国境を跨いだ監視活動が続けられています。
・ケニアでは、マールブルグ病の感染発生時の緊急対策計画と公衆衛生の緊急対策室(EOC)が立ち上げられ、対策の準備が始められました。
・WHOによって、個人用保護具2000組が手配され、ケニアTrans Nzoia(トランス・ンゾイア)カウンティに送られました。
・血液検体が採取され、ナイロビの検査施設(KEMRI)に送られました。
・暫定的な治療センター(Kaisangat保健センター)が指定され、ケニア赤十字社がマールブルク病の治療センターを運営するために看護師を募り、再研修をしています。
・ユニセフは、情報の普及活動や地域社会との関わりを支援しています。
・国境なき医師団(MSF)フランス隊が、ウガンダのカプチョルワ県とクウェエン県、ケニアのKaisangatでの治療センターの設立支援のために派遣されています。

WHOのリスク・アセスメント

マールブルグ病は、非常に高い致死率(致死率:23~90%)をもって現れ、極めて高い毒性を持ち、流行を起こしやすい病気です。マールブルグ病の感染発生は稀です。このウイルスは、感染した人や野生動物(例えば、サルやフルーツ・コウモリ)の血液、体液および組織と直接に接触することで伝播します。

臨床試験の可能性に向けて、候補となる実験的治療法およびワクチンについての検討が行われています。

ウガンダは、これまでにも、エボラとマールブルグ病を含むウイルス性出血熱の再興に対する管理を行った経験があります。歴史的には、ウガンダでコウモリが生息する洞窟に入った鉱夫や旅行者での事例が報告されています。 マールブルグ病の感染発生には、次のような記録があります。

2007年:ウガンダ西部Ibanda(イバンダ県)で死亡2例を含む4例
2008年:それぞれ別々にウガンダ西部の洞窟を訪れた後、オランダと米国に帰国した旅行者2例
2012年:ウガンダ西部イバンダ県およびKabale(カバレ県)での死亡4例を含む15例
2014:ウガンダ中央部Mpigi(ムピジ県)での医療従事者1例

現在、患者3人が確認されています。確定患者が2人と感染の可能性の高い患者が1人です。2人目の確定患者は、死亡する前にケニアに旅行していましたが、これまでにウガンダ国外では人から人への感染は確認されていません。ウガンダ保健当局は、この事例に迅速に対応しており、感染の発生を抑えるための対策が速やかに実施されています。ケニア保健当局は、緊急対策計画と公衆衛生の緊急対策室(EOC)が立ち上げられ、対策の準備対策が始められました。家族関係者、医療施設、周辺の伝統的な埋葬式で感染した可能性のある接触者が、この対策での課題になります。

感染の発生した県は、首都カンパラの北東約300kmのElgon(エルゴン)山・国立公園の北面に位置し、ケニアと国境を接する遠方の山間部にあります。エルゴン山の洞窟は主要な観光名所であり、宿主となるフルーツ・コウモリが洞窟に生息しています。(このコウモリは)マールブルグ・ウイルスを伝播することで知られています。また、感染地域はケニアと国境を接しており、感染の発生した地域とケニアとの間には国境を越える往来があるため、(コウモリの)生息地間でのウイルスの伝播や人への感染の可能性が、国境を越えて拡大するリスクを増大させています。

これらの要因は、国や(この)地域のレベルで高いリスクがあることを示唆しており、国際的な支援組織の支援を得て、直ちに対策が図られる必要があります。洞窟やその周辺地域を含むエルゴン山への観光には注意が払われ、適切なアドバイスが提供され、予防対策が取られる必要があります。世界レベルでの事態に関連するリスクは低い状態です。

WHOのアドバイス

マールブルグ・ウイルスの人から人への伝播は、主に血液や体液との直接的な接触が関連しており、適切に感染対策が取られていないときに医療処置が行われることに関連して、マールブルグ・ウイルスへの感染が報告されています。

マールブルグ・ウイルスへの感染の疑い患者や確定患者の世話に当たる医療従事者は、血液や体液との接触や(ウイルスで)汚染された可能性のある環境と予防なしに接触すること避けるために、感染を制御するための予防対策を講じることが必要です。

感染が発生したすべての保健医療区域内では、接触者の追跡や精力的な患者の探索などの調査活動を強化する必要があります。

マールブルグ病の感染へのリスク要因の認識を高め、人がウイルスに接触することを減らすための予防措置が、人での感染と死亡を減らすための重要な対策となります。主な公衆衛生上の伝達事項には、次のことが挙げられます。
・フルーツ・コウモリが生息する鉱山や洞窟での長時間の滞在によって生じるコウモリから人への感染のリスクを低減させることが必要です。フルーツ・コウモリの生息地のある鉱山や洞窟での作業や研究活動、観光客が訪れる際には、手袋やその他にも適切な防護服(マスクを含む)を着用することが必要です。
・感染患者との接触、特に体液との直接接触や濃厚な接触から発生する人から人への感染リスクを低減させることが必要です。マールブルク病患者との濃厚な接触は避ける必要があります。自宅で病気の患者を世話するときには、手袋と適切な個人用保護具を着用することが必要です。家族関係者を見舞うために病院を訪れた後も、自宅で病気の患者を世話した後と同様に、きちんと手洗いをする必要があります。
・マールブルグ病が発生した地域集落は、集落内での偏見を避けるために、病気自体の特徴について住民によく周知させ、治療施設への早期の(患者の)紹介や死者の埋葬など、その他にも大流行の防止に必要な対策を促すよう努める必要があります。マールブルグ病で死亡した人は、迅速かつ安全に埋葬されることが必要です。

WHOは、この事態で入手できている情報に基づいて、ウガンダに対し旅行や貿易に関していかなる制限も掛けないよう助言しています。エルゴン山のコウモリ洞窟を訪れる人は、コウモリと接触したり、人以外の霊長類の動物と接触したりすることを避け、可能な限り、手袋を着用し、マスクを含めて着衣で防護してください。

出典

WHO.Disease outbreak news.Emergencies preparedness, response,7November2017
Marburg virus disease- Uganda and Kenya
http://www.who.int/csr/don/7-november-2017-marburg/en/