2017年11月27日更新 黄熱の発生報告 - ブラジル(更新6)

2017年11月24日にWHOから公表された情報によりますと、7月から10月にかけて、ブラジルで71人の黄熱疑い患者が報告されました。ブラジル単独で情報が発信されたのは4月以来のことです。

記事の詳細

ブラジル・サンパウロ州で、2017年7月から10月半ばまでに、黄熱疑い患者が合計で71人報告されました。そのうち、2人が確定診断され、6人が検査中、63人は診断が除外されました。診断が確定した2人の患者(うち1人は死亡)は、9月17日と10月7日にItatiba(イタチバ)から報告されました。

7月から11月初めにかけて、人以外の霊長目の動物での集団感染が、サンパウロ州で580件報告されました。9月10日以降、報告の件数が増加していました。このうち、120件で黄熱が確認され、233件が調査中、74件は(黄熱の)確定できず、153件は感染除外に分類されました。動物での集団感染が最も多く登録されたのは、Campinas(カンピーナス)の健康調査地域からでした。このうち、Campo Limpo Paulista(カンポ・リンポ・パウリスタ)の行政区からは9月23日の週に、Atibaia(アチバイア)の行政区からは9月30日の週に、Jarinu(ジャリヌ)では10月14日の週に、動物での集団感染の事例が初めて報告されました。最近では、10月14日にサンパウロ市市街地に位置する広い公園内でも、人以外の霊長目の動物での集団感染が報告されました。

公衆衛生上の取り組み

サンパウロ州での2人の黄熱確定患者と動物での集団感染、並びにサンパウロ市市街地における動物での黄熱の集団感染の確認により、速やかに、国の担当当局がこれまでは黄熱の伝播のリスクがあると見なされていなかった地域でワクチン接種キャンペーンを始めました。また、州と地域保健行政の担当当局は健康保健サービスを強化し、(感染)リスク情報の伝達への取り組みを始めました。

WHOによるリスク・アセスメント

これらは、2017年6月以降にブラジルで報告された初めての黄熱患者です。これらの患者は、サンパウロ市市街地とこれまでは黄熱のリスクがないとみられていた行政区における動物での集団感染の発生にともない、公衆衛生上の懸念となっています。ブラジル保健担当当局は、大規模な予防接種キャンペーンを行うなど、この事態に対応して、迅速に、一貫した公衆衛生上の対策を実施してきましたが、これらの地域には感染しやすい住民が多くいるために、接種率が適正となるまでには時間がかかるかもしれません。現在、サンパウロ市でワクチン接種を受けていない人の数は、約1,000万人となっています。これまでは黄熱のリスクがないとみられていた行政区に黄熱の伝播が広がってきていると考えるならば、確実に入手できるワクチンを確保し、対策の実施することには大きな課題があります。

これまでのところ、2016年に始まったブラジルでのこの感染の発生との関連で、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)による伝播の証拠はありません。サンパウロで選択的に地方行政区で実施された昆虫学上の調査・研究では、ネッタイシマカおよびヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の侵入度(蛹化指数の範囲)は0%~3.1%で、低いレベルながらも持続的な感染リスクが存在することが示されています。

隣接する国々におけるワクチンの接種率が高いことを考慮すれば、地域レベルでの感染拡大のリスクは低いと考えられます。しかし、フランス保健当局が2017年8月にフランス領ガイアナとブラジルとの国境を川で挟むOiapoqueで黄熱患者を確認したことから、地域レベルで感染拡大のリスクがあることが示されています。世界レベルでのリスクは低く、ワクチン接種を受けていない旅行者で感染の発生地域から帰ってきた者に限られると考えられます。(ウイルスの)媒介能力をもつ蚊が生息する地域で、黄熱ウイルスに感染して旅行者が帰国したときには、限定された地域で黄熱の伝播が循環系を確立させることへのリスクを増加させる可能性があります。

WHOは、入手できた最新の情報に基づいて、疫学上の発生状況の監視を続け、リスクの評価を行っています。

WHOのアドバイス

ブラジルで黄熱の伝播のリスクのある地域を訪れる予定の旅行者へのアドバイスとして、黄熱の予防接種は旅行の少なくとも10日前から含めること、蚊刺しを避ける対策をよくみておくこと、黄熱の自他覚症状に注意を払うことが上げられます。また、WHOは、黄熱が伝播する地域の旅行中および帰宅後、速やかに医療施設を受診できるようにしておくこと、が挙げられます。

IHRの補足7に書かれているように、黄熱ワクチンを1回接種すれば、十分に、黄熱に対して免疫応答が維持され、生涯にわたり予防することができます。免疫力の増強のために黄熱ワクチンを追加接種する必要はありません。もしも、医学的な理由で、旅行者が黄熱の予防接種を受けることができないならば、そのときには、IHRの補足6と補足7にしたがって、関係する保健当局からの証明書を取得しなければなりません。

WHO事務局は、現在、入手できている情報に基づく限り、ブラジルへの旅行および貿易の制限を推奨はしていません。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 24November2017
Yellow fever- Brazil
http://www.who.int/csr/don/24-november-2017-yellow-fever-brazil/en/