2017年11月30日更新 ペストの発生報告 - マダガスカル(更新9)
2017年11月27日付けでWHOアフリカ事務局より、マダガスカルで発生しているペストについての週報が公表されました。マダガスカル保健省は、11月25日に、都市型の肺ペストを封じ込めたことを、公式に発表しました。
ペストの発生状況
2017年8月1日に始まったマダガスカルでの前例のないペストの流行は、国内外での協調した(感染)対策によって、封じ込められました。
マダガスカル保健省は、11月25日に、都市型の肺ペストを封じ込めたことを、公式に発表しました。しかし、マダガスカルには、ペストが常在しており、ペストの流行期が9月から4月までは続くことから、2018年4月までは、腺ペストや散発的な肺ペストのさらなる患者が報告されることが予想されます。WHOや関係する団体は、マダガスカル保健省が警戒体制を維持し、新たにペスト患者が発生したときに、速やかに発見し、迅速に対処できるように強力な警戒と対策への体制を維持し続けられるように、支援を続けています。11月27日月曜日に、WHOは、「流行は減速してきているものの、その対策は維持されていかなければならない」という声明を発表しました。
2017年11月20日から11月24日までに、ペスト患者58人(確定患者1人、可能性の高い患者8人、疑い患者49人)がWHOに報告されました。最後に腺ペストの確定診断患者が報告されたのは、Tsiroanomandidy(ツィルアヌマンディディ郡)とFaratsiho(ファラシオ郡)で、11月8日のことでした。最後に二次性の肺ペスト患者(原発は腺ペスト)が確定診断されたのは、Analamanga(アナラマンガ)地域圏Ankazobe(アンカゾブ)郡で、11月21日のことでした。
2017年8月1日から11月24日までに、マダガスカル114郡のうちの57郡(50%)で、感染の確定患者、可能性の高い患者、疑い患者が合せて2,384人が報告されました。死亡者は207人(致死率9%)となりました。マダガスカルの中央部、アナラマンガ地域圏で、感染がもっとも多く発生しており、全患者の68%に上っています。流行が始まって以降、膨大な数の患者が対処され、治療を受けました。11月24日現在、入院しているペスト患者は11人だけです。国外への国際的な拡がりもありませんでした。
報告された患者の大半(1,828人、77%)が、臨床症状から肺ペストに分類されました。347人(15%)が腺ペストに、1人がペスト敗血症に分類されました。(残る)208人は、まだ、分類できていません(さらに分類が進められている途中です)。医療従事者81名がペストに一致する症状を発現しましたが、(幸いにも)死亡者はでていません。
肺ペストと臨床診断された患者1,828人のうち、347人(21%)が確定診断され、614人(34%)が感染の可能性が高いとされました。(残る)824人は追加の検査結果を待つ段階にあり、疑い患者とされています。(これまでに)ペスト菌(Yersinia pestis)33株が分離培養されました。すべてのペスト菌は、ペストの感染制御に向けた国の計画で推奨されている抗生物質に感受性がありました。
この流行中に確認された接触者7,289人全員が予防投与の一連での抗生物質の服用を完了しました。(このうち)ペストに一致する症状を発現した接触者11人だけは、疑い患者に分類されました。
ペストは、マダガスカルの高原台地には常在しています。(今回の)流行が最初に発生したアンカゾブも、この地域内にあります。通常、9月から4月にかけて、毎年、季節性の患者の急増が起こりますが、主に腺ペストです。今年は、ペストの流行期が、いつもよりも早くに始まりました。今回の流行は肺ペストが主体で、(これまでペストが)常在していなかった地域や首都Antananarivo(アンタナナリボ)や港湾都市Toamasina(トゥアマシナ)のような大都市中心部でも、感染が発生しています。
現在のリスク・アセスメント
マダガスカルでの新たな患者数や病院への入院数は、10月中旬以降、着実に減ってきています。2017年11月9日から22日までに、肺ペスト事例94件が報告されましたが、89件(95%)は、確定患者でも、可能性の高い患者でもなく、疑い患者でした。10月14日以降、腺ペストの患者は減ってきています。現在までに、直近でペスト確定患者が報告されたのは11月21日です。マダガスカル国外では、ペスト患者は報告されていません。新たな患者の数および入院患者の数は減ってきており、急性都市型肺ペストの流行状況は終息に向かってきていることが、(科学的)根拠から示唆されています。しかし、WHOは、2018年4月に通常のペストの流行期が終わるまでは、ペスト患者が報告されるものと予想しています。
現在までに入手できている情報とこれまでに行われた対策に基づけば、国レベルでペストがさらに拡大することへの潜在的リスクは中等度です。(アフリカ)地域や世界レベルでの全体的なリスクについては低いと考えられています。
ペストの予防、発見、感染制御に対する戦略的なアプローチ
WHOは、ペストの感染予防と感染管理のため、(これまでに)実績が示された戦略の実施を要請しています。これらの戦略には、(i)対策の主導、(ii)調査活動の強化、(iii)検査施設での確認、(iv)接触者の確認と抗生物質の予防投与および健康監視、(v)患者の管理、(vi)感染の予防および管理、(vii)安全かつ尊厳を維持した埋葬、(viii)社会活動員の動員と地域住民の参加、(ix)物資の流通、(x)リスク情報の伝達、(xi)媒介昆虫の駆除、(xii)支援組織の参加、(xiii)調査研究、(xiv)最優先で警戒が必要とされる国での体制準備の強化、(xv)対策のための人的・物的資源の動員、などが挙げられます。
出典
AFRO/WHO. WHO external Situation report. 13-27 November 2017
Plague outbreak situation reports
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/259514/1/Ex-PlagueMadagascar27112017.pdf[PDF形式:1,319KB]
参考
外務省 海外安全ホームページ:マダガスカルにおけるペストの流行(その4)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C246.html