2017年12月04日更新 ヨーロッパでの麻しん流行のアメリカ大陸への影響(更新2)

2017年12月1日付で、汎米保健機関(PAHO)より、ヨーロッパでの麻しん患者の報告が増加していたことを踏まえて、(アメリカ大陸地域でも)人々を麻しんと風しんから防ぐために、調査活動の体制を強化し、適切な対策を実施することと、アメリカ大陸地域でこれらの病気が既にゼロである状態を維持することに努めることを、加盟国に要請しました。 ここでは、公表された注意喚起情報のうち、発生状況についての要旨を紹介いたします。

世界における発生状況の概要

2016年10月から2017年9月にかけて、ヨーロッパ地域の国々からは麻しんの確定診断患者15,941人が報告されました。そのうち、86%(13,712人)が2017年に報告されました。この間、ルーマニアでの発生率が最高(人口100万人あたり252.4人)であり、次いでイタリア(人口100万人あたり82.4人)、タジキスタン(人口100万人あたり77.3人)と続いていました。2017年おける死亡者が、ルーマニアでの10人を始め、20人報告されました。

ヨーロッパ地域では、2017年に、麻しんが56%(7,725人)で検査確認(血清学的検査、ウイルスの検出・分離)されました。残る患者は、疫学的な関連性や臨床経過の一致から(麻しんと)分類されました。ここで同定された遺伝子亜型は、D8(n=405)、B3(n=547)、H1(n=22)、D9(n=1)でした。

この他の大陸では、2016年から2017年にかけて、中国、エチオピア、インド、インドネシア、ラオス、モンゴル、ナイジェリア、フィリピン、スリランカ、スーダン、タイ、ベトナムなどで、麻しんの流行が報告されました。

アメリカ大陸における発生状況の概要

アメリカ大陸では、2017年第1週から第46週までに、アメリカ大陸地域の4か国から合計で麻しん確定患者600人が報告されました。内訳は、アルゼンチンが3人、カナダが46人、アメリカ合衆国が120人、ベネズエラが431人でした。また、アルゼンチン、カナダ、アメリカ合衆国から報告された患者のうち、36%が1歳から4歳までの子どもで、60%が麻しんと風しんに対するワクチンを接種していませんでした。

ベネズエラでは、第36週から第47週までに、麻しん疑い患者773人が確認され、このうち431人が、検査もしくは疫学的な関連性から確認されました。188人の診断は棄却されましたが、154人が検査中です。死亡者は記録されませんでした。患者の多くは、ボリバル州からの報告でした。また、Anzoátegui(アンソアテギ州 )でも2人の確定患者が確認されました。ボリバル州との間に疫学的な関連性がありました。この流行に関連して、疫学調査で、この他の州の(関係)機関から疑い患者は確認されていません。

ボリバル州でのこの流行において確認された患者のうち、最も発生が多い年齢層は1歳未満になります(発生率=445人/住民10万人)。1歳児の患者が続いていました(発生率=248人/住民10万人)。

教育センター、戸別訪問、指定された施設で、3種混合ワクチン(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹;MMRワクチン)を使った組織的なワクチン接種活動と勢力的な患者の捜索活動が、生後6か月から5歳までの子どもに続けられており、6歳から10歳までの子どもと、11歳から39歳での接触者にも、2種混合ワクチン(麻疹、風疹;MRワクチン)が接種されています。

ベネズエラで麻しんの流行を遮断することに向けた感染対策の計画とジフテリアの感染管理を実施しているベネズエラ保健省(MPPS)に対して、汎米保健機関/世界保健機構(PAHO / WHO)が行っている支援活動の概要が公表されています。

アメリカ大陸で確認されたすべての患者が、他の大陸からの感染輸入、感染輸入との関連、感染源不明の何れかでした。同定された遺伝子亜型は、アルゼンチンがD8、カナダとアメリカ合衆国がB3とD8でした。ベネズエラで同定された遺伝子亜型は、D8でした。但し、ブラジルで昨年に同定された系統とは異なっていました。

南北アメリカ地域は、国際専門家会議(IEC)が2015年に風しんに対して、2016年に麻しんに対して、それぞれにゼロとなったことを宣言した最初の地域でした。このため、これらの排除達成を維持するための取り組みを続けていくことが重要です。麻しんウイルスの侵入および拡散を防ぐための軸となる対策は、感染し易い人々へのワクチン接種と、麻しん疑い患者と風しん疑い患者をどんな場合でも速やかに発見することに十分な感知度を備えた質の高い調査体制の実施になります。

出典

PAHO.Epidemiological Update. 1December2017
Measles
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&gid=43077&Itemid=270&lang=en