2017年12月19日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新19)

 2017年12月13日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

 2016年1月から2017年12月に、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、フランス領ギアナ、ペルー、スリナムのアメリカ大陸7つの国と地域で、黄熱の確定患者が報告されました。アメリカ大陸では、この間に報告された感染者数と動物での感染数が、この数十年間で確実に最高値に達しました。観察されている増加(傾向)は、(黄熱への)免疫能をもっていない人々に、このウイルスが拡散しやすい生態系が大きく関係しています。

 PAHO/WHOから、前回10月27日に、黄熱の疫学情報が発信されて以降、新たにブラジルペルーで黄熱患者が報告されました。両国の発生状況は、次のようになっています。

 ブラジルでは、2016年第2四半期から2017年6月までの黄熱の流行中に、確定患者779人と死亡者262人、そして、動物の集団感染1659件が報告されましたが、その後は感染伝播が低下した状態となりました。確定患者が、サンパウロ州(2人)とリオデジャネイロ州(1人)で、疫学第28週、38週、40週に報告されました。サンパウロ州の確定患者は38週に1人、40週に1人(76歳男性で死亡しました)で、Itatiba(イタチバ)行政地区が感染地とみられました。リオデジャネイロ州(1人)から報告された患者は、Guapimirim行政地区が感染地とみられました。

 また、ブラジルの担当当局は、連邦直轄地ブラジリアで動物の集団感染が発生している地域での調査中の患者1人、並びに、リオグランデ・ド・スル州で調査中の患者2人、サンタカタリーナ州での患者2人について、報告しました。さらに、患者37人について、さまざまな州で調査が行われています。

 10年前に、ブラジル南東部と南部で発生した黄熱の流行と動物の集団感染の波がアルゼンチンやパラグアイに達したことを考えれば、2017-2018年の期間中、ブラジル南部と南東部の黄熱の発生状況を細かく監視することは必要となります。

 2017年7月から第49週までに、動物の集団感染が1,661件報告されました。このうち、144件で黄熱への感染が確認され、628件が分類不能(検体を採取できず)、703件が調査中として残っています。186件は、診断が棄却されました。確認された動物の集団感染が最も多かったのはサンパウロ州で、120件でした。動物の集団感染は、Mato Grosso(マットグロッソ州)でも1件、Minas Gerais(ミナスジェライス州)でも21件、リオデジャネイロ州でも2件が確認されました。2016-2017年にも同様に感染が発生しているミナスジェライス州とリオデジャネイロ州で動物の集団感染の発生が確認されており、人への感染のリスクの続いていることが示唆されています。

 マットグロッソ州では、Cuiabá地区で確定診断された動物の集団感染が報告されました。

 サンパウロ州では、主にCampinas(カンピーナス、サンパウロ州の都市)地域で、動物の集団感染の発生が続いています。サンパウロ州での2017年7月から12月までに確認された人以外の霊長目での黄熱への集団感染は、2016年7月から2017年6月までに観測されたものよりも(規模が)大きくなっています。

 2017年7月から12月にかけての人以外の霊長目での黄熱への集団感染の増加や、サンパウロ行政地区やサンパウロ地域圏(Cajamar、Caieiras、Mairiporã、Franco da Rocha、Guarulhos、Itapecerica da Serra)のように、これまでは黄熱が確認されていなかった新しい地域でのウイルスの拡大は、結果として、ウイルスへの感染性が高く、免疫能を獲得していない人々に高いリスクのあることを示しています。

 このような発生状況に対応し、人への感染を防ぐために、行政地区の保健局長とサンパウロ州政府は、サンパウロ地域圏での動物の集団感染が発生する地域周辺に住む人々を対象に予防接種の強化を図っています。

 サンパウロ地域圏での動物の集団感染は、野生の中にウイルスの伝播サイクルの役目を果たす存在があり、(その地域の)一部の森林と(住民が)接する周辺地域で発生しています。(まだ)人での感染例は確認されていません。

 ペルーでは、2017年第1週から第44週までに、黄熱の確定患者と感染の可能性の高い患者が合計で17人報告されました。このうち、3人が死亡しました。2016年と同様に、ほとんどの患者は、Junín(フニン県、6人)で発生しています。

PAHOからの勧告事項

 PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを要請しています。

黄熱ワクチンの接種について
 黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80~100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。

 入手できるワクチンの量には限りがあり、合理的な使用を念頭に置く必要があるため、PAHO/WHOは、次のことを繰り返し各国の保健当局に勧告しています。

1)リスクのある地域では、行政地区のレベルでこの地域に暮らす住民のワクチン接種率が少なくとも95%を維持していることの評価を実施すること
2)現在、感染の流行が発生していない国では、予防接種キャンペーンを行うべきではありません。感染の可能性の高い人々にワクチン使用の優先順位が与えられるべきであり、再ワクチン接種を避けるべきです。
3)感染が常在する地域へ向かう全ての旅行者は、少なくとも旅行の10日前に、確実に予防接種を行うべきです。
4)ワクチンが利用できる状況に応じて、加盟国は感染の流行に対処するために小規模の備蓄をして置かなければなりません。
5)十分にワクチンが入手できる状況になるまでは、感染が常在していない地域での小児に対する定期予防接種は延期してください。(このとき)入手できる状況になったら、ワクチン接種スケジュールを完了するために、追加の(接種)キャンペーンを実施してください。

注意事項
 ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に罹患したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。
•予防接種を必要とするCD4陽性細胞数≧200 cells / mm3で、症状のないHIV感染者には、ワクチン接種の求めに応じることができます。
•妊娠女性は、緊急性のある状況で予防接種を受けるべきであり、保健当局の勧告に従う必要があります。
•乳児にワクチンのウイルスを伝播させるリスク(黄熱は生ワクチンである)は、母乳育児中の女性での予防接種の効果よりも低いため、感染が常在する地域で暮らす授乳中の女性にも予防接種は推奨されます。
•黄熱が流行している地域への旅行を予定する妊娠中または授乳中の女性に対しては、旅行を延期するか、避けるかを検討し、それができないときには予防接種が推奨されます。彼女らには、予防接種の潜在的なリスクとベネフィットについてのアドバイスを受け、情報に基づいて意志決定される必要があります。母乳育児によるメリット(受益)は、代替の栄養食品によるものよりも優れています。

 次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
•免疫不全の病態にある人(胸腺疾患患者、症候性のHIV感染者、悪性新生物の治療中の患者、免疫抑制治療中の患者、免疫を調節治療している患者、最近の臓器移植した患者、現在または最近の放射線療法を受けた患者など)。
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対し重度のアレルギーのある人

出典

PAHO. Epidemiological Update. 13 December 2017
Yellow Fever
https://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=43186&lang=en