2018年01月24日更新 黄熱の発生状況 - ブラジル

2018年1月22日にWHOから公表された情報によりますと、このところの数週間で、ブラジルでの黄熱の確定患者の数が3倍になりました。流行への注意が必要な状況となっています。

記事の詳細

2017年7月1日から2018年1月14日にかけて、ブラジルでは、死亡者20人を含む35人の確定患者が報告されました。また、黄熱の疑い患者が145人報告されており、現在も調査中です。このところの数週間で、ブラジルでの黄熱の確定患者の数が3倍となりました。主に、サンパウロ州とMinas Gerais(ミナス・ジェライス州)で増えています。確定患者は、サンパウロ州(確定患者20人、死亡者11人)、リオ・デ・ジャネイロ州(3人、1人)、ミナス・ジェライス州(11人、7人)、および連邦直轄区(死亡者1人)で記録されました。

確定患者は全員が、人以外の霊長目での動物の感染が記録されている分布地域で感染したようです。ミナス・ジェライス州では、2016/2017年の流行期には患者が確認されなかった行政地区で、患者が報告されています。サンパウロ州で最も患者の割合が高いのは、Mariporaです。ここはサンパウロの行政地区から北に15kmに位置しています。リオ・デ・ジャネイロ州では、ValençaとTeresópolisの行政地区で新たな患者が報告されています。後者は、リオ・デ・ジャネイロ市から96kmに位置しています。

2017年12月19日から2018年1月8日までブラジル・サンパウロ州MairiporaとAtibaiaの街に滞在し、オランダに帰国した旅行者が、1月11日にPCR法検査で陽性となり、黄熱(への感染)が確認されました。MairiporaとAtibaiaの街では、現在、黄熱ウイルスの伝播が発生しています。この患者に黄熱の予防接種歴はありませんでした。発症は、2018年1月7日で、患者は、高熱、頭痛、筋肉痛、嘔気、嘔吐、下痢の症状を訴えました。

動物での感染が2017年を通して報告されていますが、9月以降に大幅に増加しました。動物での感染の件数と、関係する動物の頭数の数値の高さは、感染伝播に好条件の生態系の中でウイルスが高いレベルで伝播していることを示しています。2017年7月1日から2018年1月14日までに、人以外の霊長目の動物での集団感染が、21州で2,442件ありました。(ここには)これまでは黄熱のリスク地域とは考えられていなかった地域が含まれていました。このうち、441件で黄熱への感染が確認されました。また、747件が調査中、817件が判定不能に分類され、467件が診断を棄却されました。黄熱への感染が確認された動物での感染事例は、4州(マット・グロッソ州、ミナス・ジェライス州、リオ・デ・ジャネイロ州、サンパウロ州)から報告されました。しかしながら、確定された動物での感染事例の大半(88%)は、サンパウロ州で記録されました。

公衆衛生上の取り組み

サンパウロで人と動物で黄熱への感染が確認された2017年9月以降、国の担当当局は、定期接種と流行に先手を打つ形での予防接種キャンペーンを通じて、ワクチンの接種活動を強化してきました。また、州および行政地区の保健当局は、患者を管理するための医療サービスを強化し、リスク情報の普及に努めてきました。

ブラジル保健省は、2018年1月初めに、黄熱の大流行発生へのリスクを軽減するために、標準量(0.5mL)と分割量(0.1mL)両方の用量での大規模な黄熱の予防接種キャンペーンを実施する計画を発表しました。このキャンペーンは、サンパウロとリオ・デ・ジャネイロで1月25日から2月17日まで、バイア州では2月19日から3月3日まで行われます。キャンペーンは、3州77市町村に住む2,180万人(分割量で1,650万人、標準量で530万人)に、予防接種する目的で実施されます。

WHOによるリスク・アセスメント

2017年7月以降に報告された動物での感染数により、特に、サンパウロなどの大都市の周辺と、これまでは黄熱のリスクが考えられてこなかった市町村での(感染への)懸念が続いています。

2016/2017年の流行発生時にブラジル担当当局が実施した対策は、2016年11月28日から2017年1月15日までの期間と比べて、2017年11月27日から2018年1月14日までの期間の患者数を減少させることに貢献しました。黄熱ウイルスの感染伝播に好条件の生態系を保つ地域に暮らしている住民の大多数はワクチンを接種していないことから、現在の感染伝播パターンの変化によるリスクが高いことが示されています。

ブラジル担当当局は、標準量(0.5mL)と分割量(0.1mL)の両方での大規模な黄熱の予防接種キャンペーンを実施することの決定で、黄熱の感染伝播が効果的に抑制されることが期待されます。この大規模なワクチン接種キャンペーンは、その規模と範囲が(大きい)ことから、物流面での大きな挑戦として特徴付けられるであろう点で、注目しておく必要があります。

最近、ワクチン未接種の旅行者で黄熱患者の発生が確認されたことは、各加盟国が国際旅行をする者に対して、勧告事項の周知を徹底させる必要があることを示しています。

ブラジルに向かう国際旅行者に向けた、WHOからの現在の勧告事項は、2018年1月16日に更新され、以下のリンクでみることができます。
WHO recommendations for travellers, Brazil
黄熱ワクチンの推奨事項の情報更新 - ブラジル

ウイルス血症となって帰国した旅行者は、媒介する蚊が生息する地域では、現地で黄熱(ウイルスの)伝播サイクルを確立させるリスクを保持します。

これまで、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)により黄熱が伝播している科学的証拠はありません。感染が発生したいくつかの州で2016/2017年に行われた昆虫学的調査では、Haemagogus属の蚊が黄熱(ウイルス)に陽性であったことが判明しています。

WHOは疫学的状況への監視を行い、入手できる最新の情報に基づいて、リスク評価を繰り返し検討していきます。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 22 January 2018
Yellow fever- Brazil
http://www.who.int/csr/don/22-january-2018-yellow-fever-brazil/en/