2018年03月02日更新 ジフテリアの流行状況-アメリカ大陸

2018年2月28日付で、汎米保健機関(PAHO)より、ジフテリアの発生状況について報告がありました。

アメリカ大陸におけるジフテリアの発生状況の概要

2017年に、アメリカ大陸地域では、ブラジルドミニカ共和国ハイチベネズエラの4か国で、ジフテリア確定患者が報告されました。2018年には第8週までに、ブラジルコロンビアハイチベネズエラの4か国で、ジフテリア疑い患者と確定患者が報告されました。2018年に疑い患者と確定患者が報告されたそれぞれの国からの発生状況が示されています。

ブラジルでは、2017年に、14州からジフテリア疑い患者40人が報告されました。このうち35人は診断が棄却されましたが、4州の5人は診断が確定されました。Acre(アクレ)州で1人、Minas Gerais(ミナス・ジェライス)州で2人、Roraima(ロライマ)州で1人(死亡例、ベネズエラからの感染輸入例)、São Paulo(サンパウロ)州で1人でした。確定診断された患者5人のうちの3人(ミナス・ジェライス州の2人とサンパウロ州の1人)は全ての回数のワクチン接種を受けていました。確定患者の年齢幅は、4歳から66歳(中央値は19歳)で、男性が4人、女性が1人でした。また、2018年第2週には、疑い患者1人がBahia(バイーア)州から報告されました。現在、この患者の調査が行われています。

コロンビアでは、2018年第7週に、ジフテリアと確定診断された死亡者が、La Guajira(ラ・グアヒーラ)県から報告されました。この患者は、ベネズエラからの感染輸入患者でした。患者はベネズエラから来た3歳児で、ワクチンの接種歴は不明でした。1月2日に発症しました。この患者は1月8日に死亡しましたが、ジフテリア菌(Corynebacterium diftheriae)の培養とRT-PCR法検査によって、病態分類や菌毒素の存在が確認されることなく、(感染が)確認されました。これまでのところ、2次感染の患者は報告されていません。

ハイチでは、2014年に感染の流行が始まりました。2018年第6週までに、ジフテリア感染の可能性の高い患者410人が報告されており、流行が続いています。このうち、75人が死亡しました。患者の致死率は2015年が22.3%、2016年が27%、2017年と2018年が10.7%でした。2018年最初の4週間も、2017年最後4週間と同様に、毎週5人のうちの2人(の死亡)が報告されました。

女性が、2015年には感染の可能性の高い患者の57%、2016年には50%、2017年には60%、2018年(第6週まで)には47%を占めていました。2015年から2018年の間でのワクチンの接種率については、ワクチン未接種患者が患者全体の17%(2018年)から38%(2015年)を占めていました。2017年から2018年の第4週にかけて報告された感染の可能性の高い患者のうち、10歳以下の子どもが64%を占めていました。

流行が始まって以降、最も感染の可能性の高い患者の数が多く報告された県は、Artibonite(アルティボニット)県、Centre(中央)県、Ouest(西)県でした。

ベネズエラでは、2016年7月に流行が始まって以降、2018年第5週までに、感染の可能性の高い患者が合計で969人報告されました。これらの患者のうち、324人は2016年に、609人は2017年に、38人は2018年に報告されました。また、このうちの726人は検査または臨床経過から確定診断されました。死亡者が113人(2016年に17人、2017年に96人)でており、致死率は15.5%でした。

2016年には、Anzoátegui(アンソアテギ)、Bolívar(ボリバル)、Delta Amacuro(デルタ・アマクロ)、Monagas(モナガス)、Sucre(スクレ)の5つの州から、患者が報告されました。2017年には、22州と首都地区から確定患者が報告されました。2018年には9つの行政組織で確定患者が報告されました。患者は、すべての年齢層から報告されています。しかし、大部分の患者は5歳から39歳の年齢層で発生していました。最も発生割合の高かった年齢層は、5歳から19歳の層でした。

政府の保健当局省は、疫学調査、患者の発見、治療、ワクチン接種、これに加えて、(この病気を管理するために改定された標準マニュアル、ガイドライン、手順に基づいた)保健関係の人材への研修や健康教育に力を入れています。

各加盟国へのアドバイス

PAHO / WHOは、加盟国に対し、その国のすべての地域で初期投与3回と増強投与のワクチン接種すべての実施率を高く保つ取り組みを続けるよう要請しています。

PAHO / WHOは、ワクチンを接種していない5歳未満の幼児、学童児、医療従事者、兵士、服役囚、職業的に多数の人々と日常的に接触する人々に、最大級のリスクがあると提唱しています

(ジフテリアが)常在する国や感染が発生している地域に向かおうとする旅行者に、ジフテリアに対する特別大きなリスクはありませんが、PAHO / WHOは、最新の情報から、各国の保健当局が、それぞれの国の予防接種スケジュールに従って、旅行前にジフテリアの予防接種を受けさせておく必要があると勧告しています。

PAHO / WHOは、加盟国がジフテリア抗毒素の提供や接触者の追跡など、患者への適時かつ適切な対応を始動するために、疑い患者を早期に発見する調査体制に力を入れることを要請しています。

合併症や死亡率を減らすには、適正な臨床上の管理が鍵となります。

出典