2018年03月05日更新 ラッサ熱の流行- ナイジェリア(更新)

ラッサ熱は、西アフリカの風土病で、毎年、季節に伴う流行が12月から6月に発生します。2018年3月1日にWHOから公表された情報によりますと、ナイジェリアでの流行はかつてない規模に拡大しているようです。

ラッサ熱の流行状況

2018年1月1日から2月25日までに、疑い患者1,081人と死亡者90人が報告されました。報告があったのは、Anambra、Bauchi、Benue、Delta、Ebonyi、Edo、Ekite、Federal Capital Territory、Gombe、Imo、Kogi、Lagos、Nasarawa、Ondo、Osun、Plateau、Rivers、Tarabaの18州です。この間に、317人が確定患者に、8人が感染の可能性の高い患者に、分類されました。72人が死亡しました(確定患者と感染の可能性の高い患者での致死率は22%)。18州で、合計2,845人の接触者が確認されました。

6州(Benue、Ebonyi、Edo、Kogi、Nasarawa、Ondo)で、医療従事者14人が感染しました。死亡者が4人(致死率は29%)に上っています。2月18日までに、医療従事者14人のうち4人でラッサ熱に対して陽性であることが確認されました。

ラッサ熱の治療センターが4州(Anambra、Abakaliki、Edo、Ondo)で運用されています。このセンターで働く医療従事者には、基本的な感染の予防と管理、個人用防護具の使い方などの研修が行われました。また、現地チームが精力的に生活地域内で報告された疑い患者と死亡者について調査しており、接触者への健康監視を続けています。現在、3つの検査施設が運用され、PCR法検査によって、ラッサ熱に対する検体の検査が行われています。WHOは、主に調査体制の強化、接触者の追跡、診断能力の増強、リスク情報の普及などの領域で流行対策の支援を続けています。

ラッサ熱は、西アフリカのガーナ、ギニア、マリ、ベナン、リベリア、シエラレオネ、トーゴ、ナイジェリアには常在しています。2018年2月22日までに、ベナンでは、ナイジェリアで変調を来した疑い患者10人が報告され、ナイジェリアと国境を接するベナンの県からは確定患者が報告されました。ラッサ熱の流行は、ベナンと国境を接するナイジェリアの1州とカメルーンと国境を接する2州で活発となっているようです。カメルーンでは、ラッサ熱が常在するとは考えられておらず、この数年間、ラッサ熱の流行は報告されていません。

公衆衛生上の取り組み

・1月22日に、政府のラッサ熱・緊急対策センターが首都アブジャで立ち上げられ、WHOや支援組織と連携しながら、対策活動を主導しています。
・ナイジェリア疾病対策センターの(対策)チーム・スタッフとNFELTP (Nigeria Field Epidemiology& Lab Training Program: ナイジェリアCDCの疫学訓練組織)の職員が、Ebonyi、Ondo、Edoの各州の流行に対処するために配置されました。
・ほとんどの感染の発生を占めるEbonyi、Ondo、Edoの3州では、ラッサ熱の治療病棟が作られ、確定患者にはリバビリンによる治療が行われています。ナイジェリア疾病対策センターは、ALIMA(患者管理や地域社会での教育を補助している現地の非政府機関)の協力を得ながら、治療病棟の評価を行っています。
・流行の高まりに伴い、各州では、調査活動の強化が続けられています。各州の患者リストは、随時、ウイルス性出血熱の管理システムのある政府レベルのデータベースに送られています。
・ナイジェリア疾病対策センターは、Irrua専門家研修病院と連邦医療センター(Owe)に対し、増加する患者の収容能力に対応するためにテントとベッドを供給しました。
・Irrua専門家研修病院のスタッフは、疑い患者が受診した他の病院に臨床上の患者管理の仕方についてアドバイスを行っています。また、24時間体制で、ラッサ熱患者を管理するための電話相談窓口が開設されました。

WHOによるリスク評価

ラッサ熱は、急性ウイルス性出血熱です。ネズミの糞尿で汚れた食べ物や日用品に触れることで人に感染します。人から人への感染、検査施設での感染も起こります。この病気の全体での致死率は、約1%です。しかし、重篤な入院患者では15%もしくはそれ以上になります。早期の治療と電解質の補正で生存率を向上させることができます。臨床経過の早期に投与された場合、抗ウイルス薬リバビリンは、ラッサ熱に対して有効な治療薬と考えられています。ラッサ熱への曝露後の予防投与法としてのリバビリンの有効性を支持する科学的根拠は得られていません。ラッサ熱は、ベナン、ギニア、ガーナ、リベリア、マリ、シエラレオネ、トーゴ、ナイジェリアに常在することが知られており、西アフリカの他の国にも、存在している可能性はかなり高いです。

現在、ナイジェリアで流行しているラッサ熱は、これまでの数週間で、患者数、死亡者数ともに増加傾向を示しており、2018年に入り確定患者が317人も報告されました。これは、これまでに報告された流行のうちでも最大の規模です。

ラッサ熱の患者治療センターでの勤務ではない医療従事者14人が感染したことは、予想される診断にかかわらず、すべての患者に対して、すべての医療施設が早急に感染の予防と管理の実施を強化すべきことを力強く示しています。多くの州で感染が発生していることを考えると、ラッサ熱に感染した患者に適切に対応する準備が整っていない医療施設で、臨床上の治療が行われ、医療従事者の感染リスクが増している可能性があります。

国内および行き来の多い国境周辺のさまざまな地域で確定患者が報告されていることが、国内にも隣国にも(感染の)拡がるリスクがあることを示しています。(アフリカ)地域レベルでは、全体としてのリスクは中等度です。公衆衛生上の取り組みには、感染監視の活動、接触者の追跡、検査施設での検査、患者の管理などの活動強化を続けていくことに焦点を当てる必要があります。ベナンとの間でも、ラッサ熱患者および接触者についての情報を共有し、より強固な協力体制をとることが、早期の発見と流行の国境を越えた拡大への対策に貢献すると思われます。

WHOからのアドバイス

ラッサ熱の予防は、ネズミが家に侵入しないように衛生環境をよくすることに左右されます。医療施設の環境では、患者に対処する際、院内感染を予防するために、関係者が標準的な感染の予防と制御のための対策を徹底する必要があります。

稀な例ですが、ラッサ熱が常在している地域から戻った旅行者が、この病気を他の国に感染輸出することがあります。西アフリカから戻ってきた有熱者、特にラッサ熱が常在する国の農村地域や病院にいたことのある有熱者には、ラッサ熱の診断を鑑別に入れることが必要です。ラッサ熱が疑われる患者を診察する医療従事者は、速やかに地元と​​国の専門家に連絡し、アドバイスを求め、検査施設での検査を手配する必要があります。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness. 1 March 2018
Lassa Fever- Nigeria
http://www.who.int/csr/don/01-march-2018-lassa-fever-nigeria/en/