2018年03月07日更新 ポリオの地域拠点・検査施設への支援-パキスタン

ポリオは、根絶が間近に見えてきている今こそ、強固な検査体制が求められます。2018年3月2日にWHO東地中海事務局から発信された記事では、この地域の検査の中核を担うパキスタンの検査施設を整備するために日本が中心となって支援を行っていることが取り上げられています。

記事の内容

日本政府は、この地域のポリオ根絶のための拠点研究施設となるイスラマバードの国立衛生研究所に機器調達の助成金として320万USドルを拠出すると発表しました。

遺伝子分析装置、RT-PCR検査の機器、培養機器、冷凍庫など、最先端の分子生物学上の機器を調達することにより、研究施設での検体の処理能力を大幅に強化させます。この新しい機器(の導入)により、この地域の拠点研究施設は、急性弛緩性麻痺を発症した人から採取された糞便検体の検査結果の報告スピードを向上させることができます。また、ポリオのリスクが特定された地域の下水から採取された検体の検査結果の報告スピードも向上させます。2017年だけで、この地域の拠点研究施設では、パキスタンとアフガニスタン、両国から送られて来た便検体30,000本と環境からの採取試料950本が検査されました。

また、日本からの助成資金は、便検体や環境試料から野生型ポリオ・ウイルスを正確に分離・同定するために必要とされるものの、老朽化した冷凍機材、試薬およびその他・必須機器の入れ替えに使われます。

国民保健行政・規制・調整を担当する省庁が主催した式典で、日本政府、日本国際協力機構(JICA)、世界保健機関(WHO)の代表が正式に署名しました。

署名の記念式典で、国民保健行政・規制・調整を担当する省庁の長官Saira Afzal Tarar氏は、次のように述べています。「日本政府やその他・支援組織からの着実な支援と強固な協力関係は、過去2年間において、このプログラムの大きな進歩への重要な要素となってきました。この新しい助成金は、新しい技術を取り入れポリオ調査活動を強化させることで、国内におけるポリオ根絶に貢献することになるでしょう。」

(これを受けて)駐パキスタン大使Takashi Kurai氏は、「パキスタンで確立されているポリオの強力な監視体制の維持は、今後も、根絶への取り組みに不可欠です。この名誉ある先駆的な取り組みの一員となれることを嬉しく思っています。それでも、パキスタンからポリオを根絶するためには、予防接種への取り組みを促進させるだけでは十分ではありません。人々の問題への関心の低さや、取り組みを強化するために必要な基盤整備の必要性にも取り組む必要があります。日本は、ポリオ根絶のために、パキスタンをより広い視点から引き続き支援していきます。」と述べました。

また、JICAのパキスタン事務局Yasuhiro Tojo代表は、次のように述べました。「JICAは、1996年と2001年以降、それぞれに、ポリオ計画と定期予防接種の支援を行ってきています。」「この無償での資金協力の実施により、ポリオの監視体制は各州・各地区へと進められるものと確信しています。このことで、ポリオを含めた(この)国の予防接種事情が改善されるでしょう。このことは、パキスタン政府がポリオを根絶するだけでなく、根絶後もポリオのないパキスタンを維持することに役立つでしょう。」

パキスタンのポリオ根絶プログラムは、ポリオがもはや全国土の子どもたち、家族、地域社会を(感染からの)リスクに曝すことなく、未来を築くために、長い道のりを歩んできました。ポリオの(発生報告は)2016年の20件、2015年の54件に比べて、2017年には8件しか記録されませんでした。「ポリオの監視活動、特に上手く機能している検査施設の役割は、これまで以上に重要性を増してきており、日本からの支援はこの重要な時期に行われています。」とWHOポリオ根絶・緊急支援の担当長官Christopher Maher氏は述べました。

日本政府は、1996年より、パキスタンのポリオ根絶イニシアチブを支援してきました。今回の助成金320万USドルを含めて、ポリオ根絶プログラムを強化し、この破滅的な病気に歯止めを掛けるために、(日本は)約240億円(2.2億USドル)をパキスタンに供与してきました。

パキスタンでのポリオ根絶への取り組みについて

ポリオは、極めて感染性の強いウイルス性疾患で、主に5歳未満の子どもに発症します。ウイルスは神経系(組織)を侵し、麻痺を起こして、死に至らせます。ポリオの治療法はありません。一方、ワクチンの接種が、この破滅的な病気から子どもたちを守る最も効果的な方法となります。5歳未満の子どもたちがワクチン接種を受けるほどに、彼ら(自身)もその地域も、ウイルスに対する保護作用が強化されます。繰り返しの免疫(強化)は、何百万人もの子どもたちをポリオから守ります。ほぼ世界中のすべての国でポリオを終息させました。

すべてのポリオ・ウイルスの感染経路を速やかに検知することは、パキスタンでのポリオ根絶イニシアチブの主要目的の1つであり、ポリオ根絶のための緊急行動計画の重要な目標となっています。ポリオの監視体制は、全ての急性弛緩性麻痺の患者を素早く検知できることに加えて、すべての急性弛緩性麻痺の患者を調査でき、地域での便検体を採取し、適切に保管し、中央検査施設に搬送し、ポリオ・ウイルスの存在の有無を確認することが必要となります。

ポリオの調査活動をさらに強化するために、パキスタンでのポリオ根絶プログラムは、2009年から戦略的に採取場所を選定して、ポリオ・ウイルスを検知するための環境調査活動を行っています。現在、全国33の地区や街の採取場所53か所が選定されており、世界最大の環境調査活動のネットワークとなっています。環境中の選定場所から採取した試料は、イスラマバードのポリオ根絶のために、この地域の中央研究施設でも検査されています。

出典

EMRO. News.Pakistan, Countries. 2 March 2018
Japan to provide substantial support to Regional Polio Laboratory
http://www.emro.who.int/pak/pakistan-news/japan-support-regional-polio-laboratory.html