2018年03月08日更新 メジナ虫症の根絶に向けて- ケニア

WHOは、2018年3月2日に、ケニアにおけるメジナ虫症の感染伝播の終息を認定したと発表しました。

メジナ虫症の根絶に向けて- ケニア

WHOは、メジナ虫症根絶証明国際委員会(International Commission for the Certification of Dracunculiasis Eradication; ICCDE)からの勧告に基づいて、ケニアにおけるメジナ虫症の感染伝播の終息を認定したと発表しました。

WHO本部(スイス・ジュネーブ)で開催された第12回会議で、2017年10月に国際認証チームがケニアを訪れたときの報告書が検討され、メジナ虫症が撲滅されたとするこの国の請求を審査しました。

「この画期的な地点に到達するために、数十年にわたる困難な状況に勇気をもって挑んだ何千人ものの保健医療従事者とボランティアの努力に敬意を表し、ケニアに祝意を送ります。」「この勝利は、私たちすべてに、貧困からの病気を克服し、病気に陥り易い人々の生活を向上させ、後生に残さないようにする勇気を与えます。」と、WHO事務局長Tedros Adhanom Ghebreyesus博士は述べています。

Tedros博士は、2017年5月にWHO事務局長に就任して以来、ICCDEメンバーとの初めての会合で、WHOがメジナ虫症の根絶に向けて実施してきた比類なき取り組みについて繰り返し述べて、委員会の長年にわたる取り組みに感謝の意を表明しました。

Tedros博士は、カーター・センター、ユニセフ、CDCなどの支援組織からの助成を得て、WHOが、この病気が常在するチャド、エチオピア、マリ、南スーダンの4か国に対して、適正な支援を提供する取り組みを倍加させるであろうことも付け加えました。また、Tedros博士は、現在も感染伝播が発生している国の指導者たちには個人的に連絡をとり、応対に重みのあるレベルの訪問を組織して、彼らが最終目標に到達できるように、さらに力を与えていくことを表明しました。

ケニアは、メジナ虫症の終息がWHOから認定された187番目の加盟国であり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ (UHC;社会の構成員全員に特定の福利厚生パッケージを提供することで、医療費リスクから保護し、医療の利用環境を改善し、保健状態の向上を図ることを目的とした制度)で定められた事項の推進に向けて、その責任ある取り組みに力を入れているケニアにとっては大きな成果です。

認定が残されている国は7か国(チャド、エチオピア、マリ、南スーダン、スーダン、アンゴラ、コンゴ民主共和国)だけとなりました。WHOは、ICCDEの勧告を受けて、その国で感染伝播が終息したことを証明することを義務付けられた唯一の機関です。

チャド、エチオピア、マリには、依然として、メジナ虫症が常在しています。南スーダンとスーダンは(終息への)事前認証の段階にあります。アンゴラとコンゴ民主共和国は、1980年代以降、この病気の発生がないものの、認証を受ける必要があります。

患者発生ゼロ:好ましい傾向

もう1つの重要な動きがありました。WHOは、南スーダンが2017年1年を通してメジナ虫症患者がゼロであったと報告したことに祝意を送りました。この前例のない成果は、南スーダンでのメジナ虫症の根絶撲滅プログラム、この国の保健省、そして支援組織によって導かれた地道な根絶へのキャンペーンがもたらした結果です。

「これは、すばらしいリーダーシップと、私たちがいるところで活動する全ての支援組織が一致団結して取り組んだ結果です。私たちが(これまでに)経てきた困難を考えれば、自分たちだけではこれを為し得なかったであろうし、WHO、ユニセフ、カーター・センター他、私たちに寄り添って協力してくれた多くの支援組織に感謝したいと思います。」「また、私は、この問題を重要なものとして取り組むことに焦点を当てたこの国のリーダーシップにも敬意を表します。紛争の中にあっても、私たちは管理ラインを超えた地域で活動が続けられ、人々が必要な医療支援を受け続けていることを確認してきました。」と、南スーダン保健省Riak Gai Kok氏は述べました。

2006年には、南スーダンに2万人を超える患者が報告されていました。それが、2016年には6人に減りました。(そして)この年の11月に患者が報告されたのが、最後でした。

南スーダンは、メジナ虫症患者が自発的に報告するために、全国規模の報酬制度を発展的に導入し、関心を高め、患者の封じ込めへの備えを維持してきました。過去1年間、南スーダンのメジナ虫症根絶プログラムは、関係者のほぼ全員が1年以上も国外に避難していたにもかかわらず、堅調な調査活動が実施されてきました。

マリでも、2015年11月以降、患者ゼロを報告しており、調査活動の実施と現金による報奨金制度が維持されています。精力的に活動する対策チームは、2017年を通して報告されたすべての伝聞情報を24時間以内に調査していました。

人および動物との間での寄生虫の感染伝播

メジナ虫症の人への感染は、2017年にチャドとエチオピアの2か国で、それぞれ15人ずつが報告されました。2017年の累積患者数は、2016年よりも5人多い30人に達しました。

2017年9月から12月にかけて、エチオピアOromia(オロミア)州の移民労働者でメジナ虫症患者が発生しました。患者の封じ込めと監視活動は継続されています。また、感染動物(犬11匹とヒヒ4匹)15匹も報告された。

チャドでは、患者15人と感染動物830匹(犬817匹と猫13匹)が報告されました。チャドでは、積極的な監視活動、患者の封じ込めへの対策、感染性のメジナ虫症の幼虫を運ぶミジンコ(単眼体)を駆除するためのミジンコ駆除剤(temephos)を使った地表水の全面処理を実施してきました。

また、チャドでは、WHOの大きな支援組織であるカーター・センターの支援を得て、感染が日常的に発生する地域での情報普及活動や(感染への関心の)啓発活動を強化してきました。カーター・センターは、1986年以降、WHO、国連児童基金、米国疾病対策予防センター並びにWHOとの共同センターと協力しながら、メジナ虫症根絶への活動の最前線に立っています。

出典

WHO.News, Neglected tropical diseases. 2 March 2018
Eradicating dracunculiasis:WHO certifies Kenya as South Sudan and Mali continue to report zero human cases
http://www.who.int/neglected_diseases/news/Kenya_certified_free_of_guineaworm/en/