2018年03月14日更新 麻しんの発生状況-アメリカ大陸(更新)

2018年3月9日付で、汎米保健機構(PAHO)によって、麻しんの発生状況の情報が更新されました。昨年、ヨーロッパでの麻しん患者の報告が急増したことを踏まえて、(アメリカ大陸地域でも)人々を麻しんと風しんから防ぐために、各加盟国に調査活動の体制を強化し、適切な対策を実施することと、アメリカ大陸地域にこれらの病気が常在することの阻止に取り組むことが求められています。

アメリカ大陸における発生状況の概要

アメリカ大陸では、2017年に、アメリカ大陸地域の4か国から麻しん確定患者が報告されました。内訳は、アルゼンチン、カナダ、アメリカ合衆国、ベネズエラです。2018年最初の3か月に、この地域の8か国から麻しん確定患者が報告されました。アンティグア・バーブーダ(1人)、ブラジル(8人)、カナダ(3人)、グアテマラ(1人)、メキシコ(1人)、ペルー(1人)、アメリカ合衆国(11人)、ベネズエラ(159人)からでした。

2018年における各国の発生状況の要約は以下のとおりです。

アンティグア・バーブーダグアテマラから報告された患者は、それぞれに英国からとドイツからの感染輸入の患者でした(2月9日の報告記事を参照)。

ブラジルでは、Roraima(ロライマ)州Boa Vista行政地区で麻しんの流行が続いています。2018年第8週に、流行の発端となる感染輸入の麻しん患者が確認されました。この患者は、ベネズエラから来た1歳の女児で、2月8日に発疹を発現しました。この患者は、麻しん・風しんのワクチン接種歴はなく、現在はBoa Vista行政地区で暮らしています。

2018年3月8日までに、37人の疑い患者(Boa Vista行政地区で30人、Pacaraima行政地区で7人)が報告されました。血清学的検査とPCR法検査によって、このうちの8人で感染が確認されました。29人(死亡者を含む)についても、調査が進められています。

確定患者8人は、全員がワクチンを接種していないベネズエラ人でした。性別は女児が3人と男児が5人で、年齢は9か月から10歳まででした。

The Oswaldo Cruz Foundation(オズワルド・クルス財団)によって行われた遺伝子解析により、確定患者5人の遺伝子型はD8と確認されました。これは、2017年にベネズエラで確認された型の1つでした。

ブラジル政府および州政府当局は、次のような取り組みを行っています。

・前向き調査と施設での患者の発見や接触者の追跡といった後向きの疫学調査の強化に努めています。
・医療関係の専門担当者の研修を行っています。
・疑い患者と確定患者の周辺でのワクチン接種活動を強化し、ワクチン接種キャンペーンの実施計画の準備に取り掛かっています。
・検査のネットワーク体制を強化しています。
・感染リスクについての情報の普及に取り組んでいます。

ロライマ州の住民とベネズエラからの移民には、年齢6か月から49歳までを対象に、2018年3月10日から4月10日にかけて、麻しんワクチンの接種キャンペーンを行う計画です。

メキシコでは、2018年第7週に、感染の可能性の高い麻しん患者の輸入感染が報告されました。この患者は、Baja California(バハ・カリフォルニア)州Tijuanaに住む38歳女性で、2月11日に発疹が発現しました。この患者は、発症前に、メキシコの公衆衛生当局に国際旅行の機内で確定患者と接触していたことが届けられていた者として確認されていました。患者は2月12日に医師の診察を受け、血清検体と咽頭拭い液が採取され、(検体は)バハ・カリフォルニア州立公衆衛生研究所と、その後、疫学診断中央研究所(InDRE)に送付されました。

この患者は、リアルタイムRT-PCR法検査による系統発生解析により、B3の遺伝子型が検出されました。

メキシコ連邦政府および州政府当局は、ワクチンの接種活動、疫学調査活動、接触者の追跡活動を強化しています。接触者への18日間の経過観察において、この他に麻しんの疑いのある患者は確認されませんでした。これまでのところ、すべての接触者に症状は出ていません。

メキシコで最後に国内感染の麻しん患者が報告されたのは1995年でした。

ペルーでは、2018年第9週に、麻しん患者が国立衛生研究所で確認されました。この患者は、Callao(カヤオ)特別区に住む46歳の男性で、2月24日に発疹が発現しました。現在、感染した可能性の高い地域について調査中です。潜伏期の間に、この患者はLima(リマ)とCallao(カヤオ)の間、さらに、Puno(プーノ)県Vilque Chico地区に旅行していました。この患者は、血清学的検査とRT-PCR法検査によって確定診断されました。

国の担当当局は、疫学調査、(患者の)周辺の住民と患者が感染力のあった期間中に訪れた地域でのワクチン接種活動を強化し、接触者の健康監視を行っています。

ペルーで最後に国内感染の麻しん患者が報告されたのは2000年にカヤオ特別区Ventanilla地区でのことでした。

ベネズエラでは、2017年第26週に最初の麻しん患者が見つかって以降、2018年第7週までに、麻しん確定患者886人(検査確定患者666人、疫学的判定患者220人)がでました。ここには、死亡者2人が含まれています。一年のうちで、2017年第38週から2018年第3週にかけて、最も多い患者がみられました。

確定診断患者のうち、82%がBolívar(ボリバル)州で発生していました。Apure(アプレ)、Anzoátegui(アンソアテギ )、Delta Amacuro(デルタアマクロ)、the Capital District(首都地区)、Miranda(ミランダ)、Monagas(モナガス)、Vargas(バルガス)、Zulia(スリア)の各州からも患者が報告されました。この流行の感染源はボリバル州Caroni(カロニ)行政地区です。地図の上で、このウイルスの他の地域への拡がりは、鉱業と商業活動を取り巻く公式・非公式の経済活動により住民が高い移動性をもつことなどの要因で説明できます。確定患者の中で、最も発生の多い年齢層は、5歳未満の子どもで、確定患者の59%を占めます。続いて6歳~15歳の子どもが確定患者の30%を占めています。

対策の一環として、国の緊急対策計画では、(大陸)地域レベルの緊急対策チームと行政地区レベルの対策チームの活用、ワクチン接種の戦略と活動の実施、疫学調査、接触者の追跡と監視、医療者個々人への研修、国レベルでの制度上の支援などが、このウイルスの伝播を遮断するために組み込まれました。この国は、ウイルスの伝播を遮断するために、大人も子どももワクチンの接種率が上がるように、3種混合ワクチン(麻しん、風しん、水痘)と2種混合ワクチン(麻しん、風しん)の600万回分を供給してきました。

カナダアメリカ合衆国では、麻しん患者は感染輸入または感染輸入に関係しています。ワクチンを接種していた1人を除いて、患者全員がワクチン未接種でした。年齢幅は8か月から29歳、確認された遺伝子型はD8、D4、B3でした。

他の地域における発生状況の概要

2016年11月から2017年12月にかけて、ヨーロッパ地域での麻しんの発生状況について、2017年における患者数は、2016年と比べて患者が4倍となりました。2017年には、21,315人で麻しんへの感染が発生し、35人が死亡しました。これに対して、2016年は歴史上で患者数が最も少なく5,273人でした。これらの患者の72%は、イタリア、ルーマニア、ウクライナの3か国から報告されました。

この他の大陸では、2016年から2017年にかけて、中国、エチオピア、インド、インドネシア、ラオス、モンゴル、フィリピン、ナイジェリア、スリランカ、スーダン、タイ、ベトナムなどで、麻しんの流行が報告されました。

各国の担当当局へのアドバイス

国際専門家会議(IEC)は、南北アメリカ地域に対して、2015年に風しんが、2016年に麻しんが、それぞれにゼロとなったことを初めて宣言しました。麻しんウイルスの侵入および拡散を防ぐための軸となる対策には、麻しん疑い患者と風しん疑い患者をどんな場合でも速やかに発見するために十分な感知度を備えた質の高い調査体制を実施しながら、感染し易い人々にワクチンを接種することです。

汎米保健機構/世界保健機関(PAHO / WHO)は、他の地域からの麻しん患者の感染輸入が絶え間なく報告され、アメリカ大陸でも流行が続いているため、各加盟国に次のことを要請しています。

•アメリカ大陸における麻しん、風疹、先天性風疹症候群の(対策への)持続可能な行動計画(2018-2023)で提案されているように、すべての行政組織が、麻しん、流行性耳下腺炎、風疹を含むMMRワクチンの1回目と2回目の接種率を、均等に95%で維持できるようにワクチン接種に取り組むこと。
•麻しんの疫学調査を強化し、麻しんの疑い患者を素早く発見し、採取された日から5日以内に、検体が確実に検査施設に届けるようにすること。
•訓練を受けた緊急対策チームの立ち上げと、感染輸入された患者に対する国の速やかな対策プロトコルの実施を通して、感染伝播の常在が再び確立されることを防ぐために感染輸入された麻しん患者素早く対応できる標準化された体制を確立させること。立ち上げられた後には、国レベルと地方レベルの間で恒久的な(活動の)調整と情報伝達の流動性の確保が必要となります。

出典