2018年03月23日更新 黄熱の発生状況-アメリカ大陸(更新2)

2018年3月20日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が公表されました。南半球は夏シーズンであり、対策への注意が必要です。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

2016年1月から2018年3月13日までに、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、フランス領ギアナ、ペルー、スリナムなど、アメリカ大陸7つの国と地域で、黄熱の確定患者が報告されました。アメリカ大陸では、この間に報告された感染者数と動物の集団感染の件数が、この数十年間で確実に最高値に達しました。

前回2018年2月16日に、PAHO/WHOから黄熱の疫学情報が発信されて以降、ブラジルペルーで新たな黄熱患者が報告されました。これらの国での発生状況は、次のようになっています。

ブラジルでは、2017年7月1日から2018年3月13日までに、黄熱の確定患者920人(死亡者300人を含む)がでました。これは、昨年の同じ時期に報告された数値(患者610人、死亡者196人)よりも多くなっています。直近の4週間(2月20日から3月13日;原文どおりに記載)には、確定患者375人(死亡者136人を含む)が報告されました。2016/2017年と2017/2018年の同じ時期の疫学曲線を比べると、両年ともに第3週に発生率が最も高くなっています。2017/2018年には、第7週に2つ目のピークがみられました。これは、現在も森林型(黄熱)の感染伝播が続いている地域に、カーニバル休暇の期間に人々がより広範囲で国内移動したことと関連している可能性が高くなっています。

確定患者が感染した可能性のある地域については、多い順に、ミナスジェライス州(患者415人、死亡者130人)、サンパウロ州(同376人、120人)、リオデジャネイロ州(同123人、49人)、エスピリト・サント州(同5人)、連邦直轄区(死亡者1人)でした。

2017/2018年の流行期(7月~5月)には、主にサンパウロ州とリオデジャネイロ州で顕著な患者の増加がみられました。これらの患者は、大都市近郊の人口密度が高い地域で記録されています。2017/2018年の流行期に確定患者が報告された行政地区の数は、前年同期の118地区よりも多い169地区となりました。また、2017/2018年に、この時期に(感染の発生した)これらの行政地区に住んでいる人々(3,200万人)は、前年のこの時期に感染が発生した118の行政地区に住む人々(890万人)よりも多くなっています。

さらに、黄熱について前回の疫学情報が更新された後、ワクチン接種を受けていない外国人旅行者での確定患者の数は合計11人に増えました。彼らの住んでいる国に基づけば、フランス(1人)とオランダ(1人)、アルゼンチン(4人)、チリ(3人)、ルーマニア(1人)、スイス(1人)からでした。患者の滞在地は、後者から、リオデジャネイロ州Angra do Reis(アングラ・ドス・レイス)市llha Grandeで9人、サンパウロ州Mairiporã/Atibaiaで1人、ミナスジェライス州Brumadinhoで1人と報告されました。

これまでのところ、ネッタイシマカが感染の伝播に関わっていることは報告されていません。しかし、ブラジル保健省は、Evandro Chagas研究所(パラ州ベレン)によって行われた調査を通じて、2017年にミナスジェライス州ItuêtaとAlvarengaの2つの行政地区の農村部で捕獲したヒトスジシマカ(Aedes albopictus)から、黄熱ウイルスを検出したことを発表しました。これらの発見は重要で、さらなる調査、特に、感染伝播を媒介する能力を確認することの調査が必要とされています。

ブラジルでの動物の集団感染について、2017年7月1日から2018年3月13日までに、合計で4,847件の動物の集団感染が報告され、そのうち617件で黄熱(への感染)が確認されました。動物の集団感染は、サンパウロ州やリオデジャネイロ州などの大都市に非常に近い地域で発生しています。

動物の集団感染が多かった州はサンパウロ州です。エスピリト・サント州、マッソグロッソ州、ミナスジェライス州、リオデジャネイロ州、Tocantins(トカンティンス州)でも確認されました。

地理的には、動物の集団感染がサンパウロ州の南西に向かって移動しています。この動物の集団感染の波が10年前と同じパターンを繰り返し、この動物の集団感染がブラジル南東部と南部で発生し、続いてアルゼンチンやパラグアイに波及するならば、今回の動物の集団感染の波は、再び隣国に到達することになります。しかし、秋に予想される温度の変化は、これから6月までの間の地理的な拡大のスピードを弱めるかもしれません。

ペルーでは、2018年第1週から第9週までに、黄熱患者22人が報告されました。そのうちの8人は、検査で感染が確認されました。残る14人は、検査の途中です。この数値は、2017年の同じ時期に報告された数値(Amazonas[アマソナス]県で2人とAyacucho[アヤクーチョ])県で3人の計5人)よりも多くなっています。

2018年の患者の多くは、Ucayali(ウカヤリ)県Coronel Portillo(コロネル・ポルティージョ)郡Calleria地区Pucallpaの街の住民です。この地域は、黄熱(感染)のリスクがあると考えられています。

各国の担当当局へのアドバイス

ワクチンを接種していない旅行者に黄熱の確定患者が発生していることは、加盟国が国際旅行者に向けた勧告の普及を強化する必要性を強く示しています。現在の流行期間にも続く動物の集団感染の発生は、ワクチンを接種していない人への感染伝播のリスクが続いていることを示しています。そのため、PAHO/WHOは、加盟国に対し、黄熱ワクチンの接種が推奨されている地域に向かう際に、(感染)リスクをもつ人々を最小限に留める取り組みと、情報を理解しワクチンを受ける旅行者を維持するために必要となる行動を取らせることの継続を要請しています。

2018年1月16日に、WHOは「国際旅行者に向けて-ブラジルでの現在の発生状況に関連する国際旅行者に向けた黄熱ワクチン接種の勧告の最新情報」と題した最新情報を掲載しました。

黄熱ワクチンの接種について

黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80~100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。

入手できるワクチンの量には限りがあり、合理的な使用を念頭に置く必要があるため、PAHO/WHOは、次のことを繰り返し各国の保健当局に勧告しています。
1)リスクのある地域では、行政地区のレベルでこの地域に暮らす住民のワクチン接種率が少なくとも95%を維持していることの評価を実施すること
2)現在、感染の流行が発生していない国では、予防接種キャンペーンを行うべきではありません。感染の可能性の高い人々にワクチン使用の優先順位が与えられるべきであり、再ワクチン接種を避けるべきです。
3)感染が常在する地域へ向かう全ての旅行者は、少なくとも旅行の10日前に、確実に予防接種を行うべきです。
4)ワクチンが利用できる状況に応じて、加盟国は感染の流行に対処するために小規模の備蓄をして置かなければなりません。
5)十分にワクチンが入手できる状況になるまでは、感染が常在していない地域での小児に対する定期予防接種は延期してください。(このとき)入手できる状況になったら、ワクチン接種スケジュールを完了するために、追加の(接種)キャンペーンを実施してください。

注意事項

ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に罹患したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。
•予防接種を必要とするCD4陽性細胞数≧200 cells / mm3で、症状のないHIV感染者には、ワクチン接種の求めに応じることができます。
•妊娠女性は、緊急性のある状況で予防接種を受けるべきであり、保健当局の勧告に従う必要があります。
•乳児にワクチンのウイルスを伝播させるリスク(黄熱は生ワクチンである)は、母乳育児中の女性での予防接種の効果よりも低いため、感染が常在する地域で暮らす授乳中の女性にも予防接種は推奨されます。
•黄熱が流行している地域への旅行を予定する妊娠中または授乳中の女性に対しては、旅行を延期するか、避けるかを検討し、それができないときには予防接種が推奨されます。彼女らには、予防接種の潜在的なリスクとベネフィットについてのアドバイスを受け、情報に基づいて意志決定される必要があります。母乳育児によるメリット(受益)は、代替の栄養食品によるものよりも優れています。

次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
•免疫不全の病態にある人(胸腺疾患患者、症候性のHIV感染者、悪性新生物の治療中の患者、免疫抑制治療中の患者、免疫を調節治療している患者、最近の臓器移植した患者、現在または最近の放射線療法を受けた患者など)。
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対し重度のアレルギーのある人

出典