2018年03月23日更新 この10年での結核の減少-WHO西太平洋地域

3月24日の世界結核デーに合わせて、WHO西太平洋地域事務所からも、結核についてユニバーサル・ヘルス・ カバレッジ(UHC;社会の構成員全員に特定の福利厚生パッケージを提供することで、医療費リスクから保護し、医療の利用環境を改善し、保健状態の向上を図ることを目的とした制度)とともに、取り組みが述べられています。この地域では、まだまだ、結核は身近に存在する病気です。

記事の内容

WHO西太平洋地域における最新の推定では、この10年間に、結核の発生率が14%減少しました。それでも、毎年180万人が新たに(結核に)感染しています。世界結核デーに合わせて、WHOは、すべての人々に、ユニバーサル・ヘルス・ カバレッジ(UHC)の一環として、結核の検査と治療への利用環境を整備するように、各国政府に要請しています。

「この地域での結核の(感染)率は低下してきています。しかし、それは、十分に速いものではありません。」「この感染症を完全に終息させるという目標達成のためには、さらに多くの取り組みをしていかなければなりません。」と、WHO西太平洋地域・事務局長Shin Young-soo博士は述べています。

この地域では結核での死亡率(2016年に人口10万人あたり5人)が、世界の平均(10万人あたり17人)よりもかなり低くなっています。この地域では新たな患者の90%以上が治療に成功しています。しかし、薬剤への耐性をもつ結核への懸念は残されています。

WHOの結核の終息に向けた対策では、結核での死亡者を95%低下させ、2015年から2035年までに。新たな患者を90%減少させることを、各国に呼びかけています。この戦略における2020年の暫定目標を達成するには、西太平洋地域での結核発生の低下率を現在の2%から年間4-5%に加速させなければなりません。

結核患者の4人に1人は、公衆衛生上のプログラムを通しての治療を受けていません。取り組みでは、この患者たちが私的な体制での有効な治療を受けているか、全く治療を受けていないかの状況であることへの理解が必要です。

結核とは、どのような病気なのか?

結核は、世界で10大死亡原因の1つです。肺結核の患者は、咳、くしゃみ、飛散する唾液などで感染を拡げることができます。結核菌は、空気中に最大6時間放置されても感染力を保つことができます。そのため、人が密集した地域では、特に感染が発生しやすくなります。

症状には、持続する咳、血痰、発熱、悪寒、体重減少などが現れます。この病気は、特にHIV感染症や糖尿病など、他にの免疫系が低下するなどの健康問題を抱える人では、破滅的となることがあります。栄養失調の人、喫煙や飲酒をする人、大気汚染に曝されている人でも、結核のリスクは増加します。

発症当初、感染しても軽度の症状しか自覚することがなく、感染に気付かない人もいます。また、ある人たちは、利便性や費用の理由から(医療)施設での治療を利用しようとはしません。未治療の結核患者は、1年で15人に(結核を)感染させることができます。

「結核は非常に感染力が高いですが、一方で、予防も完全な治療もできます。」「その(対称的な)ことが、結核という病気の衝撃を悲劇的なものにしています。」とShin博士は語ります。

貧困による病気

さらに悲惨なことは、(治療に)最も余裕のない人が結核に感染することが多いという現実です。95%を超える世界の結核患者と死亡者が発展途上国で発生しており、アジアでの2016年の統計では新規の患者の45%を占めています。

西太平洋地域のいくつかの国では、25%を超える家の所得収入が治療に必要となり、60%の結核患者とその家族が壊滅的な治療費に直面しています。財政の負担は、入院や薬などの費用だけではありません。通院や治療を受けるための停泊、治療中の収入の損失など、医療以外の費用もあります。結核の終息に向けた戦略の目標では、結核によって壊滅的な治療費に直面する家族を2020年までになくすべきとされています。

WHOは、ユニバーサル・ヘルス・ カバレッジ(UHC)の普及を加速させ、すべての人々が財政的な苦労なくに、必要なときに必要な場所で良質の保健医療サービスを利用できる環境を整備するように、各国政府に要請しています。医療費やその他の問題を減らしていければ、結核の感染者が早期に治療を受けられる可能性が高まります。その結果、患者たちは、より速く回復し、病気を拡げる機会が減り、健康で生産的な生活を再開することが可能になります。

「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジは、結核の(感染)率の大幅な低下に寄与するとともに、家族が貧困に巻き込まれることのないように支援しています。各国政府は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの投資が、実際には、長期的な運営面でお金を節約できるということを認識し始めています。」とShin博士は説明します。

新しい技術や制度をより早く普及させながら既存サービスの適用範囲の拡大させることに加えて、この地域における結核の終息には、診断、治療、予防接種、医療支援の提供における先進的な取り組みが必要です。

WHOは、(社会的に)高いレベルでの公約や健康以外の分野が関係する手法も行いながら、結核のすべての決定要因に取り組み続けることを呼びかけています。

「このような歩みを進めることで、私たちは、死亡者ゼロ、病気ゼロ、結核に悩む者ゼロという構想の実現に、いままで以上に近づいていけます。」とShin氏は強く語っています。

出典

WPRO.Media Centre. 23 March 2018
TB down in past decade; universal health coverage key to faster progress
http://www.wpro.who.int/mediacentre/releases/2018/20180323/en/