2018年03月27日更新 季節性インフルエンザA(H1N2)への感染-オランダ

2018年3月23日にWHOから公表された情報によりますと、オランダの国際保健規則(IHR)国家担当者から、新しい季節性のリアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)、インフルエンザA(H1N2)患者1人が報告されました。

報告の詳細

2018年3月20日にオランダの国際保健規則(IHR)国家担当者から、新たな季節性のリアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)インフルエンザA(H1N2)の患者1人が報告されました。このウイルスは、オランダでのインフルエンザ様疾患や急性呼吸器感染症などを定期に行うインフルエンザ定点調査の中で発見されました。患者は2歳に満たない子どもで、2018年3月初旬に発症しました。患者は、一般開業医によって診察され、入院の必要はなく、完全に回復しました。

この患者を取り扱った開業医は、インフルエンザ定点調査ネットワークに参加していました。子どもに付きそう親からの承諾を得て、ウイルスを検出するために鼻腔と咽頭からスワブ検体を採取しました。 3月18日には、ロッテルダム・エラスムス大学医療センターとBilthoven(ビルトホーフェン)国立公衆衛生環境研究所(RIVM)の協力を得て、オランダ国立新型インフルエンザセンター(NIC)が、患者のインフルエンザA(H1N2)ウイルスへの感染がRT-PCR法検査によって確認されたと報告しました。サンガー法による赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の配列決定と全遺伝子の配列決定により、ウイルスは現在流行している季節性インフルエンザ・ウイルスの亜型A (H1N1)pdm09(赤血球凝集素[HA]と非構造[NS]タンパク質遺伝子)とA(H3N2)(残りの遺伝子)から成る季節性インフルエンザA(H1N2)ウイルスのリアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)であることが判りました。

この患者は、海外旅行はしていません。インフルエンザの予防接種を受けておらず、インフルエンザの抗ウイルス剤を使用していませんでした。基礎疾患もありませんでした。

さらに調査では、この患者が発症する2週間前に、両親が(主に)感染性胃腸炎を発現していたことが明らかになりました。(このとき)検査は行われませんでした。接触者への調査は、この子どもが病気を発症する前に訪れていたデイ・ケア・センターにも拡大されました。病気の発症後、この患者はデイ・ケアを訪れてはいませんでした。ProMEDの記事によれば、(対象が)子どものデイ・ケアに拡大された接触者調査では、どのような実際の症状も報告されませんでした。

過去にも、2000年から2003年にかけて季節性A(H1N1)とA(H3N2)のリアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)A(H1N2)が発見されたことがあります。しかし、遺伝子配列は、今回のウイルスの配列[HAは季節性A(H1N1)ウイルスに由来し、他の7つの遺伝子は季節性A(H3N2)ウイルスに由来する]とは異なっていました。

公衆衛生上の取り組み

・最初に報告された患者が生活する地域では、検査での監視活動を強化し、インフルエンザAウイルス陽性の検体における亜型の配列(組み合わせ)を調べていく必要があります。
・定点調査で確認されたすべてのインフルエンザAウイルスおよび定点調査以外(病院および周辺検査施設)から国立インフルエンザ・センターに送られてきたウイルスでは、HAおよびNAのサブタイプ(亜型)を調べています。(これまでに)他に類似のウイルスの検出は報告されていません。また、患者が住む地域周辺の定点調査以外(病院および周辺検査施設)からのインフルエンザAウイルス陽性検体は、サブタイプ(亜型)の特定のために国立インフルエンザ・センターに送られています。
・リアソータントA(結合変異ウイルス)/Netherlands / 10407/2018 A(H1N2)の全ゲノム(遺伝子配列)は、既に、すべてのインフルエンザ情報共有の国際推進機構 (Global Initiative on Sharing All Influenza Data;GISAID]のデータ・ベースにアップ・ロードされています。

WHOのリスク評価

特異な遺伝子配列をもつ季節性リアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)A(H1N2)の人への感染が報告されたのは、これが初めてです。患者は比較的軽い症状で、入院を必要とせず、完全に回復しています。

この季節性リアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)A(H1N2)は、米国で報告患者で発見されたインフルエンザの変異ウイルス[A(H1N1)変異、A(H1N2)変異、A(H3N2)変異](この遺伝子はブタ・インフルエンザ・ウイルス由来)とも異なっていることに、注目することは重要です。

現在、オランダは、流行期の警戒レベルを14週も上回り、極めて長い季節性インフルエンザの流行に直面しています。過去20年にわたり、インフルエンザの流行期が続くのは平均9週間でした。今季はインフルエンザB山形系統ウイルスが優勢でしたが、2018年3月以降はインフルエンザA(H1N1)pdm09とA(H3N2)の検出が徐々に増えています。

WHOは、リアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)のすべての遺伝子配列が流行している季節性ウイルスを起源とするために、このウイルスがもつリスクは、現在流行している季節性インフルエンザ・ウイルスがもつリスクに匹敵するものと評価しています。この(ウイルスの)ヘマグルチニン(HA)と非構造(NS)の遺伝子は、最近流行している季節性A(H1N1)pdm09ウイルスの遺伝子に非常によく似ており、残りの6遺伝子は最近流行しているA(H3N2)ウイルスの遺伝子とよく似ています。さらなる季節性リアソータント・ウイルス(結合変異ウイルス)A(H1N2)の特性については、現在、(調査を)進めている状況です。

WHOからのアドバイス

この患者によって、現在WHOが勧告している公衆衛生上の対策と季節性インフルエンザの調査について変更することはありません。

WHOは、国立インフルエンザ・センター(NIC)を通して、WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)との間で情報交換やウイルス(検体の)交換するオランダのインフルエンザ定点調査体制やその積極的な協力体制に応えています。(また)WHOは、検査結果の詳細な調査を適切に当てはめられるようにGISRSにも知らせています。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 23 March 2018
Human infection with a seasonal reassortant A(H1N2)influenza virus- Netherlands
http://www.who.int/csr/don/23-march-2018-seasonal-reassortant-ah1n2-netherlands/en/