2018年04月16日更新 コレラの発生- コンゴ民主共和国

アフリカにおける感染症の発生状況の週報[第14週(3月31日-4月6日)]が公表されました。ここでは、昨年7月にGrade 3(最も深刻な事態)の事態として報告されたコンゴ民主共和国のコレラの発生状況が、現在もGrade 3の状況のまま続いていることを取り上げます。

コレラの発生状況

コンゴ民主共和国(DRC)における毎週のコレラ発生数は、2017年第39週を流行のピークとして、(これ以降は)減少傾向が続いています。2018年第12週(2018年3月25日までの週)におけるコンゴ民主共和国でのコレラ発生は、国内26州のうちの13州から報告され、新たな疑い患者が497人(死亡者10人を含む;致死率2%)でした。2017年第23週以降、毎週の発生数が500人を下回ったのは、2回目となります。新たな患者の大半(70%)が、Maidombé(マインドンベ州:84人)、North Kivu(北キヴ州:77人)、Equateur(赤道州:73人)、South Kivu(南キヴ州:58人)、Kongo Central(コンゴ中央州:56人)の5州から報告されました。

2017年第1週に発生が始まってから、2018年第12週までに、死亡者1,357人(致死率2.2%)を含め、疑い患者62,815人が全国から通報されました。(コレラが)常在する地域(北キヴ州、南キヴ州、Haut-Lomami(上ロマミ州)、Tanganyika(タンガニーカ州))での患者発生数は減少していますが、その他の州(Ituri(イトゥリ州)、Kasaï(カサイ州)、コンゴ中央州、Maniema(マニエマ州)およびタンガニーカ州[原文どおりに記載])から報告される患者数は、わずかに増加しています。

Kinshasa(キンシャサ州)では、2018年第3週に始まった減少傾向が続き、第12週に疑い患者26人(死亡者0人)であったのが、第13週(2018年4月1日までの週)に報告された新たな疑い患者は12人(死亡者0人)となりました。2017年第47週にキンシャサで感染の発生が始まって以降、2018年第13週の時点で、患者が合計で1,191人(死亡者43人;致死率3.3%)報告されました。Kasai Oriental(東カサイ州)では、Mbuji-Mayiの街に局在していたコレラ流行が、2018年第11週に流行のピークとなる110人に達した後、第13週には新たな疑い患者が20人までに減少傾向を示しました。2018年第7週に感染が発生してから第13週までに、Mbuji-Mayiでは、疑い患者400人(死亡者23人;致死率5.8%)が報告されていました。

公衆衛生上の取り組み

  • WHOは、キンシャサと、コンゴ川およびMbuji-Mayiに隣接して感染が発生している地域に沿って、患者の調査、精力的な患者の発見、データの管理、(活動の)調整にあたり、引き続き支援を行っています。
  • 早期警戒システム(EWARS)に基づいた研修が、2018年3月12~18日にかけてBandundu-ville(Kwilu:クウィル州)とGoma(北キヴ州)で、WHOによって実施されました。ここでは、Bandundu-villeの街で80人とGoma の街で40人、合計120人の医療保健関係者が研修を受けました。
  • 各地のMSF(ベルギー、スイス、スペイン)は、患者の管理への支援を続けています。
  • WHOは、コレラ治療センター(CTC)、キンシャサのコレラ治療病棟(CTU)1か所、BoloboのCTU 1か所、Mubji-MayiのCTU 2か所への支援を行っています。
  • WHOは、アフリカ公衆衛生緊急基金(APHEF)を通じて、地域社会レベルでWASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動の強化や(感染)リスク情報の普及、地域に密着した活動に取り組む保健省を支援しています。ここからの資金で、南キヴ州、北キヴ州、コンゴ中央州、さらにはコンゴ川沿いで新たに感染が発生した街(Bolobo、Yumbi, Kuamuth、Lisala)での活動が支援されています。
  • Mbuji-Mayiの街では、国際赤十字委員会(ICRC)とNGO Solidarité(ユニセフが支援する支援組織)がWASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動を支援しています。
  • コンゴ川沿いに位置するYumbi島では、ワクチン接種キャンペーンの準備が進められています。現在、この国では、経口コレラ・ワクチン(OCV)30,000回が準備されており、ワクチン接種に関する国際調整グループ(ICG)に100,000回分の追加要請が提出されています。

発生状況への認識

コンゴ民主共和国でのコレラ流行は2015年年末から続いており、1994年以降、この国で起きたコレラ流行でも最も深刻なものと考えられています。2017年には、全国で患者54,783人と死亡者1,169人(死亡率2.1%)の報告がありました。地域社会のレベルでWASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動が強化されたことで、(コレラが)常在している地域では新たな患者(の発生)が大幅に減少していますが、コンゴ川沿いのいくつもの街では懸念が残されており、大都市キンシャサでは(感染の)再興を防ぐために、引き続き注意を払う必要があります。Itur(イトゥリ州)では、隣国ウガンダから数千人の難民を含む人々の移動で国際的な集団間の緊張に直面しており、コレラ対策は早急に強化される必要があります。コンゴ川沿いのいくつかの島で計画されているコレラ・ワクチンの接種キャンペーンが、イトゥリ州に拡大されることが必要となりました。コンゴ民主共和国は、400万人を超える国内避難民と60万人の難民を抱え、レベル3(最高レベル)の複雑な人道上の緊急事態を助長するような長い経済の低迷と政治の混乱を抱えています。現在の流行への有効な対策を進めるには、この国の人的・物的資源と能力は限られています。

出典

AFRO/WHO. Outbreaks and emergencies updates, Programmes. 6 April 2018
Weekly Bulletin on outbreaks and other emergencies. P.5. Week 14: 31 March - 6 April 2018
http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/272343/OEW14-310306042018.pdf[PDF形式:6,585KB]