伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型-コンゴ民主共和国

Disease outbreak news(WHO)

2018年7月10日

伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型-コンゴ民主共和国

コンゴ民主共和国では、急性弛緩性麻痺症例において3種類の異なる伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)によるアウトブレイクが確認されています。2018年2月、コンゴ民主共和国政府はcVDPV2を国家公衆衛生の緊急事態と宣言しました。

2017年6月にコンゴ民主共和国南東部ハートロマミ(Haut Lomami)州から最初に検出され報告されたcVDPV2株は、2017年後半および2018年初頭にタンガニカ(Tanganyika)州およびハートカタンガ(Haut Katanga)州にそれぞれ広がりました。2018年6月、ウガンダとの国境に近いコンゴ民主共和国北東部イトゥリ(Ituri)州において、2018年5月5日に麻痺が発症した急性弛緩性麻痺症例から、同じウイルス株が確認されました。調査は進行中です。WHOは、国レベルでの全般的な公衆衛生上のリスクが非常に高いと評価し、また、人口移動の知られている国際的な国境に近いイツリ州において、急性弛緩性麻痺の事例が近年検出されたことから、国際的に伝播するリスクが高いと評価しました。

2017年、コンゴ民主共和国中西部マニエマ(Maniema)州では、別のcVDPV2アウトブレイクが発生し、2症例が確認されました。最近の症例の麻痺発症日は2017年4月18日でした。2018年においては、このウイルス株に関して新たな症例は発見されておらず、このウイルス株が地理的にさらに広がっているという証拠はありません。

最近、確認された3番目のcVDPV2アウトブレイクのウイルスは、モンガラ(Mongala)州で発見され、ヤモンジリ(Yamongili)保健区の急性弛緩性麻痺症例から分離されました。麻痺の発症日は2018年4月26日でした。この系統の伝播は、二人の健康な接触者から得られた糞便検体から、同じ株が分離されたことで確認されました。

図1.コンゴ民主共和国における2018年1月1日から6月29日までのcVDPV2症例の分布

公衆衛生上の対応

WHOとパートナーは、国際的に合意されたアウトブレイク対応協定に沿って、1価経口ポリオワクチン2型(mOPV2)の使用を含めて、これらのアウトブレイクに対応しています。しかし、感染のハイリスク集団がワクチン未接種の状態であるというような対策を遂行する上での障害は、これらの協定の完全なる実施を妨げ続けており、これまでの対応では、アウトブレイクを制御できておらず、拡大も阻止できていません。

ウイルス株の一つがイトゥリ州へ拡大したことと、モンガラ州で新たなウイルス株が確認されたことを受けて、3つのすべてのウイルス株に対するアウトブレイク対応の地理的範囲が再評価されつつあります。

周辺国ではサーベイランスや予防接種が強化されています。

2018年2月、コンゴ民主共和国政府はcVDPV2を国家公衆衛生の緊急事態と宣言しました。アウトブレイク対応における未達成の部分は、緊急に対処されなければなりません。

WHOのリスクアセスメント

WHOは、国家レベルでの公衆衛生リスクが非常に高く、国際的な拡大のリスクが非常に高いと評価しました。このリスクは、コンゴ民主共和国の被影響地域とウガンダ、中央アフリカ共和国、南スーダンとの間における既存の人口移動と、ウィルスの伝播の強さの増加に関連する雨季の到来とによって、拡大されます。

cVDPV2sの検出は、ポリオウイルスの伝播の影響のリスクを最小限に抑えるために、すべての地域で定期的な予防接種率を高いレベルに維持することの重要性を強調しています。これらの出来事はまた、ウイルスの感染力が低レベルであっても引き起こされるリスクを強調します。将来的に同様のアウトブレイクを防止するために被影響地域において十分なワクチン接種率を確保し、ウイルスの伝播を速やかに止めるために強力なアウトブレイク対応が必要です。WHOは、疫学的状況および実施されているアウトブレイク対応策を引き続き評価します。

WHOのアドバイス

すべての国、特にポリオ罹患国に頻繁に旅行や接触をしている国や地域では、いかなるどんな新しいウイルスであっても輸入を迅速に検出し迅速な対応を図るために、AFP症例のサーベイランスを強化することが重要です。すべての国、領域および地域では、新しいウイルスが導入される影響を最小限に抑えるために、地区レベルで均一に高い予防接種率を維持する必要があります。

WHOの国際旅行と健康(International Travel and Health)は、ポリオ被災地域へのすべての旅行者に対して、ポリオに対する予防接種が完全に行われることを推奨しています。住民や感染地域に4週間以上滞在する訪問者には、入国の4週間以内から12カ月までに(原文のまま)経口ポリオワクチンまたは不活性化ポリオワクチン(IPV)を追加投与する必要があります。国際保健規則(2005年)に基づいて召集された緊急委員会の助言に従って、公衆衛生緊急事態(PHEIC)とされているため、ポリオウイルスの国際的拡大を抑制する努力は続けられます。ポリオウイルス感染の影響を受ける国は、暫定的な勧告に従います。 PHEICの下で発行された暫定的勧告に従うために、ポリオウイルスに感染した国は国家公衆衛生上の緊急事態であると宣言し、すべての国際的な旅行者の予防接種を検討する必要があります。

WHOは、現時点でのcVDPV2アウトブレイクに関する利用可能な情報に基づいて、コンゴ民主共和国への渡航と貿易に関する制限を推奨していません。

出典

Circulating vaccine-derived poliovirus type 2 - Democratic Republic of the Congo

http://www.who.int/csr/don/10-july-2018-polio-drc/en/