コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病 - 近隣諸国における即時対応性と準備

Disease outbreak news(WHO) 2018年8月14日

2018年8月1日、コンゴ民主共和国の北キブ(North Kivu)州で新たなエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイク公式宣言に続いて、WHOは公式に迅速なリスク評価を実施し、このアウトブレイクに対する公衆衛生上のリスクが地域レベルで高いと決定しました。この評価は、800万人の住民を擁する北キブ州 が、この国で最も人口密度が高い州の1つであることを考慮に入れました。北キブ州は、他の4つの州、イトゥリ(Ituri)州、南キブ(South Kivu)州、マニエマ(Maniema)州およびツォポ(Tshopo)州、ウガンダおよびルワンダに隣接しています。 さらに、この地域は、100万人を超える国内避難民を抱え、近隣諸国との間で国境を越えて往来する率が高く、極度の治安悪化と増悪する人道危機を経験しています。

コンゴ民主共和国赤道州の前回のエボラウイルス病のアウトブレイク期間中の2018年5月5日には、WHOアフリカ地域事務所は9つの近隣諸国(アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワンダ、南スーダン、タンザニア、ザンビア、ウガンダ)を特定し、そこにはWHOの標準化されたチェックリストを使用して国の即時対応を評価し、パートナーと協力して国の緊急時対応計画を策定し開始する技術サポートを提供する目的で、準備支援チームが配備されました。

現在、北キブ州でのエボラウイルス病のアウトブレイクのために、アフリカ地域事務所は、コンゴ民主共和国に隣接する9カ国のうち4カ国(ブルンジ、ルワンダ、南スーダン、ウガンダ)を優先的に対策の即時対応性と準備を強化しています(図1)。これらの4つの国は、エボラウイルス病およびウイルス性出血熱(VHF)のアウトブレイクを管理する能力、および現在エボラウイルス病の症例を報告している地域への近接性に基づいて優先順位が付けられました。さらには、キンシャサ、マイ-ンドンベ(Mai-Ndombe)州、ツァパ(Tshuapa)州, ツォポ州, 南キブ州, イトゥリ州, バス-ウレ(Bas-Uele)州, サンクル州 と マニエマ州の各州では、即時対応が優先されました。この更新は、主に9の優先国のうちの4ヶ国に重点を置きます。

図1:強化された即時対応性と準備のために特定された国

WHOは、赤道州における以前のエボラウイルス病のアウトブレイク時に行われたように、これらの近隣諸国および他の近隣諸国にも準備支援チームを展開しています。 これらの派遣チームは、WHOチェックリストを使用して各国の準備状況を評価し、パートナーと協力して国の緊急時対応計画を策定し実施するための技術支援を国家に提供することを目的としています。 運用及び準備活動は、次のテーマ分野に焦点を当てます。

調整

  • WHOは、準備と即時対応のための活動を実施し拡大するために、国々を支援する保健と健康以外のパートナーのネットワークを確立しました。
  • 地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)はこれらの活動を引き続き支援しています。検査室、症例管理、サーベイランス、臨床管理、感染予防、管理、リスクコミュニケーションの専門家が要求され、系統的に配置されています。
  • 米国疾病予防管理センター(CDC)は、対応で働いているWHO本部チームを支援するため、ジュネーブに専門家を配属しました。国連児童基金(ユニセフ)と国際赤十字連盟(IFRC)は、ジュネーブのWHO本部チームと連絡をとる上級コーディネーターを配置しています。
  • WHOは緊急医療チームの専門家と協力してトレーニングを支援し、症例管理の即時対応を強化しています。
  • ウガンダでは、ポリオ感染阻止プログラムからの5つのチームが支援を提供するために再活用されました。
  • ブルンジはエボラウイルス病調整委員会を設置し、標準化されたWHOチェックリストに基づいてエボラウイルス病の活動を監視することを7つvの小委員会に委託しました。
  • ルワンダでは、準備活動を支援するために、エボラパートナーの調整フォーラムが設立されました。

サーベイランス

  • 対象となるすべての国では、監視の強化が行われており、ウイルス出血熱の警戒すべき症例と疑わしい症例の発見と調査が直ちに行われています。
  • ルワンダの全国電子早期警戒警報および対応(EWAR)システムは、疑わしいウイルス性出血熱症例を検出するために引き続き使用されています。

迅速対応チーム

  • 2018年7月、ウガンダの合同迅速対応チームは、協調、サーベイランス、リスクコミュニケーション、潜在的な症例の調査を訓練しました。 このトレーニングを受けたいくつかのチームは、2018年8月2日に、ウガンダの4つの高リスク地域、カバロレ(Kabarole)(フォート・ポータ(FortPortal))、カセセ(Kasese)、ントロコ(Ntoroko) 及び ブンディブギョ(Bundibugyo)に配属されました。
  • 8月10日までに、ウガンダ、南スーダン、ルワンダ、ブルンジの4つの優先国すべてに迅速対応チームが設置されました。ルワンダでは、多分野の迅速な対応トレーニングのための計画が策定中です。

入境ポイント(POEs)

  • コンゴ民主共和国の保健省は、北キブ州の18の国際入境(国境)ポイントにおける監視能力を強化しています。他の脆弱な州の入境ポイントでも同様の取り組みが行われます。 旅行者、移民、避難民のための30以上の新たな国内の接続地点が確認されました。 これらの地点で、手指衛生、旅行者のスクリーニング、警報の管理、リスクコミュニケーションを含む、同様のサーベイランス活動が進行中です。コンゴ民主共和国保健省はまた、難民通行センターや他の集会場でのサーベイランス活動を強化する予定です。
  • ブルンジ、中央アフリカ共和国、ルワンダ、南スーダン、ウガンダ、ザンビアなどの近隣諸国では、入境ポイントにおけるスクリーニングが特定され実施されています。

検査室

  • 最初の25の迅速診断検査がルワンダに送られました。 研究室の能力を強化するために、さらに50の迅速診断検査と他の資機材が送られます。
  • 4つの優先順位付けられた国のうち、ウガンダだけが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるエボラウイルス病および他のウイルス性出血熱の試験能力を有しています。残りの3カ国は、迅速診断検査を使用して試験する能力を持ち、サンプルをWHO参照検査室に送るための仕組みを設置しています。 しかし、2018年8月15日に米国疾病予防管理センターの2名の研究者がルワンダに到着し、実験室活動と準備のためにコンゴ民主共和国保健省を支援する予定です。
  • 南スーダンでは、WHOは生物安全性およびエボラウイルス病の診断検査に関する20名の医療検査スタッフを訓練し、GeneXpertRを使用したエボラウイルス病の検査のためのプローブも提供しています。

症例管理と感染予防管理

  • 症例管理と感染予防管理の専門家ネットワークは、コンゴ民主共和国の影響を受けていない州と周辺諸国における即時対応性と準備のための支援要請に対して注意を払っていました。
  • エボラウイルス病の症状を見分けるための英語(ウガンダとルワンダ)とフランス語(ルワンダとブルンジ)のポスターが、医療施設には用意されています。
  • WHOの新興感染症臨床評価と対応ネットワーク(EDCARN)のメンバーの思春期成人疾患統合管理-小児期疾患統合管理同盟(IMAI-IMCI)は、今年初め、ウガンダにおいて医療従事者のための臨床研修を開催しました。
  • 4つの優先順位付けされたすべての国は、疑わしい症例の隔離と治療に使用される医療施設を特定しました。

リスクコミュニケーション

  • 2018年6月時点で、32名のリスクコミュニケーションの担当者がウガンダで訓練を受け、追加のリスクコミュニケーション活動が開始されました。
  • ルワンダにおけるリスクコミュニケーションのメッセージは、全国のラジオやテレビ放送を通じて伝えられています。
  • 南スーダンでは、エボラウイルス病とリフトバレー熱のリスクコミュニケーション研修が計画されています。
  • 国連児童基金、赤十字および国際赤十字委員会(ICRC)は、コンゴ共和国および中央アフリカ共和国におけるリスクコミュニケーション、地域社会動員および感染予防、管理に投資してきました。

物流管理

  • ウガンダには、5つのウイルス性出血熱のキット、25の迅速診断検査、塩素、個人用保護具キット、58個のデジタル赤外線温度計が危険度の高い地域に事前に配備されています。
  • 個人用保護具キット、サーモフラッシュ(赤外線医療体温計)、および迅速診断検査は、疑わしい症例の準備のために、すべての周辺国で事前に配備されています。
  • 世界食糧計画(WFP)は、コンゴ共和国と中央アフリカ共和国の物流管理、輸送、食糧支援を行っています。

エボラウイルス病に対する即時対応性と準備のためのWHO地域戦略計画

前述の活動が、赤道州での以前のアウトブレイクに対応してすでに実施されている即時対応性と準備の活動に加えて行われています。今年の初め、WHOとパートナーは、国の省庁と協力して、活動を調整し、コンゴ民主共和国に接する国が確実に準備されるよう、9カ月(2018年6月-2019年2月)の戦略計画*1を策定しましたが、それは活動を連携させて、コンゴ民主共和国と国境を接する国々において、適時かつ効果的なリスク軽減、エボラウイルス病を疑われる症例を検出し、対応策を実施する準備を確実にすることを目的としています。WHO準備支援チームミッションの所見は、主要な課題と優先事項を特定することと国家エボラウイルス病緊急時対応計画の策定することに役立ちました。

保健省のリーダーシップのもと、国家予算、WHOおよびパートナーが提供する技術的および財政的支援をもって、準備活動はすでに9か国で実施されています。ブルンジ、ルワンダ、南スーダン、ウガンダは、現在のアウトブレイクのもたらす特定のリスクに対応して、改定作業が終了しつつある改定計画の下で優先度1の国に再分類されます。

WHOのアドバイス

保健省、WHO、およびパートナーは、コンゴ民主共和国でのアウトブレイクを制圧するための対応活動を強化しているように、近隣の州および国が、即時対応性と準備の活動を引き続き強化することが重要です。

WHOは、現在利用可能な情報に基づいて、コンゴ民主共和国への移動およびその取引を制限することに対して、引き続き反対しています。WHOは、必要に応じて、この事象に関連して旅行および貿易措置を監視および検証し続けています。

*1 コンゴ民主共和国近隣諸国におけるエボラウイルス病に対する即時対応性と準備のためのWHO地域戦略計画
http://www.who.int/csr/resources/publications/ebola/preparedness/WHO-regional-strategic-EVD-operational-readiness.pdf?ua=1&ua=1

出典

Ebola virus disease in the Democratic Republic of the Congo - Operational readiness and preparedness in neighbouring countries Disease outbreak news 14 August 2018
http://www.who.int/csr/don/14-august-2018-ebola-drc/en