エボラウイルス病 コンゴ民主共和国(更新7)

Disease outbreak news: Update   2018年12月20日

12月18日現在、コンゴ民主共和国北東部の北キブ州とイトゥリ州でエボラウイルス病のアウトブレイクが続いています。
これまでに、326人の死亡を含む549人のエボラウイルス病患者(確定501人、ほぼ確実48人)が報告されています。
10月中旬以降、毎週平均35人の新たな症例が報告され、過去3週間(2018年11月27日~12月18日)では、114人の新たな確定症例が報告されています。
これまでに、55人(確定53人、ほぼ確実2人)の医療従事者が感染しており、そのうち19人が死亡しました。

コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病のアウトブレイク

コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病のアウトブレイクへの対応は、依然として複雑で困難な課題であり続けています。消極的な姿勢のコミュニティがところどころ存在することと紛争環境が、一部の流行の影響を受けている地域での活動を阻害し続けています。進行している選挙期間中には、さらなる問題も予想され、それが政治的緊張の高まり、全体的な治安状況の悪化および暴力的な市民の不穏状態を招く可能性があるため、エボラへの取り組み作業に間接的な脅威を与えることになります。

これらの困難にもかかわらず、アウトブレイクの影響を受けた地域、特に最近数週間で症例の発生率が全般的に減少しているベニ(Beni)で、有意な進展が見られました。ベニでの、そして以前のマンギーナ(Mangina)市でのアウトブレイクの抑制は、地域社会の参加を得て取り組み活動を拡大し実施することができる場合に、アウトブレイクをどのように抑制できるかを示しています。保健省(MoH)、世界保健機関(WHO)、およびパートナーが、カトワ(Katwa)、ビュトンボ(Butembo)、およびその他の新たな感染者集団で同様の進展を目指して取り組んでいる一方で、地理学上の各地域から生じる特有の問題を認識しなければなりません。アウトブレイクに対する疫学上の介入の導入、受容および介入の結果としての影響には時間がかかります。取り組みチームは、証拠に基づいた公衆衛生対策および革新的なツールの適用を調整し、拡大し続けています。

現在、北キブ州とイトゥリ州の14の保健区域をカバーする地理的に離れた地域でアウトブレイクが続いています。過去21日間(2018年11月27日 - 2018年12月18日)で、114人の新たな確定症例が報告されています。カトワ(31)、ベニ(18)、コマンダ(Komanda)(17)、ビュトンボ(14)、マバラコ(Mabalako)(14)、カルングタ(Kalunguta) (5)、オイチャ(Oicha)(4)、ヴホヴィ(Vuhovi)(3)、キョンド(Kyondo)(3)、ビエナ(Biena)(1)、マンディマ(Mandima)(1)、マセレカ(Masereka)(1)、ムシエネネ(Musienene)(1)、およびムタワンガ(Mutawanga)(1)。感染者集団が8月中旬に検出されて以来、チョミア(Tchomia) 保健区域だけが新しい症例を確認していません。これらの地域内でのアウトブレイクの増幅は、社会/地域内での感染や民間および公的な保健センター内での感染の組み合わせによって促進されてきました。先週、新しく2人の医療従事者の感染が報告されましたが、これまでに55人(確定53人、ほぼ確実2人)の医療従事者が感染しており、そのうち19人が死亡しました。

12月18日現在、北キブ州の12保健区域とイトゥリ州の3保健区域で、326人の死亡(致死率59%)を含む549人の累積エボラウイルス病患者(確定501人とほぼ確実48人)が報告されています(図1)。症例発生率の全体的な傾向(図2)は、これらの地域でアウトブレイクが続いていることを反映しており、10月中旬以降、毎週平均35の新たな症例が報告されています。

エボラ治療センターからの生存者の退院によって、小さいながらも意味のある勝利が続いており、エボラ治療センターへのよりタイムリーな入院と支持療法とエボラ治療薬の併用で助けられています。先週、18人の新たな患者がエボラ治療センターから退院しました。全体で、193人の患者がこれまでに回復しました。

上述のエボラウイルス感染の影響を受けている地域以外のすべての信頼できる警報は、これまでエボラウイルス病の検査は陰性でしたが、北キブ州およびイトゥリ州内、コンゴ民主共和国の他の州および近隣諸国へのさらなる地理的拡散の危険性は依然として非常に高いままです。これらの地域における準備および運用準備活動は、このリスクを軽減し、潜在的なケースを迅速に検出して対応するために、引き続き拡大していく必要があります。

図1:コンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健区域別の確定およびほぼ確実なエボラウイルス病の症例、2018年12月18日時点のデータ(n = 549)


図2:2018年12月18日時点までに発症した週ごとのエボラウイルス確定症例とほぼ確実例のデータ(n=549)*


*ここ数週間のデータは症例の確定と報告、継続中のデータクリーニングにおける遅延の影響下にあります。この期間中の傾向は慎重に解釈する必要があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省は、WHOとパートナーの支援を得て、対応策を強化し続けています。優先事項には、調整、サーベイランス、接触者の追跡、検査室の能力、感染予防と管理、患者の臨床管理、予防接種、リスクコミュニケーションと地域社会の関与、心理社会的支援、安全で尊厳のある葬儀(SDB)、近隣の州や国々における境界を越えたサーベイランスおよび準備活動が含まれます。医療施設、特に出産前検診を行う診療所での感染予防と管理の実践はさらに強化される必要があります。

WHOおよびパートナーによる公衆衛生の取り組みに関する詳細情報については、WHOアフリカ地域事務所によって公表された最新の状況報告を参照してください。
エボラ状況報告:コンゴ民主共和国

WHOのリスク評価

このエボラウイルス病のアウトブレイクは、ウガンダ、ルワンダ、南スーダンと国境を接するコンゴ民主共和国の北東地域に影響を及ぼしています。国および地域レベルでのエボラウイルス病感染の潜在的な危険因子にはアウトブレイクが影響している地域とコンゴ民主共和国の他の地域および近隣の国々との間の人の往来、国内避難民などがあります。コンゴ民主共和国は他の感染症の流行(例えばコレラ、ワクチン由来のポリオ、マラリア)と長期的な人道的危機を同時に経験しています。さらに、北キブ州とイトゥリ州の治安状況により、対応活動の実施が制限されることがあります。 WHOのアウトブレイクに対するリスク評価は現在、国および地域レベルで非常に高いです。世界的なリスクレベルは低いままです。 WHOは現在入手可能な情報に基づいて、コンゴ民主共和国への旅行や貿易についていかなる制限を行わないようアドバイスを続けています。

国や地域的な拡大の危険性が非常に高いので、近隣の州や国々がサーベイランスと準備活動を強化することが重要です。国際保健規則(IHR 2005)緊急委員会は、これらの準備およびサーベイランス活動を強化しなければ、状況を悪化させ、さらなる拡大につながると助言しています。 WHOは近隣の国々やパートナーと協力して、保健当局が警戒し、対応する準備が整っていることを確実にしています。

WHOからのアドバイス

国際交通:現在利用可能な情報に基づいて、WHOはコンゴ民主共和国への旅行および貿易のいかなる制限をも行わないよう助言しています。現在、エボラウイルスから人々を守るためのワクチンは認可されていません。したがって、エボラワクチン接種証明書の要件は、国境を越えた移動やコンゴ民主共和国を離れる乗客のためのビザの発給を制限するための合理的な基盤ではありません。 WHOは引き続き、この事象に関連して旅行および貿易措置を厳密に監視し、もし必要であれば検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際往来を著しく妨げる旅行措置を実施した国はありません。旅行者は旅行前に医師の助言を受け、良好な衛生健康法を実践すべきです。

(註1)進行中の再分類、遡及調査、および検査結果の入手可能性により、症例数が変更されることがあります。

出典

Ebola virus disease Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update   20 December 2018
https://www.who.int/csr/don/20-december-2018-ebola-drc/en/