黄熱 - ナイジェリア

Disease outbreak news:更新 2019年1月9日

2018年11月22日、世界保健機関(WHO)はナイジェリアのエド州における一群の黄熱疑い症例と死亡例について通知を受けました。エド州はラゴスから南東ナイジェリアまでの密集した人口移動軸上にあり、ラゴスから400km以内に位置しています。エド州はラッサ熱の流行地域としても知られていて、当初はラッサ熱がアウトブレイクを引き起こしたと疑われていました。2018年9月22日から12月31日までの間に、合計で146人の疑い例、陽性と推定される42人、および死亡例26人(推定致命率:18%)を含む確定例32人が、エド州の18中15の地方行政区(LGA)で報告されています。(図1)

血液検体は122例から得られ、検査室の診断として送られました。42(34%)のサンプルが国内のIgM血清学に基づいて推定陽性であり、確認のために地域レファランス検査機関のダカールのパスツール研究所(IPD)に送付されました。32(76%)がプラーク減少中和試験(PRNT)またはリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって確認されました。男性が大部分の症例(146人中108人、74%)を代表し、最も罹患した年齢層は10~19歳であり48人の症例(33%)、続いて20~29歳の年齢層(25%)で、36人の症例となっています。当初、影響を受けた地方行政区は農村部でしたが、2018年11月末以降、3つの都市部の地方行政区から疑われる症例が報告されています。人口150万人の密集した州都ベニン市を含むオレド(Oredo)地方行政区で、2つの推定陽性例と1つの確定例が報告されています。

アウトブレイク発生時には、エド州における集団免疫は非常に低かったです(ワクチン接種率は、定期予防接種登録データのみに基づいて2018年に50%未満と推定されました。)。エド州は13の地方行政区で7日間の黄熱対策予防接種キャンペーンを実施し、集団免疫力を急速に高め、黄熱感染を防ぎました。 2018年12月31日現在、147万人が予防接種を受けています。

昆虫学的研究により、都市環境におけるアルボウイルス病の急速な増幅の原因となる蚊種であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)を含む、媒介能力のある媒介動物(ベクター)の高い指数が明らかにされています。土地利用の慣習、すなわち住居の近くでの耕作は、この状況での黄熱の拡大をさらに悪化させる可能性があります。

2017年9月、ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)がクワラ(Kwara)州で黄熱の確定症例をWHOに知らせたとき以来、ナイジェリアは黄熱の引き続くアウトブレイクに対応してきました。2017年9月15日、ナイジェリアは国際保健規則(IHR 2005)を介して、WHOに正式に通知しました。それ以来、2018年12月30日現在、237検体が国内の検査でIgM陽性でした。 ダカールのパスツール研究所により82例(13例の死亡を含む)が確定されました。これらの症例は14州の27の地方自治体地域から報告され、6つの州の特定の地方行政区で対応キャンペーンを実施しました。

ナイジェリアのエド州における現在の黄熱のアウトブレイクは規模および重症度において異常であり、一定の時間および場所における症例数は現在の全国的なアウトブレイクの状況において非常に高くなっています。 12月から1月の休日のために他の州や国から多くの旅行者が州に入る時期に、季節的なアウトブレイクのタイミングが潜在的な拡散のリスクを増加させます。

図1:ナイジェリアのエド州でのアウトブレイクにおける黄熱の確定例および疑い例、2018年12月31日時点のデータ(n = 146)


 

公衆衛生上の取り組み

アウトブレイクへの対応は、複数機関、複数パートナーの事例管理システム(IMS)を通じて調整されています。ナイジェリア疾病管理センターにおいてアウトブレイクを監視するために、国レベルの緊急事態管理センター(EOC)が活性化されました。迅速対応チームは、現在続いているアウトブレイクの調査と対応においてエド州を支援し続けています。黄熱サーベイランスは強化されており、影響を受ける地方行政区および近隣州で積極的な症例発見が継続中です。検査室の能力を強化するために、黄熱検査室ネットワークへの監視訪問が進行中です。

WHOの国事務所と州庁は、アウトブレイク開始以来、黄熱のアウトブレイクを積極的に監視し、対応してきました。 2018年12月15日から、WHOから3人の黄熱専門家(WHOアフリカ地域事務所とWHO本部)がこの事象の調査、さらなる拡大のリスクの評価、および予防接種キャンペーンの実施の支援などの活動を支援するために派遣されました。昆虫学的調査は、国立アルボウイルス研究所(National Arbovirus Research Institute(NARI))の昆虫学者によって、アナンブラ(Anambra)、ベヌエ(Benue)、エキティ(Ekiti)、カノ(Kano)、カツィナ(Katsina)、ケビ(Kebbi)、クワラ(Kwara)、リバーズ(Rivers)、ザンファラ(Zamfara)の各州で行われました。地域の状況に合わせた媒介動物駆除戦略は、WHOの地域および世界規模の媒介動物駆除の専門家の支援を受けて開発されています。

2004年に黄熱ワクチンの定期接種がナイジェリアの拡大予防接種プログラム(EPI)に導入されましたが、現在のアウトブレイクの影響を受けた地域における住民全体の免疫は、依然として集団免疫の閾値を下回ったままです。 2017年以降、国内で予防的なワクチン接種およびアウトブレイクに対応した集団予防接種キャンペーンが実施されてきました(~3300万回)。今後3年間で12州にワクチン接種するというワクチン同盟であるGAVIに提案が提出されました(~2300万回)。

GAVIワクチン同盟によって資金提供されたワクチン供給に関する国際調整グループ(ICG)は、310万回分の黄熱ワクチンの放出を承認しました。国は12月18日にエド州で大規模なアウトブレイク対応の黄熱病ワクチン接種キャンペーンを始めました。そして、最初に休日の前にタイムリーな接種キャンペーンを容易にするために供出された国内貯蔵ワクチンを使いました。


WHOのリスク評価

黄熱は感染した蚊によって伝播する急性のウイルス性出血性疾患であり、急速に拡大して公衆衛生に深刻な影響を与える可能性があります。特定の治療法はありませんが、この病気は一生分の免疫を提供する黄熱ワクチンの単回投与で予防可能です。脱水症、呼吸不全、発熱を治療する支持療法、および合併する細菌感染症に対する抗生物質治療が推奨されます。

黄熱のアウトブレイクは2017年9月からナイジェリアで発生しています。症例は36州および連邦首都地区から報告されています。 ウアンムウンド(Uhunmwonde)地方行政区がエド州における黄熱アウトブレイクの震源地であるとのWHOの地域参照検査室による最近の確認は、ナイジェリアでの前例のないアウトブレイクを表しています。エド州の状況が急速に進展していることを考えると、国レベルのリスクは以下の理由により高いと評価されています。すなわち、エド州における推定致死率(33%)、予防接種率が低いための地域内での伝播と増幅が継続する可能性、ネッタイシマカを含む媒介能力のある媒介動物の存在、ベナン市(大都会である中心地およびエド州の州都)への感染例の近さ、そして新しい地方行政区への拡大の可能性によってです。

影響を受けている州の個人が隣接地域および近隣諸国に移動する可能性があり、特に年末年始のシーズン中に予防接種を受けていない訪問者が到着した場合により、現在、地域レベルでは中程度のリスクとなっています。現在世界レベルにおいては、全体的なリスクは低いです。

ナイジェリアは、コレラ、伝播ワクチン由来ポリオウイルス、サル痘、麻しん、および他の州でのラッサ熱のアウトブレイク、および同国北東部での人道的危機を含む、いくつかの公衆衛生の緊急事態に同時に直面しています。

WHOからのアドバイス

ナイジェリアは、黄熱流行の撲滅(EYE)戦略の最優先国です。段階的な予防のための黄熱予防接種キャンペーンは、2024年までに全国で実施される予定です。予防接種は、予防および制圧のための主要な介入です。都心部では、標的を絞った媒介動物駆除対策も、感染を防ぐのに役立ちます。 WHOとパートナーは、地方当局が現在のアウトブレイクを管理するためにこれらの介入を実行するのを支援し続けるつもりです。
持続的または周期的な黄熱ウイルス伝播の証拠があるので、WHOはナイジェリアに行く月齢9か月以上のすべての海外旅行者に黄熱に対する予防接種を勧めます。ナイジェリアでは、黄熱感染の危険性がある国から到着する1歳以上の旅行者にも黄熱予防接種証明書が必要です。

WHOによって推奨されている黄熱ワクチンは安全で、非常に効果的であり、そして感染に対して生涯にわたる防御を提供します。 IHR(2005)、第3版に従って、黄熱に対する国際予防接種証明書の有効性は、WHO承認のワクチンを接種された人の生涯にまで及びます。 承認された黄熱ワクチンの追加接種は、入国条件として海外からの旅行者には要求できません。

WHOは、加盟国に対し、旅行者にリスクや予防接種を含む予防措置について十分な情報を提供するために必要なあらゆる措置を講じるよう奨励しています。 旅行者はまた、黄熱の症状と徴候について知って、病気の徴候が現れた場合は迅速に医療アドバイスを求めるように指導されるべきです。 ウイルス血症を起こしている旅行からの帰国者は、媒介可能な媒介動物が存在する地域における黄熱感染伝播のローカルサイクルの確立にとってリスクをもたらす可能性があります。

WHOは、このアウトブレイクについて入手可能な情報に基づいてナイジェリアへの旅行や貿易に関するいかなる制限も推奨していません。



出典

Yellow fever -Nigeria
Disease outbreak news  9 January 2019
https://www.who.int/csr/don/09-january-2019-yellow-fever-nigeria/en/