エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新9)

Disease outbreak news:更新 2019年1月24日

コンゴ民主共和国の保健省(MOH)、WHOとパートナーは同国におけるエボラウイルス病(EVD)の封じ込めとコントロールにおける困難に直面し続けています。報告症例数はこの数週間で増加しました。中でも注目すべきは、コミュニティが対策チームに不信感を抱いているカトワ(Katwa)保健区域からの症例です。またアウトブレイクは治安のリスクが高い、南部のカイナ(Kayna)保健区域まで拡大しました。対策チームはコミュニティと信頼を構築し、感染が確認されたこれらの新しいクラスターに対策活動を拡大するべく、積極的に取り組んでいます。

2019年1月22日現在で、EVD症例の総計は713例(664例の確定例と49例の高度疑い例)で、そのうち439例の死亡(全体の致死率:62%)が確認されています(図1)。今までのところ、247名がエボラ治療センター(ETCs)から退院し、生存者の観察と支援のための専用のプログラムに多くの人が参加しています。年齢と性別が報告された症例の59%(420/710)は女性で、30%(214/708)は18歳未満でした。そのうち108例が5歳以下の幼児と小児でした。61名の医療従事者が現在までに感染しています。

直近の21日の間に(2019年1月2日から1月22日)、102例の新症例が13の保健区域(図2)から報告されました。内訳は、カトワ(62)、ビュトンボ(Butembo)(12)、オイチャ(Oicha)(6)、カイナ(5)、ベニ(Beni)(2)、マンギュールジパ(Manguredjipa)(3)、キョンド(Kyondo)(3)、カルングタ(Kalungata)(2)、コマンダ(Komanda)(1)、ムシエネネ(Musienene)(2)、ビエナ(Biena)(2)、マバラコ(Mabalako)(1)、そしてヴホヴィ(Vuhovi)(1)です。ビュトンボとカトワの現在アウトブレイクが多発している場所は、約100万人の人口を抱える都市部を含んでいます。今までにカトワで報告された148例のうち、発症時点で接触者として登録されていたのは半数に満たない人々(55/148)でした。さらに、これらの症例の10%(14/148)は医療従事者でした。また、関連情報が入手できた症例の42%(45/107)が発症の数週間以内に葬儀に出席していたことが報告されています。これらの発生数を合わせて考えると、カトワにおいて観察された患者数の増加は医療施設とコミュニティ両方における伝播が組み合わさって引き起こされたことが示唆されます。感染の連鎖を断ち切るため、医療施設における感染予防と管理、医療従事者やその他の最前線で働く作業員に対するワクチン接種、安全で尊厳のある埋葬の実践などの、人々の健康を守り感染を制御する対策が強化されています。

図1:エボラウイルス病の確定例と高度疑い例、2019年1月22日時点のデータ (n=713)*

※ここ数週間のデータは症例の確定と報告の遅れ、継続中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。この期間中の傾向は慎重に解釈する必要があります。

図2:コンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州の保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、2019年1月22日時点のデータ(n=713)

公衆衛生上の取り組み

保健省はWHO及びパートナーの支援を得て、対応策の強化を続けています。優先事項は、対応の調整、サーベイランス、接触者追跡、検査室のキャパシティ、感染予防と管理、患者の臨床管理、ワクチン接種、リスクコミュニケーションと地域社会の関与、心理社会学的支援、安全で尊厳のある埋葬、近隣の州や国々における国境を越えたサーベイランスと準備活動です。

WHOとパートナーによる公衆衛生上の取り組みに関する詳細情報については、WHOアフリカ地域事務局によって公表されている最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOのリスク評価

WHOはこのアウトブレイクのリスク評価を再考し、国家・地域レベルで非常に高く、世界的には低いリスク状態が続いているとみています。今回のEVDのアウトブレイクはウガンダ、ルワンダ、そして南スーダンに接するコンゴ民主共和国の北東部の地域に影響を与えています。アウトブレイクが影響している地域と、コンゴ民主共和国の他の地域および近隣の国々との間における商用・私用での広範囲な人の往来、また治安の悪化による国家・地域レベルでのEVD伝播の潜在的リスクがあります。同国は同時にその他の伝染病(例えばコレラ、ワクチン由来ポリオウイルス感染症、マラリア)と長期にわたる人道的危機を経験しています。加えて時には、北キブ州とイトゥリ州における治安情勢により、対策活動の実施が制限されます。

国家単位や地域単位での拡大のリスクは非常に高いため、近隣の地域や国々に対してサーベイランスと準備活動を強化することが重要です。国際保健規則(IHR2005)の緊急委員会は、これらの備えやサーベイランスの活動を強化しなければ状況を悪化することにつながり、さらなる拡大を招くことが予想されると勧告しました。WHOは継続して近隣諸国やパートナーとともに、保健当局が警戒し、対応の準備が整っている状態を確かなものにするために活動していく予定です。

WHOのアドバイス

国際交通
WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易のいかなる制限をも行わないよう助言します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、コンゴ民主共和国を離れる乗客に対するビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の出来事に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在のところ、コンゴ民主共和国への、そして同国からの国際輸送を著しく妨げる渡航の措置を実施した国はありません。渡航者は渡航の前に医師の助言を受け、良好な衛生状態を守るべきです。

更なる情報は、以下をご参照ください。

New Hope with Ebola Drug Trial
WHO Director-General concludes New Year visit to Ebola-affected areas in the Democratic Republic of the Congo
Women join hands to oust Ebola from the Democratic Republic of the Congo
Summary report for the SAGE meeting of October 2018
Statement on the October 2018 meeting of the IHR Emergency Committee on the Ebola virus disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo
WHO Interim recommendation Ebola vaccines
WHO recommendations for international travellers related to the Ebola Virus Disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo
Ebola virus disease in the Democratic Republic of the Congo – Operational readiness and preparedness in neighbouring countries
Ebola virus disease fact sheet
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脚注1
ここ数週間のデータは、症例の確定と報告の遅れ、継続中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。この期間中の傾向は慎重に解釈する必要があります。

翻訳

出典

Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news:Update  2019年1月24日
https://www.who.int/csr/don/24-january-2019-ebola-drc/en/