中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)-オマーン

Disease outbreak news 2019年2月11日

2019年1月27日から1月31日まで、オマーンの国際保健規則(IHR)窓口(National Focal Point)は、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症の5症例を報告しました。臨床検査で確定された5例はすべて同じ家族の女性で、年齢は30歳から59歳までです。この集団の感染源はオマーンで調査中であり、5人中4人がヒトからヒトへの感染伝播による二次的な症例であると思われます。すべての症例がヒトコブラクダとの直接接触を報告していない一方で、彼らはヒトコブラクダと他の動物が飼われていた農場に住んでいました。農業省はヒトコブラクダを検査しています。これら5つの症例の詳細は別のExcel文書にあります(下記のリンクを参照)。
MERS-CoV cases reported between 27 January and 31 January 2019
https://www.who.int/csr/don/11-february-2019-mers-oman.xls?ua=1

これら5例の追加症例を含め、2013年以来、MERS-CoV感染症の合計16の検査確定症例がオマーンによって報告されています。この集団発生前のオマーンから報告されたMERS-CoV感染症の最後の症例は2018年3月でした。
MERS-CoV Disease outbreak news 15 March 2018
https://www.who.int/csr/don/15-march-2018-mers-oman/en/

2018年03月19日更新 コロナウイルスによる中東呼吸器症候群の発生状況(更新3)
https://www.forth.go.jp/topics/2018/03191218.html

世界的には2019年2月8日現在、少なくとも811人の関連する死亡を含む、MERS-CoV感染の検査室で確定された2,311件の症例が世界保健機関(WHO)に報告されています。1

公衆衛生上の取り組み

すべての症例で、症状の出現前の14日間の既知の危険因子への曝露の調査が進行中です。オマーンの保健省職員は、北バティナー(Batinah)県における医療従事者および家族の接触者の連絡先リストを作成しました。2月4日の時点で、合計60人の家族の接触者が確認されており、うち26人の接触者が高リスクとして分類されています。MERS-CoV症例の家族全員がRT-PCRによってMERS-CoVについてスクリーニングされ、1月28日に陽性と判定された1症例を除いて陰性と判定されました。2月4日現在、合計119人の医療従事者の接触者が確認されています。リスクの高いすべての医療従事者の接触者は、RT-PCRによってMERS-CoVについてのスクリーニングがされており、すべて陰性であるとの結果が出ています。MERS-CoV感染のWHOおよび国内ガイドラインに従って、特定されたすべての接触者が最終暴露日から14日間監視されます。

どの症例でもヒトコブラクダとの直接接触は報告されていませんが、彼女らはヒトコブラクダや他の動物が飼われている農場に住んでいました。農業省はヒトコブラクダの農場を調査しています。サンプルを回収し、初期スクリーニング結果はMERS-CoVについて陰性と判定されました。さらなる結果は出ていません。医療従事者は教育を受け、感染予防と管理対策について補修研修コースが提供されました。家族はMERS-CoVについて教育を受け、個人および呼吸器衛生のアドバイスが提供されました。

WHOによるリスク評価

MERS-CoVの感染は重度の病気を引き起こし、死亡率が高くなります。ヒトは、ヒトコブラクダとの直接的または間接的な接触からMERS-CoVに感染しています。 MERS-CoVは、ヒト間で伝達する能力を実証しました。これまでのところ、観察された非持続的なヒトからヒトへの感染は、主に医療現場で起こっています。

追加症例の通知は、全体的なリスク評価を変えることはありません。 WHOは、MERS-CoV感染の追加症例が中東から報告されることを予期しており、その症例はヒトコブラクダ、動物性製品(例えばラクダの生乳の消費)またはヒト(例えば、医療現場)への曝露後に感染を獲得する可能性のある個人によって他の国に輸出され続けると予想されます。WHOは疫学的状況を監視し続け、最新の入手可能な情報に基づいてリスクアセスメントを実施します。

WHOからのアドバイス

WHOは、現在の状況と入手可能な情報に基づき、すべての加盟国に対し、急性呼吸器感染症のサーベイランスを継続し、通常ではないパターンを慎重に検討するよう奨励しています。MERS-CoVが医療施設に広がる可能性を防ぐためには、感染予防と管理策が不可欠です。他の呼吸器感染と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的であるため、早期にMERS-CoV患者を特定することは必ずしも可能ではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、常にすべての患者に一貫して標準予防策を適用するべきです。急性呼吸器感染症の症状を有する患者に看護を提供する際には、標準予防策に飛沫感染予防策を追加する必要があります。MERS-CoV感染のほぼ確実例または確定症例に看護を提供する際には、接触感染予防策および目の保護を追加すべきです。エアロゾルが生じるような手技を実行するときは、空気感染予防策を適用すべきです。

MERS-CoVは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患および免疫不全を有する人々に、より重篤な疾患を引き起こすようです。したがって、これらの人々は、ウィルスが潜在的に伝播していることが知られている農場、市場または納屋を訪れる際に、動物、特にラクダとの濃厚接触を避けるべきです。一般的な衛生対策、例えば、動物に触れる前後で規則的に手洗いをする、病気の動物との接触を避けるといった一般的な衛生対策がきっちり守られるべきです。

食品衛生慣行を遵守する必要があります。人々は生のラクダミルクやラクダの尿を飲むこと、または適切に調理されていない肉を食べることを避けるべきです。

WHOは、入境地点でこの事象に関する特別なスクリーニングを勧告しておらず、現在はいかなる旅行や貿易の制限の適用を推奨していません。

1この世界全体での数は、これまでにIHRの下でWHOに報告された検査室で確定された症例の総数を反映しています。死亡者数の合計には、WHOがこれまでにこの疾病の影響を受けている加盟国に対する追跡調査を通じて認識している死亡者数が含まれています。

出典

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – Oman
Disease outbreak news, 11 February 2019
https://www.who.int/csr/don/11-february-2019-mers-oman/en/