伝播型ワクチン由来ポリオウイルス1型 - インドネシア

Disease outbreak news 2019年2月27日

2月12日に、伝播型ワクチン由来ポリオウイルス1型(cVDPV1)がインドネシアのパプア(Papua)州で確認されました。 2018年11月27日に麻痺を発症した急性弛緩性麻痺(AFP)の子どもと2019年1月24日に地域の健康な接触者である子どもから採取された便検体から、2つの遺伝的に連鎖したVDPV1ウイルスが分離されました。このVDPVが分離された健康な子どもの所在地は、2018年11月27日に麻痺を発症した急性弛緩性麻痺の症例から約3ー4 km離れた遠隔地の村です。この地域はパプアニューギニアと国境を接していますが、このアウトブレイクは、現在、パプアニューギアに影響を及ぼしているcVDPV1のアウトブレイクとは関連していません。

公衆衛生上の取り組み

世界保健機関(WHO)とパートナーは、保健省(MoH)と地方公衆衛生当局による現地調査、徹底したリスク評価、およびアウトブレイクへの対応の計画を支援しています。アウトブレイクへの対応の正確な範囲と時期は最終決定中です。最初のアウトブレイク対応としての予防接種(ORI)がヤフキモ(Yahukimo)地区で行われ、15歳未満の5,718人の子供が二価経口ポリオ生ワクチン(bOPV)で予防接種されました。追加の急性弛緩性麻痺(AFP)遡及的および能動的な症例検索の実施を含む疾病サーベイランスは、パプア州のすべての県および都市を含む地域保健センター、病院および他の保健施設でさらに強化されています。州への出入り口でのサーベイランスも強化されており、「早期警告、警戒、対応システム(EWARS)」を通じた通知と報告の監視も強化されています。他の州では予防接種と急性弛緩性麻痺サーベイランスを改善するよう警告されています。

インドネシアで行われた最新の全国予防接種日(NID)は2016年3月に(3価から2価のOPVへの切り替えに先立って)3価の経口ポリオワクチン(tOPV)を使用して行われました。そしてパプア州は2018年終わりにbOPV、麻しん、風しんの追加的予防接種活動(SIA)を実施しました。さらに、最近のパプアニューギニアでのcVDPV1のアウトブレイクに対応して、インドネシア保健省はすでに国境予防接種ポストを設置し、パプア州で環境サーベイランスを開始していました。彼らはまた、彼らのポリオアウトブレイク対応計画をテストするためにシミュレーション演習を実施しました。しかし、パプア州のポリオ予防接種率は依然として低いままです(2016年のSIAにおける接種率:77%および2018年SIAにおける接種率:72%;4回目、4回目のOPVの全体での接種率:2017年は68.2%、2018年は40.8%)。

WHOのリスク評価

cVDPVの検出は、あらゆるポリオウイルスの伝播のリスクと影響を最小限に抑えるため、そしてあらゆるポリオウイルスの早期検出のためのサーベイランスの質を確実にする必要性から、すべての場所で定期予防接種の高い接種率を維持することの重要性を強調しています。これらの出来事はまた、ウイルスの低レベルの感染によってもたらされる危険性を強調しています。迅速に伝播を止め、将来的に同様のアウトブレイクを防ぐために、影響を受けている地域で十分な予防接種率を担保するためには、強固なアウトブレイク対応が必要です。WHOは引き続き、疫学的状況および実施されているアウトブレイク対応措置を評価します。

全体的なリスクは、インドネシアのパプア州における最適とは言えないポリオワクチン接種率とサーベイランスの質により、全国レベルで中程度と評価されています。ウイルスが分離された高地の人口密度は比較的低く、その地域から他の州への人口移動はそれほど大きくありません。地元のパプア州では、対応策を実施するための既存の資源の中での能力は限られています。

地域レベルでは、パプアニューギニアとの距離が近いにもかかわらず、アウトブレイクの影響を受ける地域からの国境を越えた人口移動が限られているため、全体的なリスクは低いと評価されています。しかし、ウイルス学的分析は、近隣地域で予防接種率が低いことで、このウイルスが数年間感染伝播している可能性があることを示しています。国際的な人口移動が激しい近隣県のジャヤプラでは、cVDPVについて検査で陽性の人はいませんでした。世界レベルでは、全体的なリスクは、一般的に高いポリオワクチン接種率、確立された急性弛緩性麻痺サーベイランスシステムとポリオ制圧のための技術的専門知識の利用可能性により、低いと評価されています。

このリスクは継続的に評価され、状況の変化に応じて見直される可能性があります。

WHOからのアドバイス

ワクチン由来ポリオウイルス(VDPVs)はまれですが、不十分に免疫されている一部の集団で出現する可能性があるポリオウイルスのよく知られた株です。 VDPV株の出現は、高いレベルの定期予防接種率および早期発見のために効果的なサーベイランスシステムを維持することの重要性を強調しています。

すべての国、特に頻繁にポリオの影響を受ける国や地域に頻繁に旅行したり、交流したりする人々のいる国では、新しいウイルスの輸入を迅速に検出し、迅速な対応を促進するために、急性弛緩性麻痺症例のサーベイランスを強化することが重要です。国、領土、および地域でも、いかなる新しいウイルスの導入による影響を最小限に抑えるために、県レベルで一様に高い定期予防接種の接種率を維持する必要があります。

WHOの国際旅行と保健(International Travel and Health)(http://www.who.int/ith/en/)は、ポリオウイルスが活発に伝播している地域(野生型またはワクチン由来のポリオウイルスが活発に伝播している地域)に旅行する前に、ポリオの存在しない国からの旅行者は、それぞれの国の国内予防接種スケジュールに従って、年齢に応じたポリオワクチン接種を完了していることを確実にするべきです。さらに、OPVまたは不活化ワクチン(IPV)ワクチンシリーズの接種から12ヶ月以上が経過している場合、ポリオワクチンの一回限りの追加(ブースター)接種も考慮されるべきです。

海外に旅行する前に、ポリオに感染している国に居住するすべての年齢の人々およびそのような国への長期訪問者(すなわち、国内で4週間以上過ごす人々)は、国のスケジュールに従って、ポリオに対する予防接種の全コースを完了しているべきです。加えて、小腸粘膜免疫を高め、ポリオウイルスがポリオのない地域に再導入されるリスクを減らすため、ポリオに感染している国に渡航後4~12か月以内にOPVまたはIPVを追加投与する必要があります。以前にIPVのみを投与されていた人にとっては、利用可能で実現可能な場合、OPVが追加免疫投与の選択肢となるはずです。避けられない土壇場旅行の場合、過去12ヶ月以内に文書で証明されたポリオワクチン接種を受けていない旅行者は、依然として出発前に1回分のOPVまたはIPV接種を受けるべきです。

国際保健規則(IHR 2005)に基づいて開催された緊急委員会の助言のとおりに、それが依然として国際的に懸念される公衆衛生緊急事態(PHEIC)である限りは、ポリオウイルスの国際的拡大を制限するための努力は続けなければなりません。ポリオウイルス感染の影響を受けている国は一時的な勧告の対象となります。 PHEICの下で発行された一時的な勧告に従うために、ポリオウイルス伝播の影響を受けている国は、アウトブレイクを国家公衆衛生上の緊急事態として宣言し、接種率データの共有、定期予防接種の接種率を上げるための取り組みの強化、そして国境を越えた取り組みの強化を含むポリオ根絶を支援するために求められる全ての措置を実施すべきです。国は、そのような予防接種を受けた旅行者が自分のポリオ予防接種の状況を記録するための適切な文書にアクセスできるようにすべきです。ポリオ緊急委員会の全文は、以下のリンクから入手できます。

Polio Global Eradication Initiative: Public health emergency status

更なる情報は、以下をご参照ください。

Polio Global Eradication Initiative
Statement of the Twelfth IHR Emergency Committee Regarding the International Spread of Poliovirus
WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system, 2018 global summary
Fact sheet: Vaccine-derived poliovirus
Circulating vaccine-derived poliovirus
WHO International Travel and Health, Chapter 6 Vaccine-preventable diseases and vaccines

出典

Circulating vaccine-derived poliovirus type 1 - Indonesia
Disease outbreak news  27 February 2019
https://www.who.int/csr/don/27-february-2019-polio-indonesia/en/