伝播型ワクチン由来Ⅰ型ポリオウイルス-パプアニューギニア

Disease outbreak news   2019年2月20日

パプアニューギニアで、最初の麻痺患者(6歳の小児)と接触した同じコミュニティに住む2人の健康な小児から伝播型ワクチン由来Ⅰ型ポリオウイルス(cVDPV1)の分離が検査確定されたことを受け、2018年6月26日にcVDPV1のアウトブレイクが宣言されました。宣言以降に、総計26人のcVDPV1の確定例が、次の9つの州から報告されました。確定例が報告されたのは東部山岳州(Eastern Highlands)(6人)、エンガ州(Enga)(5人)、東セピック州(East Sepik)(4人)、マダン州(Madang)(3人)、モロベ州(Morobe)(3人)、ジワカ州(Jiwaka)(2人)、湾岸州(Gulf)(1人)、南部山岳州(Southern Highlands)(1人)、と首都区(National Capital District(NCD))(1人)でした。直近の検査確定例は2018年10月下旬に麻痺が出現していました。2ヶ月に1度、ポートモレスビー(Port Moresby)とラエ(Lae)で、活動性の急性弛緩性麻痺(AFP)症例の探索のための環境サーベイランスが続けられています。

公衆衛生上の取り組み

これまで、2018年7月から12月にかけて、5ラウンドに渡る追加の予防接種活動(Supplementary Immunisation Activities)(SIA)が行われました。WHOとUNICEFからの相談役が、高水準のSIAを保ち、AFP症例の検出をより良いものにするために、キャンペーン前の準備から実施の期間中、技術支援を提供するためにそれぞれ配置されました。最初のSIAのラウンドは3つのリスクが高い州における5歳未満の小児を対象にしました。2番目のラウンドには9つ全ての州における5歳未満の小児が含まれました。SIAの第3と第4のラウンドには一定の日に一定年齢の子どもたちに一斉に経口生ポリオワクチン(OPV)を経口服用させる日(National Immunisation Days )(NIDs)が含まれ、15歳未満の小児を対象として、それぞれのラウンドでワクチン接種率93%と97%を達成させました。SIAの第5ラウンドは 4つの優先的な州(首都区、中央州、エンガ州、そして東セピック州のアンゴラム地区)において実施される地方のキャンペーンでした。計画は現在2019年の新たなNIDsに向けて進行中です。

AFPサーベイランスは強化を続けていて、全ての州で現在、AFPの疑い症例の報告が行われています。パプアニューギニアはインドネシアのパプア州と国境を接しているため、国境を越えたサーベイランスと予防接種が議論されています。さらにSIAは、サーベイランスの活動の強化に加えて、パプア州とインドネシアにおいても実施されています。

WHOは適切なアウトブレイクへの対応策を行うために、パプアニューギニア政府をサポートするためにパートナーと連携をとっています。対応策はポリオの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会(the IHR Emergency Committee Regarding the International Spread of Poliovirus)の暫定的推奨と世界ポリオ根絶推進活動(the Global Polio Eradication Initiative)の標準実施要領に準じています。

WHOのリスク評価

WHOは現在パプアニューギニアからポリオウイルスが国外へ拡大するリスクは低いと評価しています。

伝播型VDPVsは稀ですが、これまでに多数の記録があるポリオウイルス株で、不十分な予防接種を受けた集団から発生する可能性があります。アウトブレイクへの強固な対応は、そのような出来事を早急に止めることができます。5ラウンドのSIAが2018年に実施された一方で、義務的な予防接種計画を強化するために、予防接種率の低い地域における、さらなるSIAs/NIDsの必要性が依然として残っています。パプアニューギニアにおけるcVDPV1のさらなる拡大のリスクは依然として乏しい予防接種率に起因する大きな脅威として残っています。cVDPV1株の出現は義務的な予防接種率を高く保つことと早期発見のための効果的なサーベイランス体制の重要性を強調しています。

2014年5月5日に、WHO事務局長は、国際保健規約(IHR2005)に基づき、国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)としてポリオウイルスの国外への拡大を公表し、ポリオウイルスの国外への拡大を減少させるための暫定的推奨(Temporary Recommendations)を発令し、3カ月ごとの緊急委員会(the Emergency Committee)によるこの状況の再評価を要請しました。

WHOは国際的に合意を得た基準のアウトブレイクへの対応策を最大限に実施する必要性を強調していて、WHOは疫学的状況と、実施されているアウトブレイクへの対応策の評価を継続する予定です。

WHOからのアドバイス

全ての国、特にポリオの影響を受けている国や地域への渡航や接触が多い国は、あらゆる新しいウイルスの早急な検出と早急な対応を促進するために、AFP症例のサーベイランスを強化することが重要です。国、領土、そして地域は新しいウイルスの侵入の効果を最小化するために、地区単位で義務的な予防接種率を高い水準で均一に保つべきです。
 
WHOの国際渡航と保健(International Travel and Health)(http://www.who.int/ith/en/)はポリオの感染が起こった地域への渡航者は、十分にポリオに対する予防接種を受けることを推奨しています。感染が起きた地域における居住者(及び4週間以上滞在する来訪者)に対しては、国外へ渡航する前の4週から12カ月の間に、二価経口生ポリオワクチン(bOPV)もしくは不活化ポリオワクチンの追加投与が行われるべきです。渡航者は、このような予防接種の記録の文書、できれば国際予防接種証明書(International Certificate of Vaccination or Prophylaxis)を準備すべきです。ポリオの影響がある国に居住している渡航者は、ポリオのリスクがない国への入国ビザを得るために、ポリオに対して予防接種を受けていることを要求される可能性があります。国際渡航と保健(International Travel and Health)の国のリストには入国する渡航者に対する各国の要求の要約が記載されています。


更なる情報は、以下をご参照ください。

Statement of the Seventeenth IHR Emergency Committee Regarding the International Spread of Poliovirus
Polio Global Eradication Initiative: Papua New Guinea
Temporary Recommendations to Reduce International Spread of Poliovirus
WHO Vaccine-Preventable Diseases: Monitoring System. 2018 Global Summary
Papua New Guinea Polio Outbreak Response First 100 Days, 30 September 2018
Papua New Guinea Launches Comprehensive Outbreak Response To cVDPV Detection

出典

Circulating vaccine-derived poliovirus type 1 – Papua New Guinea
Disease outbreak news  20 February 2019
https://www.who.int/csr/don/20-February-2019-polio-png/en/

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